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4.「いや〜おれっちじゃ役不足かなぁ」


転々と変わる場面

 


 鋭く、的確、丁寧ながらも野生的な本物の拳。無言で急所ばかりを狙うその攻撃たちに、月海は少し苦戦していた。


 戦況は多分天武が押している。だけど、なにか、気持ち悪い。勝っているのに勝っている気がしない。それは今目の前にいる男に苦戦しているからそう感じるのかそれとも…。



「くそッ!」



 なんでこんなに武道の型にはまった男が族なんかにいるんだよ!戦いにくい!

 完全にブーメランなその言葉を乱暴な一言に込めているが、相手は無表情のままひたすら攻撃してくる。

 天満とクマさんをそれぞれ半分にして、足して半分で割った感じの強さだ。つまり、4分の1だが4分の1でも厄介に変わりはない。


 迫り来る力をいなし、こちらからも攻撃にかかろうとするが、避けられ、また新たな拳が飛んでくる。正直実力は今のところ拮抗していて、一進一退、どちらも引かず進めもしない。


 武道の型にハマった相手には同じ武道の避け技を使い、同じ武道の攻め技で攻撃する。律儀にもそんなことをしているから勝てないのだが、他のことばかりに気を取られている月海はまだそのことに気づいていない。


 その時、月海の後方でなにやら謎の歓声が上がった。


 残念ながら、雄叫びにもにたその声になにが起こったかはわからないが、目の前の男から目を話すことなどできず確認はできない。


 相変わらず水と油のように弾きあった戦いをしていると、そんな2人の横をいるはずのない人物が通り抜けていきかけて、止まった。



「月海、おは」


「よォー」



 4日も行方不明で、なぜか血だらけの男。たったそれだけをいうと、数メートル先にいた敵の幹部と思しき金髪碧目に向かって飛び蹴りをかましている。

 さらには3日姿を消していた男もボロボロながら、いつもの通り。紫色の髪をした男に飛びかかる。



「は、ははっ」



 不意に、漏れたのは脱力したような乾いた笑いだった。

 刹那、まるで天満を思わせる殺気を発した月海に、対峙した男は目を見開く。次の瞬間には、圧倒的な力とともに空を仰いでいた。



「クッソ、なんなんだよ!!ていうかアンタのその髪色は翼と被ってて、それすら腹立つ…!!ああもうアイツラぜってー許さん!!」



 月海に倒された男、玉の幹部であり、白金の髪に幼い頃から武道を嗜む正統派のヤンキーで、名は紺谷(こんたに)。決して弱いわけじゃないし、あのままの月海にだったら勝算もあった。ただ、何事にも誤算は生じるもので、強いていうなら敗因は、彼の怒りメーターが破裂寸前だったことだろう。



 ***



 息を乱して、口の端についた血を拭うと、目の前の男はまた真っ直ぐに向かってくる。流石の天満も粘り強い安座間に少しだけ息を切らしていた。

 こうして2人で決着をつけず喧嘩をし続けていれば、だんだんと周りが静かになってきてそろそろ決着がつくな、と思ったとき、天満の視界の隅に人影が映った気がした。



「ッッ!?」



 急に動きが素早くなり、自分のことを牽制した天満に驚いた安座間だったが、さらに驚いたのは、天満の顔から一瞬だけ笑顔が消えたこと。

 安座間と距離を置いた天満は視界の隅に入った正体を確認したけど、そこを見ても誰もいない。けれど、その一連の動きはほんの数秒のことで、気付いた時には二連続の蹴り。しかもフェイントまでかけられ二発目はしっかり鳩尾に入れてくる。



「カハッ!!」



 ゼッテー骨折れた…。なんちゅー力だよ、バケモンかこの女…。けど、まだ…。


 縋るように手を伸ばそうとして、トドメとばかりに頭へ回し蹴りを受ける。意識が、途絶えた。



「気のせい、か?」



 ポツリ、呟いた言葉は歓声と雄叫びによって掻き消された。

 ハッとして顔を上げると、天武の仲間たちが幹部を囲んで勝利を喜んでいるようだった。

 みんな無傷というわけにはいかないけど、まぁ、今なら興奮しているし痛みに鈍感になり倒れるやつもいないだろう。

 遠目にそんな彼らを見て微笑んでいると、翼と紫呉がこちらに走ってくるのが見える。ああ、翼はやりきったんだな。少し遅刻な気もするけど。と気が抜けて、安心し、ほぅ、と息を吐いて、



