10-2 結婚できない男
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今回の相手はディーンで活動している商人の三女で、姉二人もとっくに嫁いで安泰ということで面倒を起こす可能性は低い。立場と呼べるほどのものはないし、高貴な生まれでもないから何かにつけて不満を示すようなこともないだろう。
向こうの世話人から得られた情報によれば家政にもしっかり携わっていたというし、簡単な計算程度なら父の仕事も手伝っていたというからその辺のバランス感覚さえ期待できる。これは特筆できるポイントだ。
「いやあ、よかったですよこんなに晴れて。まあ少し暑いので、お話はあちらの木陰にあるテーブルでいたしましょう」
先方の世話人と共に、二人を案内する。
セーラム首都で新設された客人用宿舎の近くに少数客向けの食事処があって、天気も良いのでそこの庭をお借りしている。先方の設定した場所に出向くことも多々あるが、こちらに招く時は定番の店だ。
今のところ、二人の間に会話はほとんどない。
一応自己紹介は済ませているが、まだ軽く挨拶しただけだ。問題はこれから。
向かい合って座らせ、俺達も同席する。
「では改めまして、まずはこちらから……」
緊張でカチコチになっているサカキさんの脇腹を、肘で小突く。
いい加減慣れて欲しいが、上がり症の気持ちはよくわかるので強く言えない。
「あっはっはい。サカキ・ユキヒラと申します。日本という国から参りました。その……オーリンにある登録所から召喚されて……。今は軍の部隊で戦闘任務に就いております。二年ほど」
互いの身の上に関しては会う前から情報を交換しているので頭に入っているはずだが、確認の意味でもここは欠かせない。大抵は必要もないのだが、紹介する側とされる側での口裏合わせが失敗していて妙な食い違いを見せられる、というケースに何度か出くわしている。面倒な事態を避けるためにも丁寧さは心がけた方がいい。
「ではこちらも……」
向こうの世話人は四十歳くらいのふくよかなおばさん。親戚である。
「はい。キリガミ屋のカーヤと申します。皇国の都から参りました。家は着物を主に商っております。本日はよろしくお願いいたします」
なるほど、プロフィールの通り良さげな物を纏っている。近くで見れば素人目にも布の高級さが伝わってくるようではないか。場に相応しく、艶やかながら慎ましさも残す、薄桃の染めが麗しげに映える。
「いやはや、それにしても雅なお召し物ですねえ。驚きました」
「ありがとうございます」
「そう思うでしょうサカキさんも、ねえ?」
「ええ、おきれいです……とても」
雰囲気は素朴な感じだが器量よし。小顔、小柄、若々しくもある。
それでいて出るトコはバッチリの盛り上がり――。
くりくりした瞳とふっくらした唇も、強く男を引き寄せるだろう。
「これほどの物、布を揃えるだけでも大変なことだとお見受けしますが、流石ですな」
「いえ、そんな。ご贔屓にしてくださる皆様のおかげでございます」
ハキハキと喋った姿はまだあどけなさが残るものの、しっかりしていそうに思わせる何かが潜んでいた。当然、こちらには緊張の色は見られない。かといって堂々としているわけでもない。いい意味で控えめな感じがする。こういう人はどこも放っておかないと思うが、一番に放っておかなかったのが我々ということでご足労いただいている。
極秘裏に行った身辺調査の結果も良好。男の影は見当たらない。
失礼な言い方をすれば正統派の優良物件だ。久々に。少し羨ましいくらい。
トータルで見て非常に好印象!
