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赤い瞳の銀の鳥   作者: アマメ ヒカリ
第三章 星
13/50

13.あなたは誰?

こんばんは。

お訪ねくださいまして、とても嬉しいです。

ありがとうございます。


夢の中の光景が、頭に残って苦しかった。

だから文字にした。


という物語です。

非言語を言語にするチャレンジは、

まだ続きます。





渦へ向かう二人は、螺旋。

右向きの螺旋となって、青と緑の色相が重なる、渦の芯を目指した。


二人の目には、稲妻の如く弾け飛ぶ、双色のまばゆい輝きが映る。


金色と橙色。


二つの色は常に弾け、点滅し、砕け散った光がほろほろと地上へと降るのが見えた。


ユーマはそのようすが面白くてたまらない。


明け時の日の出と、暮れ時の日の入りが、どちらが早いか駆け比べをしているようだったから。


ほろほろと降る金と橙の砂粒みたいな光が、日の出と日の入りの笑う様を見ているようだったから。


ユーマは淡く光を放つ銀色の鳥の首をそっと撫でてから、自分を乗せて飛ぶ鳥、ルゥ・ラァに尋ねた。


「ね、ルゥ・ラァ。あのチカチカ光る明かりは、なんだか比べっこをしてるみたいだね。僕のほうが明るいぞ、いや僕だぞって。」



鳥は、赤い目をユーマに向けた。

そしてゆっくりと目をつむり、開いた。


「ユーマ。あなたが楽しそうで私も嬉しい。」


ユーマの心に響く、暖かい声。

ユーマは鳥の背から手を伸ばし、頬の辺りに手を添えた。


大好きだったから。


ユーマはルゥ・ラァが大好きだったから、嬉しいと言ってくれて、嬉しかったから。

頭を撫でるのも違う気がして。



鳥は続ける。

「あの二つの光は、この渦に必要な力です。あなたの言うように、二つの力は競りあっています。そうすることで、世界に活力を与えます。」


「へえ…」

ユーマの周りは光の粒で満ち溢れている。

手のひらには絶えず金と橙のきらめきが注がれている。

よく見れば、手に落ちてぶつかった光は、さらに細かくなって、霧のようになっている。


霧は揺れながら渦の中心へ向かうようだった。



「二つの力は、根源より分けられたものです。ユーマ、この光と私たちは、兄弟のようなものなのです。」


ユーマは再び、へえ…と応えた。


「ユーマ、豊穣の預かり手よ。私とあなたもまた、この二つの光のようなものなのです。」



「うん」

ユーマはそれだけを言うと、光がやって来た道のりに思いを馳せた。


喜びと、さみしさが、美しく編まれてできあがった道のり。


そうだ。ぼくも、そこを通ったんだ…。

緑色の、光る、石を、持っていた、気が、する…。



ぼんやりとしかけた時、見たことのない濃い紫色の硬い光が脳裏に映った。



驚いて前を向くと、3つの人影がゆがんで見えた。


氷のように透明な壁が、ユーマとルゥ・ラァを囲んでいて、壁の向こうに人が透けて見えていた。


真ん中にいる、威張ったような顔をした人は白銀色。


左側にいる、怒ったような顔をした人は黄色がかった金色。


右側にいる、困ったような顔をした人は深い水色。


ユーマは3人の体から色が見えた。

どの色も、ユーマが生活のなかで見たことのない、鋭利な光が見えた。


ルゥ・ラァ、と呼ぶが、鳥は瞬きせずに相手を見据えていて、応えはなかった。

銀色の人が口を開いた。「おまえか。何度目だ。諦めの悪い事だ。」


何故だろう。誰だろう。

いったい何が始まったのだろう。

ユーマの心は様々な思いでいっぱいだった。



金色の人が続けて言う。

「お前たちに任せてはおけぬ。これは正義である。そうであろう。」



同意を求められた人は水色の人だった。


その人は、困ったような顔をして、横を向いていた。


銀色の人が声を張った。

「ヨミ!」



「私にはわかりかねます。…在来の種に任せる時が来たのでは?」



銀色の人は微かに笑う。

「何を言うか。おぬしはこの者らを導いてやるものであろう。あれはこの者たちには過ぎ足るもの。

あのお方は…」


突如、ルゥ・ラァの喉から、凄まじい音が発せられた。


透明の壁はぐにゃりと縦に大きく歪み、裂け目ができた。


裂け目をくぐり出た二人は光の速さで渦の中心へ向かった。


3人は二人を追いかける。2つの光と遅れてくる1つの光が流れ星のように二人を追った。



鳥の首にしがみついたユーマは、困惑していた。

「ルゥ・ラァ、あれは誰なの?わあっ!」



ユーマたちを突風が襲った。

即座に身構えたユーマに、聞き覚えのある太い声が降り注ぐ。


「ユーマよ!ここは我らに任せて、行くが良い!」

ユーマが、シルフェと名前を呼んだ、風の精霊王だった。



「シルフェ!あいつらは恐いやつらだ。だめだよ。逃げよう!」



風の精霊王は、ユーマににっこりと笑ってみせた。


「鳥よ。ここは我らが引き受けよう。風と火と地と水が。」


ルゥ・ラァは、ひときわ高く啼くと、翼を広げた。


光が粒になって翼に集まる。

二人の姿が光の炎となったころ、3人は現れた。



「この星のためなのだぞ!おろかな!」

金色の人が、消え行く二人に怒鳴り付けた。



風の精霊王は3人を見つめた。

「もう、終わりにしたら如何か。」


銀色の人が言う。

「我らはこの星に対し、正しき事をする役割の者だ。」



「この星には我らがいる。 そして、たくさんの命が息づいている。見守っては頂けぬか。」



「我らが代わりに力を預かってやろうというのを、なぜ阻むのだ。」

金色の人が言う。



水色の人が慎重に言葉を紡ぐ。

「まだ、何も起きる気配はありません。彼らは学ぶのです。幼子の扱いは、お止めになったが良い。」



「はっ!若いのが何を言うか!確かにな。兆しはないな。」

金色の人は、怒りながら続けた。


「だが、今は、だ。いずれ起きるのならば我らが受け持つと言っているのだ。」


風の精霊王はうなずきながら3人に近付く。

「お帰り願いたく存ずる。我らが共にあるかぎり、貴殿方が憂慮するような事はない。ユーマは、あの者は、素直なお子だ。根源のお方は大変優れた預かり手を下されたのです。あの方をお疑いか。根源に住まうあの方を。」


王は3人を見据えた。


「事によっては!我らが!我ら精霊の長が、正義を行いますぞ!」



風の精霊王の周りには、3人の人がいる。

皆、静かな顔をしているが、目付きは真剣であった。


「ゆくぞ。」

銀色の人が言うと、二人は後に続いた。


後ずさりながら、すっと消えたのだ。



風の王は3人が消えた場所をしばらく見ていたが、完全にあちらへ行ったと見ると、仲間の精霊に向き直る。



「皆、そういう事だ。」

そういうと、王は顔を渦に向けた。


「ユーマ、あれはな、手強くて、愛に溢れた、情けのない…」


王はしばし目をつぶる。


「かみさま、なのだよ。」


青と緑の渦は輝きながらまわる。

明るい暗闇に、静かに浮かぶ、それはとても稀有で、美しかった。

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