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第16話 『ワン・ラブ』 最終話

『ワン・ラブ』 第16話 『ワン・ラブ』 最終話


 最後のミルクティの香りのお湯に浸かる。ぷかぷかしている優太のアヒルのおもちゃを指でつつくぎこちなく傾くアヒルはなんだか寂しそうだ。



 楽しい時間はあっという間に過ぎてゆくもの、先程まで笑い声が絶えなっかった居間も静まりかえっている。

 そうっと階段を昇り書斎へと入る。優太が眠たそうな顔をしてうさぎのぬいぐるみを抱きしめながら、布団の上にアヒル座りをしている。


「優くんただいま」

「うん。おかえり、あかねちゃん…」

「なんだ。寝ててもよかったのに。」

 と言うと優太は悲しそうな目をしてふんふんと首を振る。綺麗にたたんだ着替えを椅子において優太の傍らに座る。すると優太はをこちらにむいて潤んだ瞳で見つめてくる。思わず頭に手を優太に柔らかい髪を撫でてあげるとゆっくりとぬいぐるみをほどき両腕を首に回して抱きついてくる。


「ねっちゃたら…おわかれになっちゃうから…」

 はっとして体が硬直するのが分かった。

 一番耳にしたくなかった言葉が心に突き刺さった。


「ぼくはゆうただから…そろそろもどらなくちゃ。ぼくはゆうたとして、いきていかなきゃ」


「うん、うん」

 と頷くと膝に落ちる無数の滴

「ねえ、あかねちゃん。もっといっしょにいたいよ…」

「私も一緒にいたい」

 堪えながら言い、やっと口にした言葉は

「今、お別れなんて言われても…もっと話したいこと沢山あるのに…ずっとこのまま一緒にいられるって思ってたから…」

 また優太を傷つける言葉。


「いえないよぅ…ぼくだっていっしょにいたいんだもん。やっとあえたのにすぐにさよならだよなんていえないよぅ」


「ごめん、ごめんなさい。優君。そうだよね…」

 自分の言った言葉に後悔する。


「うん。あかねちゃんはわるくない。ぼくはどうしてもあかねちゃんにもういちどあいたかったの。あって、ちゃんとありがとうをいいたかった。ぼくはしあわせだったって…あかねちゃんがきずついたままずっといきていくのがいやだった」

「私のために…」

「うん。だってあかねちゃんはいつもぼくとあそんでくれた。おはなししてくれた。あいしてくれた。それだけでじゅうぶんだったもん。ぼくはあのとき、さいごにあかねちゃんにあえなくてもしあわせなきもちで、ねむりにつけたんだよ。たのしいおもいでいっぱいあったから…でもこんどはこうしていっしょにいられる」

「有難う、私もずっとありがとうを言いたかった。あの時言えなかった言葉。私こそ沢山の思い出と愛情を貰ったのに最後にありがとうも言えなかった。だから今度はちゃんと言いたい。優くん。いや、蘭丸。私を愛してくれてありがとう。これからは君の愛情を胸にしまって生きていける。そしてまた、会うことができてほんとに嬉しかった」

「あかねちゃんあんしんして、ぼくはぼく、ゆうたもぼく、ちがうものじゃない。ただ、ぼくはゆうたとして、これからいきていく、だから、ぼくがいなくなるわけじゃない。いままでのことはわすれちゃうかもしれないけど…ぼくは、ぼくだから、きっとすぐに、あかねちゃんとなかよくなれるからしんぱいしないでね」

「ごめん、一つ気になる。今までのことって今のことも忘れちゃうのかな?」

「う~ん。わからない。でもね、でもね。これだけはやくそくできるよ。

いまこうしていること、あかねちゃんのこのあったかさはぜったいにわすれない」

「うん、ありがと。それだけで十分嬉しい。でも私はぜ~んぶ覚えてるし、忘れない。蘭丸のやさしさ、優太のやさしさ。み~んな、忘れないから」


「うん、あかねちゃん。ありがと。ぼくはず~とあかねちゃんがだいすきだった。ぼくがいっしょにいることで、あかねちゃんがえがおでいてくれることがうれしかったんだ。だからもうぼくのことでかなしい、おかおはしないでね」


「うん。わかった…」

 別れの時が近づいていることにまた涙が溢れる。


「だめだよ~ こんどはちゃんとぼくのだいすきなえがおのあかねちゃんでおわかれするんだから~」


「ごめんね…うん。ちゃんとしなくちゃおねえちゃんなんだから…」

 優太はほそい腕をいっぱいにのばして優しく頭を撫でてくれた。

 昔、自分が蘭丸にしていたように…


「じゃあ。そろそろおやすみしよ。あかねちゃん」

「うん…」

 布団に横になり電気を小玉ひとつにする。


「ゆっくり休んでね。蘭丸。本当にありがとう」


「うん、あかねちゃんもほんとにいままでありがとう。ぼくをたいせつにおもってくれて、ぼくはとってもしあわせだよ。ありがとう…おやすみなさい…」


昔とおなじようにやさしくなでてながらねかしつけた。ふしぎな数日間が終りを告げた。とても幸せな時間を過ごすことができた。

いままでのすべてが報われた時間だった。いつまでも冷えることないぬくもりに包まれて眠りについた…




翌日


「ほらあ、優君、一人で歩いてると迷子になっちゃうぞ」

 優太の左手をぎゅっと捕まえる。


「へへへえ、だいじょうぶだよ、あかねおねえちゃん」

「そっちじゃないよ~」

 といいながら駅前の道を歩いていると何か違和感を感じる。


「あれっ?優君。ここってお花屋さんだったよね?」


「ええ~ しらないよ~だ」

 といいながら口元に人差し指でシーのポーズをして笑いながら、駅へと私を導いてくれた。まるであの頃のように…





「ワン・ラブ」     おしまい

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