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1.豊穣の預かり手
広い荒野。
土埃のあがる、金茶色の大地。
太陽はひとつ。
月はひとつ。
星は降るようにたくさん。
空と、星と、大地と、人の物語りを預かっている。
その物語りは、繰り返されてきた。
私はそろそろ、この預かりものをお返ししよう。
まだ、この星は若かった。熱くて、猛々しくて、美しかった。
言葉とは、そのものの本質を表すものであった。
名は、その者と物を支配した。
秘匿であった。
人は、様々な存在と契約をする事で力を借り受けた。
契約という、魔法が息づいていた時を私は生きた。
この世がまだ、熱く、猛々しく、若かった頃。
私たちの来た根源からの光が、目に見える形で我らに届いていた時の物語り。
少年と美しい鳥のお話をしよう。
ありふれた話しだが、役に立つだろう。