表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤い瞳の銀の鳥   作者: アマメ ヒカリ
第一章 イントロダクション
3/50

3.芽吹

その日は、よく風が吹く日だったと思う。


暦では芽吹きの季節。

ダルシの丘に草の若芽が一斉に芽吹く季節は、よく風が吹く時である。


この時期は、岩山の動物はお互いのつがいを求める。

鳥たちも、虫たちも。


保存しておいた作物の種を、汲んだ井戸水に浸し始める。

丘の開墾地に蒔く準備だ。


冷たく、鋭利な風が吹く季節は終わり、柔らかくて暖かく、みずみずしい香りのする風が吹く頃。


子供が生まれた。


ちょうど前回の同じ時期に、様々なものごとを読む役目の者が、身ごもった女性との面会をした。



女性から伸びた光の糸は根源の光まで続く。

読む役目の者は、この糸をたどり肉体を得る前の子供と語る。



結果、この子供は守り主の対となる人物だとわかった。



集落の者は大層喜んだ。


ならば、どこかに守り主の卵があるはずと皆で探すと、岩山に無造作に転がった岩を見つけた。



大人三人の腕を広げて囲むことのできる大きさである。



風や楽器を奏でる役目の者が岩に近づいて、硬い鉱物でできた弦をかざすと、弦が唸る。



間違いない。

守り主の卵が生まれたのだ。



人々は祝い、踊る。

喜び、感謝をした。



そして再びやって来た、風が吹く季節のこの日、子供と守り主は生まれた。



うまれた子供の真の名は、産んだ女性が知るのみ。



女性は、子供と守り主に、呼び名を与える。



出産の時、根源の光をさまよう内に得た名だった。


子供は光輝く体をしていた。

光を放つ肌を持っていた。

明け時の光の色。

暮れ時の空の色。



柔らかい頭髪は暗色で、滑らかに光る。



瞳を開ければ一層美しく、さぞや可愛かろうと、女性は心が弾んだ。

そして子供をふわりとなでた。



もう少ししたら、あなたに合わせる方がいますよ。


きっと今、あなたと同じようにこの世界に来たばかり。


愛しいぼうや。

私の大事な。

ユーマ。


ルゥ・ラァにすぐ、会わせて差し上げる。


女性は二度、やはりふわりと子供をなでた。


丘には風が吹いていた。

みずみずしい香りのする、予感を含んだ風が、吹いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