「こちらもねえ、失礼ですけど、異界から来た方なんて本当かしらってねえ、もしかしたら見た目も全然違ってやだ大丈夫かしらって、もう心配でしたけれど、いざ会ってみればこんなに逞しい風貌で安心いたしましたわ!」
よしよし、おばさんもこちらを褒めようとしてくれている。協調路線だ。
こうした席を設けるからにはそりゃあ基本はそうだが、時たま、余計な思惑が絡んだ末にスムーズな進行が望めないこともある。単純に、現場に来てみたら向こうがこちらを気に入らなかったということもある、常に好感触とは限らない。そこは運による。
「それも軍人さんだなんてねえ、このご時世に何と立派なことじゃありませんか。おまけに魔法家ですって!」
「ええ、サカキさんは非常に頼りになる方で、彼のおかげで打開できた戦況は数え切れませんよ。現在我々が快進撃を続けているのも、元はと言えばサカキさんがオーリンで奮戦してくれたからこそ! あの時の活躍は……あ、いや失礼いたしました。いきなりこの話を続けるのはあまりよくありませんね」
「――あのう、それなんですけれど」
「はい?」
「わたし、今回のお話をいただいた時から、ずっと気になっていたことがあるんです」
この段階でカーヤ嬢から話を振ってくるとは思っていなかったので、俺は少し身構えた。おばさんも同様だったようで、窘めるかどうか迷っている。
「気になっていた――というより、心配と言ってもいいものです」
「心配……一体何でしょう?」
「ごめんなさい。ほんとはこんな勝手、してはいけないのでしょうけど」
「いえいえそんな。それは是非、お話を進める前に解消したいですね。どうぞ遠慮なさらずに、お聞かせください」
彼女はおばさんとアイコンタクトを取り、おばさんは仕方ないといった様子で頷いた。
「その、やはり、戦いをお仕事になされていると、危ないこともたくさんなさるのですよね?」
「そうですね、それは……避けられないことです」
「怪我や病にかかることは受け入れられると思います。ヒューマンがヒューマンのために戦っているのですから、それは勲章です。もし兵隊さんが夫になるなら、わたしはそれを誇らしく感じます。でも……もしこの先、わたしが家庭に入って、送り出した殿方が戦地から帰って来なかった時のことを考えると、どうしても……不安が募るのです」
「ふーむ」
彼女の心配は当然である。結婚して即未亡人ではたまらない。
実家が裕福なら路頭に迷うことはないだろうが、ダメージが大きいのは変わらない。
――それに、これまでにも同様の話をされたことはあった。
「確かに、殉職の可能性は常にあります。激しい戦である以上、いつどこで命を落とすかということは誰にも、はっきりとはわかりません。ただ、このサカキさんに関して言えば、生き残る力に定評があります。何といっても、敵を殺すのではなく味方を守るのが仕事ですからね! 防御的な任務を任されることが多いので比較的安全なんですよ」
「そうなんですか……?」
「ええ。何よりもまず第一に、敵の攻撃から身を守る! それがサカキさんの魔法なんです。その安全さが勝利を生むのです。彼が倒れるような作戦は立てられないんです。そんな恐ろしいことできません。大事に働いてもらわなければ。――そういうわけで、よほどのことがない限りは、彼は生きて帰ってきますよ。慰めになるかどうかわかりませんが……」
「そう、ですか――」
カーヤ嬢の顔がぱあっと明るくなる。
俺も嘘をつくのが上手くなったもんだ。
サカキさんは現在隣界隊の中で最も酷使されている人物の一人だ。
死地に送っても生還する。こんな有難いことがあるか?
それはそれとして、この娘、いきなり重要な所を突いてきたな。しかしこれは裏を返せば、きちんと結婚後の生活も視野に入れているということではないか! 儀式としての結婚までで考えが止まらないのは、優れた家族の条件だ。期待できる。
ここは早々に立ち去るとするか――。
「それじゃあ、お悩みも解決したところで、後はお若い二人に任せるとしましょうか……私達はしばらく席を外しますので、何かあったら呼んでください」
この台詞も、もう何度言っただろうか。
屋内の控え室に引っ込んだ。
先方の世話人と、用意されていた焼き菓子に手をつけながら話す。
「――この縁談、まとまりませんな」
「……やはりそう思われます?」
「おや、同じ考えでしたか」
「まあ……」
今ではサカキ・ユキヒラも隣界隊の中では古株の方となっており、生き残ってきた時間分の報酬も手にしているため、いわゆる経済的なハードルと言えるものは高い水準でクリアしている。話がまとまればすぐにでも新居を構えることができるだろうし、家を空けがちでも妻子が暮らしに苦労することはないだろう。
部屋にある小窓から、外の様子を窺う。
話はそれなりに弾んでいるようだ。カーヤ嬢がサカキさんから語りを引き出し、聞きに徹していれば問題は起こらないだろう。異界人となれば好奇心を刺激されるものだし、彼の場合は武勇伝にも事欠かない。見た目もいいからとっつきやすい。笑顔をつくるだけで人を幸せにできる。話を続けるだけならいくらでも可能なはずだ。
