金の種 ~インターミッション~
こんにちは。
きょうは勤労感謝の日。
新嘗祭が行われています。
江戸の庶民はこの日をゆっくりと過ごしたと聞きます。
恵みに心を向けて、五穀豊穣を祈る日。
さあ、何を食べようか?
昔々、あるところに、広い河が流れていました。
その広い河は、長くて、蛇のようにうねり、度々氾濫をおこしました。
河の水が溢れると、家や家畜を流します。
人々は河の氾濫を神の怒りだと思いました。
神が、恐ろしい蛇を罰として下されているのだと。
河の氾濫を恵みとした国もありましたが、この国では災厄でした。
この地に住む人々にとって、自然は厳しく罰を与えるものでした。
厳しさの中で、時折ほんの少しの富を労働や贄と引き換えに分けてもらうか、戦って勝ち、もぎ取って奪うものでした。
大自然は恐ろしく偉大でした。
偉大な唯一の存在、人の命を握るもの。
大自然とは、負けて服従するか、力で勝ち支配するか、どちらかのものでした。
人々は、懸命に生きていました。
ある日、鳥の羽根を背中に持つ者が、空から降り立ちました。
それは人間の女に見えました。
この世にはない美しい石を裸の肌に纏う女が、河の岸辺に降り立ちました。
肌の色が漆喰のように白く、髪は緩やかに波打ち、明るい色をしていました。
女は、しばらく考え事をしていました。
白い水鳥が、その者の足元に寄って来ます。
その内、良いことを思い付いたようでした。
畳んでいた羽根を広げると、女が来た空に戻っていきました。
水鳥も、河の水を蹴って後を追いかけて飛びました。
彼の人の羽根は、燃え盛る炎のようでした。
辺り一帯を眩しく照らしました。
あまりにも眩しく、空を飛ぶ人の影が地上に落ちました。
影ができたところに、人々はお社を建てました。
それはずっと後になってからの事です。
ある日、人々をまとめ導く役目の者の所へ、輝く炎の翼を持つ白い人が会いに来ました。
まとめ役の者は深い青い石を持ち、貴重な金属で出来た帽子をかぶりました。
産まれた時に付ける名と、特別な名を持ちました。
まとめ役の者は、人々の代わりに厳しい自然と戦い勝つためにいたので、男がなることが決められていました。
もしも勝てなかった時は、役目から降ろされ、別の者が代わりました。
その時に、深い青い石は次の者に渡されました。
白い女は、青い石を持つ男に告げました。
余った穀物を持ち、備えよ。
それを聞いた男は笑って答えます。
余った穀物だと?
そんなものはどこに行けば手に入るのだ。
どこから奪えと言うのだ。
この地はかほどに厳しい地でした。
白い女は言いました。
青い石を受け継いだ者よ、奪うのではありません。
私たちはあなたに、小さな種を差し上げます。
この種は、特別な音楽を聴いた。
この種は、特別な色を浴びて育った。
この種は、特別な説明を覚えている。
あなた方に、私たちから、贈り物です。
大地を金に染めなさい。
余った穀物は貯めておきなさい。
さらに余った穀物は、腐らせて貯めておきなさい。
私たちは、特別な腐敗の技をお伝えしましょう。
腐らない水を、作りなさい。
あなた方が知る、天の神の飲み物として、広めなさい。
特別な腐敗に使う生き物は、遠い先にて活きる。
子や孫に、伝えなさい。
種を、技を、知ろ示せ。
そう言うと、白い人は青い石の人へと近づきました。
白い右手を差し出すと、そこには金色に光る種がありました。
そして左の白い手には、白い粘土のような塊がありました。
両手を差し出した様は、まるで天秤のようでした。
それからしばらくして、種は人々に配られました。
不思議なことに、その種は痩せた土地でも重い穂を作りました。
刈り入れ時は、穂が風になびき、金色に輝きました。
人々は自然が豊かであることを知りました。
余った穀物は、人々に更なる豊かさを運びました。
豊かさは、数字を生む。
数字は、取引を可能にする。
こうして、人々は自然から豊かさを得る方法を得ました。
豊かさはあらゆるものと取引できることを学びました。
あらゆるものを取引するようになった人達を、白い人は遠くから見ています。
今でも、ひときわ明るく輝きながら、空で見ているということです。
ネクターとは神の飲み物の意だそうです。
不二家ネクター。
どうりでおいしいと思った。