第3話:【チュートリアル】
本日、三つ目です。ストックとかなくて時間ある時に書いて、直ぐに投稿する形なので大分、不定期更新になるかもです
ーー「やあ、君が新しい冒険者かい? 私はリリアナ。リリーと、呼んでくれ!!」
気がついたら綺麗な森の中にいた。そして目の前には猫耳を頭の上からチョコンと生やし弓を携えたボーイッシュな感じの少女がニコニコと微笑んでいる。
目の前に浮き出るパネルには『チュートリアルを開始しますか?はい/いいえ』と出ている。
どうやら、無事にキャラクターメイキングは終わりチュートリアルまで来たようだ。
チュートリアルはスキップできるみたいだが、視界の端っこに表記されているリアルの時間は十一時五十分。βテスト開始まではまだ少し時間があるのでチュートリアルを受ける事にする。
「僕はミチルだ。よろしく、リリー」
「オッケー。ミチル。早速だけどまず武器を選んでね。弓には三種類あって、ショートボウ、ロングボウ、和弓があるよ!! オススメはショートボウかな?」
会話の通り弓には三種類ある様だ。ショートボウが一番扱いやすそうだったので無難なショートボウを選択した。
「オッケー。ミチルはショートボウを選んだのね。私とお揃いだね、えへへ」
……何、この美少女。普通に可愛んですけど!! NPCですよね? さっきまでいた、いけ好かない女神様と同じNPCですよね?! なんだこの差は!?
対人スキル。特に対女子スキルが致命的に欠落している僕には例えばNPCでもハード過ぎる。
「あ、嗚呼。そうですね……」
「じゃあ、取り敢えず、モンスター倒してみようか!!あそこに居るレッドボアを倒してみて!!」
赤いイノシシを指差してニコニコしながらリリーが言う。
いやー倒してみてって、普通、弓の使い方とか教えてくれないのかな? あれか、論より慣れろって奴か??
兎も角、レッドボアとかいうあの赤いイノシシを倒さない事には始まらないので弓を構える。
「えーと、こうか?」
なんとか、弓に矢をつがえた僕はレッドボア目掛けて矢を放った。
……が。
「……へ?」
矢は、レッドボアに当たることなく緩やかな放物線を描きながら数メートル先の地面に突き刺さった。
「……あれ? もしかして、僕、地雷の武器とったかも? 」
レッドボアは流石に僕の存在に気がついて雄叫びをあげながらこちらに突進してくる。
「え、え、えぇぇぇちょま、えっ!!」
そして、見事に僕の身体は宙を舞った。
「あはは、ミチル。ヘッタクソだね!! も一回頑張って!!」
リリアナさん。鬼かよ……。だが、視界に表示されるHPは減っていない。恐らくチュートリアル補正だろうか?
もう一度、僕は弓を構えてレッドボアに挑んだのだった。
「はぁはぁ……。やっと、倒せた。やっとだ!!!」
「おめでと〜。ミチル!! なんとか、倒せたみたいだね!! もう、私が教えることは何もないよっ!! 餞別にこれあげるねっ」
ーー【リリアナから『初心者セット(弓)』と2000Gを貰った。】
というログが流れる。これでようやくチュートリアルは終了した様だ。あれから、レッドボアに突っ込まれること約七回。奴の眉間に矢が刺さった時は物凄く嬉しかった。
「じゃあ、私はこれで。この後、彼氏とデートの約束があるんだ。この森を真っ直ぐ抜けると街があるからまずはそこへ行くといいよ。バイバイ!」
リリアナはそう言うと森の奥へと消えていった。
ーーていうか、彼氏いんのかよ!