「これまで何度、あのような良い雰囲気を見たことか……特に今回は互いに第一印象も好ましかったようですし、あの様子ならまた二回くらい顔を合わせるかもしれません」
「そこまでわかっていらっしゃるのに、どうして」
「同じような光景を五回は見ているからでしょうね」
「あら……」
全てのケースに立ち会ったわけではないが、俺が着き添うパターンは多かった。
別に繋がりさえあれば誰が付いてやってもいいだろと思うが、直接約束を交わしたのが俺であるのと、事実上の上役であるからという理由が縛りのようになっていて、あとは他にやりたがる人も多くないので、どうしてもお鉢が回ってくる。
おかげで道化服もいつもよりは落ち着いた柄だ。おどけることもない。
「これが破談になれば、次は五十二回目となります」
「それは、また――不思議ですわねえ、さすがにそこまで難ありの方とは思えませんけれど」
「まったくその通り、不思議です。どうしてこんなことになってしまったのか……」
彼を召喚してからというもの、隙あらば見合いをセッティングしてきたというのに、サカキ・ユキヒラは、これだけは最低の結果を叩き出し続けていた。
確かに初期の頃は、俺達の見つけてきた縁談は必ずしも良いものばかりではなかった。姫様のコネをフル活用して、貴族の娘をあちこちから引っ張ってきたものだ。
しかしそういう手合いは、(もちろん例外もいたが)顔はよくても気位ばかり高くて、結局は婚姻というものに前向きではない感じが、紹介する側としても扱いづらい。適切なマッチングではなかったのだ。客人という立場が特殊すぎるせいもあるが、親に言われて従っているだけの娘も多く、悪い意味で焦りもなければ危機感もない。家事だのなんだのは彼の稼ぎなら余裕で人を雇えるので実は結構どうでもいいが、根っこのところで家庭の成立に乗り気でないなら、まとまるものもまとまらないのだった。
彼女達のような立場では、当然見合い話はたくさん持ち込まれる。機会にさえ恵まれているのだ。駄目ならすぐ次がある、いっそここは通過点にすぎない、そういう態度だ。それが却って、縁談の価値を下げている――そんな印象を受けた。
それから俺達は目線を下げるようになって、ネームバリューより相性を念頭に置いた組み合わせを心がけた。階層主義をまるっと肯定するようで不愉快だったが、元いた世界で平民なら、この世界でも平民と一緒になった方が現実的に思われた。
未だ、彼のお嫁さんは現れない。
希望の見える話は格段に増加した。だが、いつも最後には何故か、流れる。それもやんわりと、なかったことになるのだ。どちらからともなく――。
「むしろ、よく勘付きましたなあ」
「カーヤさんの姉上二人も、わたくしが送り出したようなものですから」
「ははあ、すると……」
「ええ、遠縁だろうと一族の者はまず頼りに参りますわ。それに限らずとも、紹介さえあればどなたからのお話でもなるべくお引き受けしていますの。下世話な話、少し儲かりますのよ」
経験に基づいた感覚だったか。
「わたくしも、他人の縁ばかり見ていて、なんとなくわかるようになってしまったんですの。いくら表面上の印象が良くっても、底に流れている本当の脈は、また別だと」
「どうやら、そういうことらしいんですよね」
深いため息をつく。
その後、予想した通り二回のデートを経て、無事、破談した。
それを知らされたあくる日、俺は自分の執務室にサカキ・ユキヒラを呼びつけた。
「失礼します……」
「はいどうぞ。座って待っててください。今これだけ書いちゃいますんで」
目を通し終わった巻物に署名する。
結論から言うと、オーリンの召喚装置はプチ産業革命と言えるほどの衝撃であった。
あの戦い以降、ヒューマン同盟は蛮族領との結束を強め、召喚装置を完全に手中に収めた。安全の確保された環境下でレギウスが研究を進めると、すぐに、装置が想像以上のスペックを持つことがわかった。その機能を扱える者も増え、本格的に魔力が供給されるようになると、一日に複数回の召喚が実現するようになった。確立された安定稼働体制により、ヒューマン陣営は比喩ではなく魔法使いを量産することが可能となったのだ! まさに夢の装置であった。魔力を注ぎ込めば注ぎ込むだけ、リターンがある。連日連夜、魔法の才能を持った人間が迷い込んでくる。これは誰にでも、馬鹿にでもわかるアドバンテージだった。
ついにヒューマン同盟全体が躍起になってこの活動を支援し始めた。そして、この召喚事業にはそれを受け入れるだけの貪欲な需要があった。爆発的に膨張し、俺と姫様の仕事はそのコントロールへと移っていった。それは正確ではないかもしれない――だがとにかく、破裂しないようにするのが方針で、俺達はそれに取り組んだ。オーリンの村は召喚都市となり、この世界に来たばかりの客人を一時的にプールして、職業を斡旋する窓口となった。セーラムの都にも客人用の宿舎――いや、客人街が形成され、アデナ学校は新築の校舎を得て名実共に復活を果たした。
