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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

翔太と破滅

作者: 那由多

うまく書けたかはわかりません。一話完結です。

 山川翔太。これは、世界に災厄をもたらした男の物語。


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 その日、翔太は薄暗い部屋で自分のスーパーコンピュータの画面に向き合っていた。翔太には目的があった。いつの日かあの憎き人々を自分の手で始末する事だ。その為には、危険も顧みない。自作したスーパーコンピュータで、自衛隊のデータベースに侵入。そして翔太は遂に目的を成し遂げる。笑う彼の手元の画面には、ICBM-大陸間弾道ミサイル-の設計図とコントロール画面が映っていた。ようやく得たその設計図とコントロール画面に彼は心からの喜びを感じていた。


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 翔太、当時小学6年生は、周りの者とは違い、コンピュータを自在に操り、それでいてテストは全て満点、小学6年生にして東帝大学A判定。当時小学生最高峰の頭脳を誇り、周りの者を一切寄せ付けない、そんな雰囲気をまとっていた。


 当時の同級生からしてみれば、そんな翔太は、「気持ち悪い」の一言に尽きたのだろう。口を開ければ、「フェルマーの最終定理」「微分・積分」と言った、専門的な数学の話しかしないのだ。唯、翔太には弱点があった。金と力がない事である。金と力が無ければ、幾ら頭が良かろうともその研究を成功に至らしめることはできない。そこに、不満を持っていた。「如何して勉強ができるのに大学には入れないんだろうか?」「如何して誰も自分の力を認めないんだろうか?」と。


 翔太からしてみれば苦痛でしかない毎日を変えてくれた物、それは、大量殺戮兵器だ。いつの日かそれを自分の手で作り、周りの者たちを恐怖一色で染めてやろう。そんな思いをずっと心に秘めてきた。


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 それから3年、翔太は中学3年生になっていた。ろくに勉強もせず、しかも何時も1位をキープしていた翔太に、誰もが嫉妬と恨みの目線を刺さらせる。しかし、そんな事は翔太にとってどうでもよかった。翔太はいつかその者達を全て滅ぼせると信じていた。その為に、家ではスーパーコンピュータ作りに励み、処理速度が京を超えるスーパーコンピュータ「那由多」を遂に作り出した。そこから、その天才的な頭脳でプログラムを組みオートハッキングシステム、名付けて「リトルホープ」を生み出した。名前通りこのプログラムは、彼の小さな希望となっていた。今や彼の部屋はカスタマイズされ、本格的にパソコン仕様になっていた。9画面のモニター、京の処理速度を超える超小型スーパーコンピュータ那由多(1メートル×50センチ×70センチ)、ハードディスクタワー、サーバー、サブ電源、バックアップ用サーバー、などなど、兎に角中学生の部屋とは、思えないような有様だった。


 計画としては、小学校の頃から大きく変更されてはいなかった。だが、自分の手で殺戮兵器を作るというのには、些か無理があることに気づいた。そこで、自衛隊のメインコントロールにハッキングをかけ、乗っ取ってしまうことにしたのだ。この計画については、翔太以外には、誰も知り得ない。何故なら彼は用心深く、指紋、声紋、虹彩、静脈、顔といった様々な方法でパソコンをロックしていたからだ。開くには彼以外の人間ではいけないのだ。


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 翔太は、高校生になった。日本最高峰とされる高校に入った。だが、翔太を楽しませるものは、その詰まらない高校には無かった。翔太はひたすら、計画を練り、いかなる首尾にて実行に移すかを考えていた。その時、翔太は思い付いた。学校祭で楽しんでいる連中の顔が一瞬にして恐怖に染まるのは、いかに滑稽なのかを。翔太は、学校祭のクライマックス、天龍祭の時に花火の代わりにICBMを打ち上げてやろうと。


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 翔太が、小学生の時にICBMの日本への配備が決まった。そして運悪く天才少年が、利用しようとした。それが、日本の不運の始まりだった。


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 ある日の昼下がり、自衛官達は、昼御飯を食べる為食堂に赴いていた。その時、緊急指令が出された。


「緊急指令。緊急指令。中央コントロール室のアクセス権限が奪われた模様。至急、配属隊員は対処せよ。」


 自衛官達は、信じられなかった。日本最高峰のシステムをハッキングされたこと、そして、乗っ取られたことを。


 隊長が声を掛ける。


「おい。お前達見に行くぞ。お上の命令には逆らえない。」


「はい。」


 自衛官達は、自分の昼食を邪魔された事に憤りを感じながら、隊長に従う。


 そして、彼らがコントロール室に着いた時には、彼らは、驚き、恐怖など、様々なものを感じた。何故ならコントロールパネルには、「The system was taken over.」という、乗っ取られたという意味の文が表示されていたからだ。そして、「The ICBM has been deployed.」と言う、「ICBMは配備済み」と言う文字も見つけたからだ。


 その時、隊員達を襲ったのは果てしない絶望感、そして、恐怖感である。何故なら解析班がハッキングの元も辿れず、逆に迎撃されると言う現象を見たからである。


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 翔太は、喜びを禁じ得なかった。自分のシステムが完璧に作動し、ハッキングした中央コントロール室の監視カメラから絶望的な顔をした、自衛官を見れたからである。


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 その数時間後、全国ニュース番組で、日本中どこにも逃げ場がない状態で、自衛隊本部のデータベースが占拠されていることが報道された。そして、ICBMが犯人の意思によって発射できると言う事を。外を見れば慌てふためき、恐怖に染まっている人々が見えた。翔太は、愉快だった。一気に、力を得た気分だった。すぐに発射したい気分を抑え、恐怖に染まる顔をおかずにしながら、ポテトチップスとオレンジジュースを食べていた。愉快犯の行動であると翔太は我ながら思った。


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 天龍祭は、始まった。学校側はもっと重要施設を狙うだろうから大丈夫と言う判断をしたらしい。


「愚かな奴らめ。」


 翔太は、人知れず呟いた。誰も翔太が犯人であると言うことは知らないのだから仕方ないと思うが、そんな事は翔太には関係がなかった。


 天龍祭が始まり、翔太はスマートフォンを取り出した。勿論そこには、発射命令を出すアイコンが映っていた。それを見て翔太は微笑む。心からの微笑みだ。そして、発射命令を出した。日本中の兵器の照準をこの学校に定めて。


 天龍祭の真っ只中、緊急放送がなる。


「緊急放送。緊急放送。ICBMが我が市に打たれた模様。至急避難せよ。緊急放送。緊急放送。ICBMが........」


 一瞬で教師や生徒の顔が恐怖に染まり、パニックを起こした。だが、翔太の完璧な計画に逃げ場はない。勿論翔太にも。だが、翔太は満足だった。翔太は、心の底に破滅願望があった。自分を出せないならば死んでしまいたいと言うものだ。心の底に秘めていた物は、生きたいのでは無く、死にたいと言うものだった。


 翔太は、学校にICBMが迫り来るのを見ながら、満足気に笑い、彼は爆散し死に絶えた。


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 あの事件から2年半。市は、復興し壮絶な痕跡は跡形も無い。唯、あの事件を忘れる者はいないだろう。翔太の仕業と知らずとも、天才の苦悩からの行動であろうと、容易に想像できた。翔太の名は轟かずとも、日本史に残る出来事となったのだ。


 翔太の目的は果たされた。 

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