【これより先はオンラインエリアです。ルールとマナーを守って他の冒険者とよい冒険を!!! 】
ここからは、オンラインになるらしい。時刻は十二時十四分。既にβテストが開始されてから十四分の時が経過していた。
「うわー出遅れた!! 」
まさか、チュートリアルにあんなに時間を取られるとは思ってもいなかった僕は街まで全力疾走した。
◆
「スッゲー!!! 」
森を抜けた先には巨大な都市があった。そのリアリティに思わず息を呑んだ。
確か、『ヒューマス』を選んだプレイヤーのスタート地点である最初の街。『貿易都市ランドル』という名前の街だったはずだ。
街の中には既にプレイヤー達で賑わっており、皆んな初めてのVR空間に興奮している様だ。僕も柄にもなくワクワクしてしまっている。こんな綺麗な中世風の街なんか映画とかアニメでしか見たことないよ。
【メッセージを受信しました】
街の中に入るとログが追加された。メッセージが届いたみたいだ。僕はメニュー画面を呼び出してメッセージを確認する。
ーー『ギルドに登録してみよう!!』
つまり、またチュートリアル的な奴だ。ギルドと言ってもどこにあるのか検討つかない。仕方なく、僕は露店のNPCに声を掛けた。
「おじさん。これなんですか?」
「兄ちゃん、こんなのも分かんねーのか? バナナだよ、バナナ。一個、100Gだ。安いぜ?」
一つ、言っておくが僕は決してバナナが分からなかった訳じゃない。ただ、会話に繋げるきっかけが欲しかっただけだ。
「いや、遠慮しておくよ。それより、ギルドの場所って知ってますか?」
「ギルドの場所って言っても何ギルドを兄ちゃんは探してるんだ? 」
どうやら、ギルドと言っても色々なギルドがある様だ。
「生産ギルドです」
迷わず答える。
「ほう、兄ちゃん、職人さんか!? 生産ギルドならそこの角を右に曲がって真っ直ぐに行ったところにあるぜ?」
「そうですか。ありがとうございます。では、失礼します」
「おう、またな!! 今度は俺のバナナ買ってくれよ?」
そう言って露店のおじさんは手を振った。
……おじさん、『俺のバナナ』だなんて間違っても女子に言っちゃダメだからな?
僕は口には出さずに苦笑した。
露店のおじさんに言われた通りに突き当たりを右に曲がって真っ直ぐ進んでいると一際大きな建物が見えてきた。そして、建物には行列が出来ている。
……あれが、生産ギルドか。思ったよりも人が多いいな。
生産系なんて取る人は中々居ないだろうと踏んでいたのだがそれは誤りだった様だ。結構な人数のプレイヤーが並んでいる。
「これは、少し時間かかりそうだ」
若干、気は乗らないが僕は黙って列の最後尾へと並んだ。
「……あのう〜、こんにちわ!! 貴方も生産ギルド待ちですか?」
暫く並んでいると、僕の前に並んでいた女の人がたどたどしく話しかけてきた。
黒髪のポニーテールだ。恐らく、見た目は弄ってないのだろう。
……やばいよ、僕の対女子スキルはゼロ地点突破してるんだぞ!?
「は、はい。そうですよ。……て、ことは貴方もですか? 奇遇ですねぇ……」
奇遇も何もこの列に並んでいる時点で生産ギルドに登録するのは分かりきっている事だがそこはスルーする。
「そ、そうですね。私、オンラインゲーム初めてでよく分からなくて……」
「そうなんですか。すぐに慣れますよ。と言っても、僕もVRゲーム初めてだから緊張してますけどね」
緊張してるのはVRゲームが初めてだならではなく女子と話す事に慣れていないからなのだが、その事は悟られる訳にはいかない。意地でも悟られないぞ!!
「そうですよね。まるで、異世界にでも来た気分です。あ、遅くなりましたけど私はユンと言います。よろしくです」
ユンと名乗った少女は思い出したかの様に名乗るとペコリと頭を下げた。
……何というか、物凄くお辞儀綺麗だな。同い年くらいなのに。
「ぼ、僕はミチルと言います。よ、よろしくお願いいたひ、します!!」
かみまくりである。恥かしい。
「ミチルさんですか? よろしくです!!」
ユンはそんな僕の態度を気にした素振りも見せずにニッコリと微笑んだ。
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