 ーーーーーー…油断した。



 ゆるりと歩き出したが、凄い勢いで走ってくる2人はもう目の前まで迫っていて、その表情はなにやら…険しい。さらに視線は天満を突き抜けてその後ろを見ている。何を…?と思った瞬間には、生温い殺意が肌を刺していた。


 全く気配なく現れたそいつは明らかにその殺気を天満に向けていて、そんな天満の視界に赤がさす。



「「テン!!」」


「ッ、そいつ、捕まえろ!!」



 血を流す天満に2人の声が合わさったが、今はそんなことはどうでもいい。その危険人物を早く捕まえろ。

 笑顔の消えた彼女を見て、2人はすぐにその危険人物に向かったが、



「いや〜おれっちじゃ役不足かなぁ」



 危険人物の間延びした声とともに、彼らの視界は光に包まれた。



 ***



 遡ること2日前、天武で幹部として“朱雀(すざく)”の2つ名を与えられている蘇芳翼は街から離れた河原に立っていた。

 ちなみにここを見つけ出したのは、彼の野生児並みの直感力で、フラフラ歩いていたらここにつき、血の匂いを感じ取ったからである。

 日曜日に向けて体作りをするなんてもちろん建前で、気に食わないし大嫌いな男を探す為の嘘だ。これでアイツに恩を売ってやるぜなんて思って入る翼だが、心の奥底を突き抜けた奥、をさらに掘り進めたもうマントルにまで届きそうな奥では心配している。



「喧嘩、ねェ…」



 おそらくここで喧嘩がおこなわれた。しかも、結構な人数がいた。それは血痕の多さからわかるが、ここで喧嘩が起きたなんて話は聞いてない。



「こりゃ、キナ臭ぇなぁ」



 単純に紫呉がここで喧嘩をして、まぁどうせ奴のことだから勝ったとして、その後…。

 気分屋な紫呉の行動は予測不可能で、本当に彼がその時思ったことを行動に移す。正直普通にどこに行ったか探すなんて困難なことだが、



「まァ、なんとなく、こっち」



 バカ同士、何か通じるものがあったのか、翼は着実に紫呉の跡を追っていた。




 人気の少ない路地裏を、ただ思うままに歩いていく。時々、少しばかり頭のイッた人間に絡まれながら。何度か行き止まりに突き当たり、焦点の合わない人間やら幼児に退化したような言葉を喋る人間やらに絡まれ、ふと、ある場所が目に留まった。正確に言えば、ある場所の、ある物に。

 古びた布切れは、この汚い路地裏の風景に溶け込んで、見るからに汚い。ノミとかいそう。これでもいいとこ育ちな翼はしかめ面になりながらその側によって、()()を摘みとった。


 落ちていたのは、シルバーのシンプルな指輪。


 そういえば、アイツいつもこんな指輪つけてたなァ。と思い、そんな自分に、こ、これじゃァ俺がアイツのことめちゃくちゃ見てるみたいじゃねぇかよ!クソ!フザケンナ!死ね!と謎の暴言を吐く翼。


 兎にも角にも、手がかりを見つけたわけだが…。



「アイツまじで死んだんじゃねェか…?」



 これは本当に攫われたルートが濃厚になってきた。

 仲間の前で格好つけて来たけど、手がかりがここで途切れてんのは正直しんどい。



「仕方ねェ。胸糞わりぃけど、仕方ねェ…。しょうがなくだ。不可抗力。つーか、これならテンのやつが調べりゃ…。あぁ、テンは無理なのか。チッ。しょうがねぇ」



 攫われたとなれば、なりふり構っていられない。ご丁寧に指輪を落としたということは、手がかりをこれしか残せないような状況で攫われたということだろう。

 足早に空気の悪い路地裏を抜けて、翼は携帯を耳に当てた。



『はい。どうされましたかな、坊ちゃん』



 ワンコールで出た耳なじみの良い渋い声は翼を坊ちゃんと呼ぶ。

 


