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第10話 『笛ふきのエポ』

ワン・ラブ 第10話 『笛ふきのエポ』 


『トントン』


「おねえちゃん?じゅんびできたぁ?」

「うん。今行く」

「じゃ、さきいってるね」

「は~い」

『ト、トトン』優太が階段を降りる。

自分も少し遅れて書斎を出る。

居間に入ると優太はソファに座って絵本を開きニコニコとしている。

優太のとなり座ると『フンフン』と首をふって立ち上がり

下のラグの横になってラグを『ぽんぽん』とした。

促されて優太の隣にうつ伏せになる。

「じゃぁ。始めからでいい?」

「うん。ありがと」


『笛ふきのエポ』


『いつからいついたかわかりませんが


湖のほとりにはのいっぴきの


カワウソがすんでいます


いつも顔をちょこんを水面に出して


首をいっぱいにのばしてこちらを見ているの


でもとってもはずかしがり屋で


だれかがそばにくると


すぐに水のなかにかくれてちゃう


ほらね。またかくれちゃった 』


 始めのページにはまんまるとした目のカワウソの可愛い絵描いてあり

 隣のページには湖の畔に銀色の猫の足と湖面の水しぶきが書かれていた。

 優太のほうをちらりと見やると目は輝いてすでに物語の世界に入りこんでいるようだった。


『カワウソの名前は『エポ』たて笛がじょうずな男の子


え?何で私が彼の名前を知っているかって?


それはね…


彼には心をゆるす人がひとりだけいるの。


こちらを見つめているのは彼女を待っているから


とてもきれいな声で歌う私の親友『ティラル』


ティラルが歌う時、彼はじまんのたて笛で素敵なメロディを奏でるの。


だけど目覚めの歌は森のみんなと一緒


いっしょにいられるのは彼女が水浴びするときだけ


いちずなカワウソ『エポ』の叶わぬ恋の物語』


ページをめくると今度は水辺でたて笛を吹くエポ

隣のページには真っ白な服を着て、両手を広げて歌う女性の後ろ姿が書かれていた。


 内容はエポやティラルに他に語り役の銀猫や他の動物たちが出てくる。とても楽しめる物語だった。


「おもしろかったでしょ?」

「うん。とっても可愛くてでもちょっぴりせつなくなっちゃった」

「でもボク、このおはなしだ~いすき」

「エポが健気で愛らしいね」

「エポってボクみたいだね」

 何も言わず優太のさらさらした髪の毛を撫でてあげる。

すると優太がこちらに向き直り抱きついてきて、聞こえるか聞こえない位の本当に小さな声で

「ずっとこうしていららればいいのに…」と言ったように聞こえた。

「え?今なんていったの?」

と聞き返したが、

『ぶんぶん』

 と首を振ってでもとても悲しそうな顔で

「なんでもない…」

 もちろん気になったが優太の顔を見るとどうしてもそれ以上聞くことができなかった。

 優太はもう一度何かを振り払うかのように『ぶんぶん』と首を振り、

「さぁそろそろパパかえってくるからおむかえしなくちゃ」

 と言って立ち上がり、

「あかねちゃん、きょうはいっしょにおふろはいろうね」

と言ったときには、いつもの優太の笑顔に戻っていた。

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