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第4話 『頂きます!・・・あれ?』

ワン・ラブ  第4話  『頂きます!・・・あれ?』



「さぁみんな出来たわよ。いただきましょ」

 外したエプロンを片手に理央が居間に座って

「それじゃ頂きます」『頂きます!!』

 テーブルの上には理央が丁寧に盛り付けた、美味しそうな料理が並びその中央にはあの唐揚げ。ころっとした唐揚げが三角お山を作っている。

「それじゃ、今日は茜ちゃんにお酌してもらっちゃおぉかな?」

 と秀人が言ってそれに反応して茜が腰を浮かそうとすると

「ダメよ。今からそんなことさせちゃ」

「若い子のほうがいいのは分かるけどパパは私で我慢しなさい」

 と理央が缶ビールを秀人に差し出すと

 口をとんがらせながら秀人はグラスを突き出した。

 三分の一くらい残してグラスを置いた秀人は

「じゃぁ、優太。パパが唐揚げよそってやるよ」

 と今度は優太に声をかける

 さっきのやり取りで笑いを堪えていた茜も横に座る優太を見る。 喜んでお皿差し出すと思っていたのに先ほどまでの元気がなくなっている。

 大きくブンブンと頭を横に振って断るそぶりを見せている。


「なんだお前もなんかあるのか?」

「ぼく、からあげいらないよ…」

「お前が食べたいっていったんだろ?」

 秀人もちょっとだけ苛立ちはじめたようだった。

「でもぼくのぶんのからあげは、おねえちゃんにあげるんだ」

「大丈夫だよ。理央がたくさん作ったから。それに茜ちゃんだってそんなに食べられないよ。ね?」

 問いかける秀人に頷く茜も

「優君、そう言ってくれるのは嬉しいし、唐揚げ大好きだけど、お姉ちゃん優君と一緒に美味しく食べたいな」と諭す。

 ポロポロと雫をこぼしながら

「どうしてもおねえちゃんにあげたいんだもん」とうったえる優太に茜は、

「じゃぁ。こうしよっか?」

 と優太の取り皿を持って

 菜箸で唐揚げを4つほど取り分けて優太の前に置き今度は自分の箸に持ち替えて、

「これ、1つだけお姉ちゃんに頂戴?これだけでお姉ちゃんはとっても嬉しいな?」

それでも納得しきれないのか、グジュグジュしながら考えこむようにしていたが、しばらくして「うん…」

 と力なく返事する。

「ありがとね…」

 優太の優しさにちょっと胸がくるしくなった茜も涙ぐみながら、ポケットの中のミニタオルを出して優太の目元にあてがう。

 やっと優太も落ち着いたのか、

「ごめんね。おねえちゃん。ぼくいっしょにたべる」

 と返事をしてくれた。

「おぉっ、解決かな?理央。新しいビール持ってきて」

 と今まで黙っていた秀人が言うがすかさず、

「パパは何もしてないでしょ。すぐに苛々しちゃってさ」

 と理央が突っ込むと、秀人はさみしそうに嫌々立ち上がり自分でキッチンにビールを取りにいってしまった。


「優君。唐揚げ美味しいね」

「うん。いっしょにたべるともっとおいしんだね」

 もうすっかり泣き止んで大きな唐揚げを頬張る顔はいつもの笑顔に変わっていた。

 

 このときはまだ気付きもしなかった。優太と出合ったときに感じた違和感だって、唐揚げの事だって優太が言ったことはみんな意味があったなんて気付くことができなかったんだ。優太からあの言葉を聞くまでは…

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