我が家のゴーストハンター達
あなたは霊が存在すると思いますか?
もし世界中の人々にそう問いかけたら、どんな答えが返ってくるのかな。
「見た事は無いけど、いると思う」
「いる訳ないじゃん。バカじゃない」
「私には見えます! 貴方の後ろにも」
「あれはですね、科学的に解明される現象で…」
きっと答えは千差万別。まあ、十人十色ってやつなんだろうね。
見えなくても生きていく上で何の支障も無いし、見える人は大抵『生きてる人間の方が怖い』と言う。
私自身は何も見えない。何も感じないし、何も聞こえない。
だけど私の家族には、見える人間が2人います。
それが父と姉。我が家の心霊担当。
あ、ちなみに別に拝み屋とかはやっておらず、普通の職業に2人とも就いてます。
姉はやたらと憑かれやすくって、耳が顔ぐらいの大きさに腫れ上がったり、全然別の人の顔になったり(←声や体型は姉のまま)、小さい頃から大変そうだったなー。
よくメソメソ泣いて、『外は怖いから行きたくない』って言ったりしてた。
そんな姉も今じゃすっかり強くなって、たまに『ぶっ飛ばされたいの?』とか『次は無いからな』とか、ドスの効いた声で言ってます。誰もいない場所に向かって。それが怖い。
父は、姉曰く『私なんかが太刀打ち出来ないぐらいレベルが違う』らしいです。
霊能力皆無な私には、優しい父でしかありませんが、姉にとっては違うみたい。
幽霊との付き合い方や、逃げる方法などで盛り上がってる2人を見ると、私とは住んでる世界が微妙に違うんだな…と思ったり。
でも聞き耳を立てていると、『目を合わすな』、『バックを取られるな』、『やられる前にやれ』など危険な言葉がよく出てきて、この人たちはゴルゴ13なの? って不安になります。
今日は、姉から聞いた怖い話を書こうと思います。
でも、先にお伝えしとくね。全然怖くないです。
夏になると怖い話で大活躍するI川さんに弟子入りでもして、怖い話とはどういうものか、1から勉強してきて欲しい気持ちでいっぱいだけど…しょうがありません。
父と姉にとっては、これが怖い話らしいし。
あ、最初の質問の私の回答は、『見えないけど、存在すると信じてる』です。
ではでは、実際にあった心霊話をご賞味あれ。
①走るお爺さん
うちの姉がね、ある日、冷や汗をかいて帰って来ました。
「あのお爺ちゃん、超怖いんだけど!」って言いながら。
何かと思うじゃない? だから聞いたのよ。
それがね…
学校からの帰り道、姉は信号待ちしていました。
自転車にまたがりながら、周囲を何となく見ていたのですが、何か違和感が。
(あれ、そういえば今日って全然人がいないな)
いつもはそこそこ人が多い大通りなのに、この日に限って誰ともすれ違わないのです。
ですが、そんな日もあるだろうと深く考えず、ボーっと信号の色が変わるのを待っていたのですが、やっぱり何だか変な気がします。
(…そういえば隣で信号待ちしてるお爺ちゃん、さっきの信号にもいなかったっけ?)
姉の隣には、小柄なお爺ちゃんが立っていました。
身長は140センチ前後ぐらいで、うっすら頭皮の見える頭に、白髪を綺麗に撫で付けてらっしゃいました。背中は丸まっていて、シャツに毛織物のベストを着た、ごく普通のご老人です。
好々爺というに相応しいお顔立ちで、怪しくも何ともありません。
(うーん、勘違いかな? お爺ちゃんだし、徒歩だもんね)
話が脱線しますが、姉はかなりのスピード・スターです。びゅんびゅん飛ばして走ります。
当たり前ですが、歩いているお爺さんが同じ速さで…なんて、まず有り得ません。
なので深く考えず、ちょうど信号が青になったので、自転車を走らせました。
何だか今日はついてないらしく、また信号で引っかかりました。何気なく横を見ると。
(……いやいやいや、おかしいでしょ。よく似た別人? いや、同じ服だ)
先ほどの信号でご一緒してたお爺さんがいました。ニコニコ笑いながら。
(私が知らない抜け道でもあったのかな? うん、たまたまだよね!)
姉は無理矢理ポジティブに考えると、青に変わった信号を颯爽と走り出しました。
しばらく快調に走っていたのですが、またまた信号です。仕方ありません、そういう日もあります。
(って何でまたいるの!? どうやったのよ!!)
姉よりも先に、信号待ちしてらっしゃる方がいました。お爺さんです。
抜かれた覚えも無いのに、先に信号にいるお爺さんに、姉は恐怖を感じ始めました。
(何で? 何なの、これ。しかも、未だに人いないし)
車は走っているのですが、周囲には人っ子ひとり見当たりません。
危険を感じ始めた姉は、信号が青に変わるや否や、猛スピードで自転車をこぎました。
幸いにも周囲には人がいなかったので、思う存分スピードを出しました。
おっと、しかし信号は赤です。そして、お爺さんはもちろん居ます。
(………。こうなったら!)
信号が青に変わりましたが、姉は自転車を動かしませんでした。
お爺さんがどうやって先回りしているのか、見極めてやろうと思ったのです。
青に変わってから…数秒でしょうか? お爺さんが歩き始めます。
(!?!?!?)
お爺さんは歩いています。あまり足を地面から離さず、すり足のような感じで歩いて行きます。
動作はどう見ても《歩いている》なのですが、尋常じゃない速さです。
残像が残って見えるほどの速さで、気付いたらもう点ぐらいの大きさにしか見えません。
姉は思いました。あれは人間じゃない…と。
家までは大通りを真っ直ぐです。
でも、お爺さんとこのまま一緒に進むのは怖かったので、姉は途中でコンビニに寄り、大通りよりも1本内側の道、信号の無い住宅街を通って帰って来たそうです。
「汗ひとつかかないで、ずっと同じ姿勢で、しかも笑顔。怖すぎでしょ!」
この事がトラウマになって、姉はしばらく大通りを自転車で走れませんでした。
危険を回避するには、違和感を感じたらすぐに対処することだそうです。
皆様もお気を付け下さい。見た目が普通だからといって、中身が普通かは分かりませんから…。
読んで下さって、ありがとうございました!