「紫呉っつー男の行方わかるか?」


『ご学友の方ですね。調べましょう。すぐにデータをお送りしますのでお待ちください。』


「おー頼むわ」


『はい。失礼します』



 蘇芳翼。長い歴史を持つ蘇芳財閥当主であり、ベンチャー企業の社長を務める蘇芳千鶴(ちづる)の一人息子。とんでもない金持ちの家に生まれ、世が世ならその時世の長とも呼ばれるような、そんな人物である。


 なぜそんな金持ちボンボンが不良なんか、ましてや暴走族の幹部になんかなっているのか世の中何が起こるかわからない。


 とにかく、絶大な権力を有する彼に基本不可能という文字はなく、執事である弥栄(やさか)に頼めば大体のことが叶ってしまうわけだ。

 家のことが嫌いで、避け続けていた過去(割と最近)もあったが、あくまでも過去の話であり、今は使えるものは使う主義となっている。


 電話を切ってからきっちり10分後、翼のスマホに先ほど電話をかけた弥栄から着信が入る。



「分かったか?」

 

『はい。隣町の工場倉庫のどこかで監禁されているかと思われます。倉庫地帯の中には防犯カメラが無く、特定はできませんでしたが、確かかと。』


「隣町?そんなとこまでまわざわざ…誰が」


『坊ちゃん、貴方様のことを考えて言わせてもらいますが、これ以上関わるのは得策ではないかもしれません。いえ、危険なのでやめてほしいです。』



 弥栄が強い口調でそこまで翼の行動に反対するのは珍しい。昔から翼がやりたいことは率先して応援し、やりたくないことは徹底的に排除してくれた彼なのだから、流石の翼も一瞬怯みかけた。


 しかし、怯んでる場合でもない。日曜日には紫呉を連れて行かなきゃ体面が悪いのも事実だし、テンも心配しているだろうし、なにより、弥栄がここまで止めるような相手がいるのなら、それの正体を掴んで天満に伝えることも“朱雀”としての役割だ。



「俺は、そんな脅しで怯まねェよ。さっさと教えろ」


『はぁ。仕方ありませんね。ですが、坊ちゃん。くれぐれも単独で攻め入ろうなどと無茶なことはなさらないように』



 弥栄さん、めっちゃフラグや、それ。



「おー」



 弥栄がフラグを立てながらも話してくれた内容、翼はその意外で大きな裏に流石に驚いて数秒固まった。

 そして流石に誰か呼ぼうかなと考えたが…。


 現地で紫呉助けりゃなんとかなるだろ。


 喧嘩バカな彼にとっては暴れられることが楽しみで仕方ないし、紫呉がいれば自分がピンチでも力を合わせられる。実際そこまで考えは至っていないが、何だかんだで翼は紫呉を信頼しているということ。


 とはいえ本番はここから。彼の長い戦いが始まる。


 常々、天満から馬鹿でもいいが少しは考えろと念に念を押されている翼は準備を整え、翌日の深夜、隣町の倉庫の集合する地帯に来た。

 準備と言っても大したものはなく、弥栄にもたされたものが大半なのだが。


 倉庫の数はおよそ100。この中から紫呉が監禁されているという場所を見つけ出し、数時間後に始まる喧嘩に向かわなければならない。ちょっとハードワーク。


 端から1つずつ確認する時間はない。紫呉が何か合図でも出してくれれば楽なのだが、そういうわけにもいかないだろう。一まず倉庫の建ち並ぶこの場所を徘徊しようと歩き始めた時、どこかで誰かの怒鳴り声が聞こえてきた。


 聞こえた声にニッと口角を上げる翼。



「日頃の行いがいいってのはこういう時役に立つぜッ!」



 倉庫の間を縫って、怒鳴り声のする元へ走りだす。

 駆け抜けた先には、口論をする2人の人相の悪い男の姿があった。

 こじんまりした倉庫の前で、2人の男が言い合いをしている。少し遠くには見張りなのかまた違う男も見えるが男2人の口論を止める様子はない。むしろ、いつものことだとでも言うように呑気に欠伸までしている。

