第12話 『散歩』
『ワン・ラブ』 第12話 『散歩』
「ラン君、散歩いく?」
そう、散歩と言う単語のちゃんと理解していて、それを聞いた途端にはしゃぎ出し、クルクル足の回りを回って喜びを表現する。
玄関に降りると行儀良く座り、リードを付けてもらうのを待っている。
外に出ると颯爽と走り出す。
ちらちらと私の表情を確認しながら歩く姿はなんとも愛らしい。二人で色々、探検した。
雨上がりに水溜まりに入って遊んでお母さんに怒られたこともあった。
大きな野良猫にいたずらして追いかけられこともあったかな。
綺麗なお姉さんを見つけるとすぐに近づいて抱っこをせがむ。
やっぱり男の子だね。そんな日々が楽しくて仕方がなかった。
試験勉強をしながら何となく思い出に浸っていると
『トントン』
「は~い。どうぞ」
『カチャッ』
「ただいま、あかねちゃん?おべんきょうしてる?」
「うん。でももうそろそろ休憩しようかなって思ってたところだよ」
「そっかぁ、じゃぁ、おでかけいきたいなぁ、あかねちゃんに、ぼくのともだちをしょうかいしたいんだ」
「へぇ~。仲良しのお友達がいるんだ?」
「うん、とってもなかよしさんなんだ」
「じゃぁ、久しぶりに散歩へ出かけますかぁ?」
「わーい。いこういこう!!」
「準備して早速行きましょう」
「おべんきょうもうだいじょうぶなの?」
「平気平気。じゃぁ、ちゃんと上着きて行こうね。寒いから」
「は~い。したでまってるね。はやくきてね」
階段を降りると台所で夕食の準備している理央に、
「気分転換に優君と散歩に出かけるよ。」
と告げる
「うん。お願いね。今晩はクリームシチュウだからあまり遅くならないでね」
「うん、大丈夫。じゃ、行ってきます」
『ママ~いってきま~す』
遠くの方で優太が叫ぶ。さてはもう玄関でそわそわしながら待ってるな。
『気を付けて行ってきなさいよ』
と理央もすこし大きな声でいった。
『は~い』
案の定、ちゃんと自分で靴を履き替えて、玄関のドアノブに手をかけてピョンピョンしながら待っていた。
ドアを開けると飛び出ようとするが、しっかりと優太の手を握っていたために暴走を阻止できた。
君の行動ははお見通しなんだよとばかりに振り向いた優太に笑いかける。
「ほら、慌てない、慌てない。まだ時間あるからゆっくりいこうね」
「は~い」
ちょっと残念そうな顔をする。
「ねぇ?どっちに行く?」
「うんとねぇ。えきまえにいく。えきまえのおはなさんに、いきたいな」
「それじゃ、出発~ 気を付けて行きましょう」
青空広がる冬の午後日差しは暖かい。
二人は昔と同じようにのんびりと歩く。
駅前に差し掛かると焦茶色の建物が目に入ってくる。三角屋根でログハウスを模した外観の花屋。可動式オーニングの上部に取り付けられた大きな看板には、『Tiral*Garden』(ティラル・ガーデン)と書かれている。
店の軒先には小さな台の上には真っ白というか銀色がかった、猫が日向ぼっこしながら昼寝をしている。
優太はしゃがみこみ優しく猫を撫でる。
「マシェ、こんにちは、あそびにきたよ。きょうはあかねちゃんもいっしょだよ」
猫はぬ~っと頭をあげて
「にゃ~っ」と一声
「あかねちゃんこっち」てを引かれ店内に
「こんにちは~ あそびにきたよ~」
『いらっしゃいませ~』
奥のほうから女性の声がする。
よく手入れされた綺麗な花や観葉植物がならぶ店内を
眺めているとさきほどの声の主が現れる。
「いらっしゃい、優君。あら、今日はお母さんと一緒じゃないの?」
「きょうはあかねちゃんといっしょだよ」
「あらあら、あなたが茜さん。いつも優君からお話お聞きしていますよ。だから今日はいつも一緒のうさちゃんは来ていないのね」
「もうそのことはないしょなのに~」
「あら、ごめんなさいね。シー」と人差し指を口にあてて内緒の合図をする。
「私はここの店主で遠野翠と申します。のんびりお店やってるから、お待たせしたらごめんなさいね」
ふと足元に気配を感じて振り向くと先程の猫があくびをしながら、
「にゃ~」
とまた一声。
「彼女はマシェ私の親友よ。いつも店の見回りをしてくれるの」
翠さんは、とても綺麗で背が高く、何よりもとても綺麗な声をいている。話をしているだけでリラックスできると言うのは、まさにこういう人のことを言うのだろう。
店の雰囲気と花の良い香り、そして彼女の声にが相まって、なんだかとても心地いい。なにかに包まれるような優しい気持ちになってくる。
「優君はここに来るとあなたの話ばかりしてたのよ」
「えっ?どんなことですか?」
「いろいろなことよ。あなたと優君のいままでのこと…みんな」
?この人はなんのこと言っているだろう
優太と私のこと?それとも蘭丸と私のこと?
訳がわからなくってきた…。
頭の中はは混乱しているのに体には力が入らない。
ぼ~っとする感覚のなかで
誰かの手が優しく私の手を引く。
その手の感触はつめたいがとても心地良い。
導かれるまま歩き今度は体を支えられてなにかに座らせれる
ガーデンチェアか何かだろうか…
フカっとした感触と同時にどうやら眠りに落ちてしまったようだ。
記憶が途切れる……




