第9話:【盾の喜劇】
久しぶりの投稿です。サボっててごめんなさい>_<
「その、ありがとうございました。お陰で命拾いできました」
状況についていけず自体を飲み込みきれてなかったが取り合えず目の前のオカマに僕はお礼を言った。
それにしても、この人の装備は見ればみるほど不思議だ。だって、装備してるのは盾だけで武器になりそうなものは何一つ装備してないんだぜ?
「いいのよぉ〜。それより、あなたは何でこんなところにいるのよぉ? 迷子かしら?」
「いいえ、此処には《ポーション》を作るための素材を取りに来たんですけど、途中でオーガに襲われちゃって……」
オカマは僕の話を聴くとなるほどなるど、と二回大きく頷いてから気持ちの悪い笑みを浮かべた。普通に笑っているのだろうけど、本当に気持ち悪いからやめて欲しい。
見た目が女の人っぽい物ならまだ、何とか耐えられる自信があるけどコレはムリだ。何て言ったて、身体つきがプロレスラーそのものだから。どこかでカネの雨でも降らせてそうだ。
「それは、それは災難だったわね〜。素材を集めるって事は此処よりももっと奥へ行くって事でしょ〜? 」
「はい、そうなりますね……。正直、不可能に近いと思いますが」
実際にこの《ゾグド樹海》の恐ろしさを体験した僕は、到底これ以上先に自力で進む事など出来ない事を悟っていた。そりゃそうでしょ? 衝撃だけでHPバーを半分持ってくようなモンスター相手に紙装備の僕が立ち向えるわけないじゃないか。さっきだって、このオカマが助けに入らなければ死んでたはずだ。
「それなら、心配はいらないわ〜。わたしが守ってあげちゃうから〜。こう見えてもわたし強いのよぉ〜?」
オカマはそう言いながら僕に向かって投げキスとウィンクを飛ばす。絶対に受け取りたくない。当たったら、即死だよ。あと、内股やめろ。
とは、言うものの確かにこのオカマが強いのは確かだ。何故、サービスが始まって時間もそんなに最高レベルに近いモンスターとやりあえるのか、物凄く不思議だ。チートでも使ってるんじゃないのかと疑ってすらいる。
「それじゃあ、遠慮なくお願いしますね。《キレイな水》が必要なんです」
だが、せっかくのチャンスを無駄にする事はない。オカマの強烈なキャラに僕が耐えればもれなく《キレイな水》が手に入るんだ。言い方は悪いかもしれないけど、遠慮なく利用しさせてもらう。
「分かったわ。《キレイな水》ね〜? それなら多分、この先に流れている小川で取れるはずだわ〜」
「そうなんですか!? ありがとうございます。ここのモンスターは強いし、《キレイな水》も中々、見つからなそうで正直参っていたんです。助かります」
「いいのよぉ〜。もう♡ それより、わたしはララっていうの! よろしくね〜。取り敢えず、パーティー組みましょうか?」
ララと名乗るオカマのおっさんはそう言うってから人差し指を空中でスクロールさせてメニューウィンドーを呼び出した。そして使い慣れた様子で操作しながらパーティー申請を僕に送ったてきた。
それにしても、ララって……。どう見てもそんな可愛らしいキャラネームをつけていい見た目じゃないのだが。
ゴリ子とかゴリ美とかに改名したほうがいい。
「宜しくお願い致します。キャラネームはもうわかってると思いますけど僕はミチルです」
内心でとんでもなく失礼な事を考えながら僕は極力顔に出さない様に名前を名乗った。
「オッケー、ミチルくんね♡ 背中は任せてね〜♡あと、敬語は結構よ。ゲームの中なんだからフランクフルトでいきましょ〜♡」
「……はぁ」
ゴリ子……じゃなくて、ララと僕は一通りの自己紹介を終えると小川があるとうい樹海の奥に向かって歩き始めた。
「ララは何でそんな強いんだ? まだ、始まって数時間だろ?」
敬語はいらないというので遠慮なくいかせてもらう。普段なら持ち前のバッドステータスであるコミュ症を発揮していきなり敬語は無理なのだが、ゴリラ以上、人未満の生物の前では何故か、普通に話せた。
ーー人じゃないからなのか!?
「それはねぇ〜、とったスキルのチカラがおおきいわね」
「と、言うと?」
「わたし、こう見えてもM気が強くてねぇ〜モンスターに殴られたくて《盾術》、《物理耐性》、《魔法耐性》、《状態異常耐性》の四つのスキルをとったんだけど、この《盾術》が強くかったのぉ〜♡」
こう見えてもって……十分にヤバイのだが。これに更にMが加わるのかよ。大丈夫なのか、この人。
しかも、何だかとんでもないスキル構成だ。もはやネタの領域に到達している。普通は《盾術》って《剣術》とかと一緒にとるんじゃないのか?
「……盾が?普通は 、盾って攻撃できないよね?」
盾というのは戦士が身を守る為に使う装備だ。そもそも、攻撃性がない筈なのだが……。
「ええ、まぁ、最初は攻撃できなかったわ。だから、盾で殴って雑魚mobを狩ってたの」
「盾で殴ってって……」
普通に《拳術》とかでよかったんじゃないのか、それ? 盾ない方がガード出来なくて攻撃もされやすそうだし。敢えて口には出さないけど。
「でも、スキルレベルあがって驚いたわ。取得できた《アーツ》に《カウンターアタック》ってのがあるのだけど、相手の攻撃力の半分を跳ね返せるのよ。ボスモンスターには使えないみたいだけどね」
《カウンターアタック》っていうと、さっきララがオーガを倒した時に使った技か。オーガは極端に攻撃力が高くてHPが低いタイプだったんだろう。
「盾、めっちゃ強いじゃん。僕も《盾術》撮ればよかったかな?」
「それが、どうやらそういうわけでは無いらしいわよ」
冗談半分に僕が言うとララは首を横に振った。どういうことだ?
「このゲームって例え同じ《スキル》を持っていても取得できる《アーツ》はその人のプレイスタイルとかスキル構成、装備によって上げているステータスで違うみたいなの。わたしは極端なプレイスタイルが功を奏したみたいだけどね♡」
「……このゲーム、本当に変なところにこだわるよな」
ララが言うことが本当なら盾で無双するなどは夢のまた夢の話だ。ララの様なスキル構成やM気満載の鬼畜プレイなどする人はまずいないだろうか。いたとしたらそいつは勇者だ。ゴリ子二号と呼んであげてもいい。
「ミチルは弓を使うみたいだけど、どんな感じなのぉ〜? ネットの掲示板ではパープルマウスに殺されるレベルだって聞いたんだけど〜?」
「あはは、何ですかそれ? パープルマウスに殺されるってヤバイでしょ?」
それって僕の事でしょ? 絶対。あの痴態がネットの掲示板で晒されたのか、酷い。僕は無理やり顔に笑みを浮かべながら知らないふりをした。
「そうね〜。流石にあれは嘘だったのかもしれないわ」
ーーいや、嘘じゃないです。本当です。とは口が裂けても言えない。
「そうですよ。嘘に決まってますよ。ネットの情報なんて当てになりませんから」
「……まぁ、そうね」
そうこう話しているうちに、僕とララは例の小川に辿り着いたのだった。
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