 他にも見張りの男がいるようで、正確な人数は把握できないが、少なくはないのだろう。一まずぐるりと一周して倉庫を見たが、入り口は口論する2人の後ろにしかないようで、この中に紫呉がいるのならあの2人を通り越して中に入らなきゃいけない。


 せめて窓の1つでもあればいいのに、ボロボロの倉庫は劣化したトタン屋根が張られているし、天井からの侵入もできない。


 どうやって中を見ようか考えあぐねていると、口論していた2人はヒートアップしてついに殴り合いを始めた。ここで、さっきまで無関心を貫いていた見張りも動き出した。



(注意を引ければな…)



 見張りは全員体格のいい“本職”の人間で、素手というわけでもない。1人で突っ込むにはリスクがありすぎる。

 ふと、身を潜めていた倉庫を見上げるとプレートに“花火 燃料庫”の文字。つくづく運がいいらしい。

 頭に簡易ながらも作戦を思い浮かべ、倉庫の中に身を滑り込ませた。



 ***



 キュルルル…クゥウ



 腹から情けない音を出して横たわる紫呉は、外のうるささに眠れもせず苛立っていた。

 眠っていたら、スタンガンで麻痺ささられ拘束されて連行されたのだが、咄嗟に出来たことといえば指輪を落とすくらい。さらに、車に乗せられ、ここに連れられ水くらいしか口にしていない。正直こんな扱いをされるようなことをした覚えはない(自称)し、そろそろ我慢の限界も近い。



「はらへ…」

 


 携帯も壊されて、財布もとられて、正直しんどい。

 ただ、日曜日には遅刻せずに来いと言われているので行かなきゃいけないし、そろそろ動き出さなきゃまずいのだが…生憎外にいるのは普通のヤンキーなんかじゃなく、もっと危険で野蛮なものだと本能でわかると動けない。

 下手を打って死ぬのだけは勘弁。


 どんなに無茶しても死ぬようなことはするなと昔天満に言われたことがあるのだ。天満のそばにいて、天満に“白虎(びゃっこ)”という名前をもらったのならそれくらいの約束は守れる。


 けれど、動くなら今夜だ。多分、そろそろ動かないと日曜日に遅刻する。


 重たい体をなんとか起こし、ちょっとしたテクニックで縄抜けをする。約4日も縛られていたため、くっきりと拘束の跡が残っていた。


 連れてこられた物置のような場所は、初めからそういう目的に使われる場所なのか拘束具や拷問器具が置かれている。とりあえず、立ち上がって体を慣らしてみたものの、また腹が鳴り、もうすでに心は折れそうだ。


 外のうるささはなぜかヒートアップしているし、さらにうるさくて困る。今なら逃げられるだろうか?


 足には自信があるし、さっさとメシ食いたい。と、紫呉が扉に手をかけた時、耳をつんざくようなけたたましい爆音が鳴り響いた。



「なんだ!!」

「おい!燃えてんぞ!!」

「てめぇ!見張っとけ!!いくぞ!!」



 野太い叫び声が聞こえ、走り去る足音を聞こえた。

 チャンスとばかりに紫呉は扉をあけて、驚いた顔をした目の前の男を蹴り飛ばす。刹那、



「「あ」」



 炎を反射させ赤く揺らめく白金の男と目があった。


 そんな2人の邂逅は一瞬のことで、次の瞬間には迫り来る男どもを避け、絶妙なバランスで互いに動いて大男たちを翻弄し、全力で逃げる。


 翼の目的は紫呉の救出で、紫呉の目的は日曜日に遅刻しないことだけ。ここで戦うつもりはない。しかし、そんなに甘くもないのが現実だ。


 倉庫と倉庫がひしめき合うここは、迷路のようだがあちこちで野太い男の声が聞こえる。どうやら思ったより仲間がいたらしい。



「ッはぁ。よォ…思ったより元気そーじゃねぇかよ」


「…元気じゃないし、腹減った」


「十分元気だわ。ほらよ」

 


