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第13話 『はなの魔法?』

ワン・ラブ 第13話 『はなの魔法?』



「夢はいつかさめるもの、魔法はいつか、とけるもの」

「うん。わかってる。ティラル。ぼくちゃんとできるから」


 かすかに翠さんと優太の声が聞こえるけど何を話しているかまでは聞き取れなくて、はっと目を覚ます。


 体を起こすとそこには変わらない笑顔の優太がいた。


「あかねちゃん。きゅうにねちゃうからびっくりしちゃったよ」

「優君ごめんね」


「うん、へいきだよ。ねぇねぇ、おはなさんたちみようよ」

 優太に促されて立ち上がる。


「きっと。お花達が嫉妬して悪戯したのね。あなた達があまりにも幸せそうだから」

 と翠さんが話す。


「そんなんですかぁ?」

「そうそう、うちのお花達は悪戯好きなの。ふふっ」

 と言いながら店の外に出ていってしまった。


『がしっ』

 と優太が腕にしがみついてくる。

「はやく、みようよぉ」


「うんうん」

 引っ張られて店を歩く。冬の花々が並ぶプリムラ、パンジー、クロッカスなど、控えめではあるが美しい花々が店中に並べられている。


「ねぇねぇ。これこれ、おうちにもあるよぉ」

 と指さすのはサンセベリア。何かをごまかすようにはしゃぐ優太。


 ふぅっと冷たい風が入ってくる。お客さんが来たようだ。サラリーマン風の若い男性だ。やせ型で優しそうな人だった。彼女へのプレゼントでも買いにきたのだろうか。


 あまり気にせずにしゃがんで見つけた可愛い紫色のパンジーを持ち上げて優太に見せる。


「ねぇ、優くんこのお花、綺麗だよ。これ買ってかえろうか」「うん、かわいいね。つれてかえろうよ」



「どうですか?みんな素敵でしょ?お一ついかが?」

翠さんが、話かけている。

「いやぁ~ 世話とか難しそうだし、もし枯らしっちゃったら可哀想だし」

と男性は答える。

「大丈夫ですよ。ちゃんとお教えしますから。ふふ。じゃぁいつでも声をかけて下さいね」


彼女へのプレゼントではなさそうだ。

ひとしきり店をウロウロしてたまに花びらにそっと触れたりはしていたが、しばらくして翠さんに、

「また、きますね」と告げ、会釈して店を出ていった。


「彼、いつもお店の外から眺めていたから今日は勇気をだして中にお誘いしてみたの」

「私、引っ込み思案だからなかなか声かけられなくて、お客様相手のお仕事なのにね。ふふっ」

「お花やマシェとおはなししているほうが合ってるのかもしれないわ」


 翠さんはそんな風におどけてみせた。


 結局急に襲われた眠気の謎は解けることはなかったが、もしかしたら蘭丸と翠さんが何かお話したいことがあったのではないかと思う事にした。そもそも蘭丸と再開出来たこと自体不思議なことなのだから今更、不思議なことが起きてもおかしく思わなくなってしまっていたのかもしてれない。


 翠さんとマシェちゃんとお別れをしてお店をでる。左手には優太の手を握り右手には手提げ袋に入れて貰ったパンジーの鉢植えを持って来た道を引き返す。


「おはな、たくさんかわいかったね。」

「うん。優君、男の子なのにお花好きなんだね。将来はお花屋さんになるの?」


「へへっ、うん。おはなもすきだけど…ぼくはもうなにになるかきめてるんだ」

「へぇ~そうなんだ。教えて教えて」

「うんとね。ぼくがおとなになったらなるのは…



じゅういさん。あかねちゃんといっしょだよ」


ドキッとした。胸の鼓動が早くなるのが分かった。何も返事ができないまま優太が続ける。

「じゅういさんになってたくさんのどうぶつたすけてあげるんだ。

ぼくたちのためにうまれて、そしてぼくたちのために、しんでいくどうぶつたちを、ぼくがあかねちゃんといっしょにたすけてあげるんだ」


 そんなことを考えているとは思っていなかったので驚いた。でもなんだ嬉しくて涙がでそうになった。


 試験まであと二日に控えた日の夕方、

「それでは私が先人をきって頑張らなくちゃね。必ず受かるからね」

「うん。あなねちゃんなら、へいきだよ」

「ありがと、私、がんばるから」

「うん」


 強く握り合った手は暖かく心はとても穏やかな気持ちになっていた。

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