 一まず物陰に隠れながら、互いの顔も見ずに会話をする2人。翼は弥栄から持たされた荷物ごと紫呉に渡した。



「つーかこれ玉と色のバックについてるもんでかすぎだろ。あいつら本気で俺らを潰しに来たってわけかァ?」



 喋り出した翼の隣、紫呉は受け取った荷物の中身を開けて目を輝かせた。中に入っていたのは弥栄特製の軽食シリーズだ。早速いただきますを言い食べ始める。



「宣戦布告して来た割に、てめぇを誘拐なんざよくわかんねぇことするしよォ。何が目的かもはやわかんねェ。あ、つーかテンにこのこと言っとかねぇとだよな…」



 翼が徐にスマホを取り出した時、暗がりからいきなり人影が飛び出して来た。敵襲だ。



「やべ、」



 スマホ、破損。


 飛びかかって来た男から咄嗟に避けたはいいものの、思わずスマホから手を離し、地面に落としてしまった。

 一応回収したが、画面にはヒビが入り、電池も付かない状態だ。


 またしても2人で逃げることになり、勢いよく腕を振って走り出したはいいものの前から横からと次々とやってくる男たちに終わりが見えない。

 翼はそんな男たちをちぎっては投げ、ちぎっては投げ、と仕方なく相手をしているわけだが、そんな彼の少し離れた場所では紫呉がまだ弁当を食べ続け、敵の攻撃を避け続けていた。どうりで敵が減らないわけである。



「紫呉ェ!!!まともに戦いやがれ!!」


「…」


「無視すんな!クソがァ!!」


「餓鬼がぁ!!余所見すんなボケェ!!!」



 罵声に罵声が飛び交う中、不満げに翼を見た紫呉は、やっと最後の一口を飲み込んで、タイミングよくナイフを持って殴りかかって来た男に弁当箱を投げつけた。

 紫呉が戦う気になったところで、互いにアイコンタクトをすると、2人同時に駆け出した。



「逃げれるか」


「多すぎてムリ。たおしたほーが早い」


「あークソ、ぜってー遅刻じゃねぇか」



 夜中の方が身動きが取りやすいと踏んでいたのが少し仇になった。どうせ倒すならすぐにでも来たというのに。そうは思っても時間は巻き戻らないため、大人しく戦うしかない。



「あ、そーだ。弁当よりもてめぇに渡すもんあったわ」



 そう言って翼は、指輪を紫呉に手渡した。



「んー」



 いつのまに持っていたのか、ナイフをいくつか所持している紫呉に遠い目をしながら、掃討戦が始まった。



 ーーーーーーー

 ーーーー

 ーー



 空が白み、太陽の光が倉庫の間を指す。

 普段は静かなはずの倉庫だが、それに違わずその時間帯、静かになったその場所。

 ただ、所々に倒れる男たちと、少なくない血痕に何があったかは想像に硬い。



「お、オレはただ、お前らの誰かを捕まえれば金が貰えるって聞いてだな、」


「誰の命令で、だ」


「てめぇらと変わんねえような餓鬼だよ!気配がないっつうか印象に残ってねぇし、あんま覚えてねぇ!」


「目的は」


「そ、その方が盛り上がるって…。それと、女?を消すとかなんとか…ッヒィ!!」



 返り血を浴び、血のついたナイフを手にする儚げな少年、紫呉はその顔に珍しく残忍な笑みを浮かべると手にしたものを振り下ろす……ように見せかけて地面に男の頭を叩きつけ気絶させた。



「…やべえな。普通に遅刻だし、テンがあぶねーかも」


「嫌な予感しかしない」



 残念なことに、そういう予感はだいたい当たる。


 その後、2人は翼が事前に待たせておいた車に乗って、現場に向かったわけだが、着いて早々敵の幹部を蹴散らし、いつのまにか天満の背後に立った男を見て駆け出す。しかし、少し遅く、その男は不敵な笑みを浮かべて小さなナイフを投擲し、大層にも閃光弾を放って姿を消したのだった。



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