俺達は増やした。何もかもを増やした。ヒューマン同盟が出せる生産力の限界まで、いや、それを越えようという勢いで増やした。それで問題はなかった。何故なら、客人の持つ魔法が、自分達の消費を補って余りあるほどの効率を社会に提供したからだ。山野を切り拓き、家畜を繁栄させ、水を沁み込ませた。作物の取れ高は記録を大幅に更新し、来年の見込みもさらに上がっている。圧倒的な利益を手に、受け入れなければ不幸というほどの活躍を見せた。
もちろん組織も増えた。彼らの一部は学術グループを形成し、また別の一部は隣界隊に入った。戦士はいくらいてもよかったが、そうした少数の流入でも十分に一部隊としての体裁が整うようになった。大隊規模、明確な階級さえ設定されない、恐るべき愚連隊である。
――脱線した。
そういう流れの中、俺の仕事のやり方も変わってきた。
この世界に慣れてきた、いわゆる先任の客人と呼ばれるような古株の人々が代わりに動いてくれるようになり、そこの負担が減った。すると、(運搬魔法家の激増で行き来が楽になったとはいえ)人に会いに行くことよりも、人に来てもらうことの方が増えた。これが問題で、寝起きしている使用人宿舎の一室に招くのは不便だし無理があるので、あそこで全てをこなすということが困難になってしまったのだ。完全に仕事用の空間を別に用意する必要が出てきた。
俺は特に現場まで出かける必要のない日は、キップを駆って客人街にある事務棟まで出勤するようになった。そういうわけで、ここは応接間でもある。
「お待たせしました」
「はい……」
「あれ? 何か今日元気無いです?」
「あ、いや……その……。……すいません……」
「困ったなあ。一体どうしたっていうんです」
「ええ……? いや、だって、また駄目だったじゃないですか……」
「ああ、そのことですか。いやまあそのことで呼んだんですけどね」
「や、やっぱり! もう、だって、あんないい話フイにしちゃって……」
あれもまた貴重なチャンスだった、ということは理解してくれているか。
「駄目だったものはしょうがないです。これは取り返しつくだけいいですよ。切り替えて行きましょう、次に。次にね……」
「――よかったー……もういい加減、付き合ってくれなくなるかと……」
「やりますとも、約束ですから。この件はサカキさんの働きに対する正当な報酬です。支払わないということはありえません。むしろそれが遅れに遅れて申し訳ないくらいです。――しかし、ここまで相性の良い方が見つからないとなると、また探す範囲を広げなければなりません」
「そうですね……」
「その範囲の話です」
「はい」
「……聞いてました? 範囲の話です」
「え? は、はい」
「――これまで見ていて気付いたことがあるんだけど、」
口調を変えると、一気に彼の緊張が高まったのがわかった。
「まあね、結局は感覚の話なんで、個人差出てくることを前提とした上での話にどうしてもなっちゃうからアレだけどね……ただ、うーん、いわゆる普通の感覚ってやつに当て嵌めちゃうとさあ、これまで来た話のどこかで、決まってないとおかしいと思うんですよ。お互いに、この話いいなー、逃したらもうこれ以上いいのはないかもなー、っていうのが、絶対ありましたよね? でも、何故か実らない。どこかで退いてしまう」
今一歩踏み切れない。最後の部分で、何かが邪魔をする。
「私はそれが――あなたの好みに起因しているのではないかと疑っています。この際だからはっきり言わせてもらいますけど、選り好みしてますよね?」
黙って聞いていた彼が、ここで顔を上げた。
「いや、そんなことは……紹介していただいた方はみんなきれいな人ばかりで……」
「スタイルもよかったですよね?」
「そ、う、ですね」
「サカキさん、あんた若い娘が好きだろ」
彼は、お前狼男だな、と言い当てられた時のような顔をした。
「別に責めてるんじゃあない……ただ恋して付き合うのとはワケが違うんだ、これから夫婦になろうってんなら、そりゃあ男も女も若い方がいいでしょう。綺麗事言っても始まらない。ただね、俺が言いたいのはそういうのとはちょっと違って……そうだなあ、何て言ったらいいか……」
俺はもう一度言った。
「なあ、サカキさん、かなり若い娘が好きだろう」
――流石に、彼も誤魔化せないと悟ったようだった。
「意味、わかりますね?」
あんたがセックスできない理由わかったぜ――と吐き捨てないだけ有情だと思っていただこう。
「やっぱりか――」
「……すいません……」
「いや、いいんですけどね……」
改めて思い返してみると、俺達の選び方は優等生過ぎたかもしれない。
例外なく、適齢期だったような……。
「皆さん美人だっていうのはわかるんです。その感覚はあります。でも本気で考えた時に……、……勃たなくって……」
こういうとこ赤裸々に打ち明けてくれるからまだいいけど、
「うーん」
しかしそれほどか……顔はいいのに不憫な――。
「実際どのくらいならいけるんです? 指折って数えますから、ストップって言ってください」
「…………――――…………――――…………――ストップ」
「いや、厳しいよ」
いくらこの世界でも、二桁前後じゃ無謀だ。生まれる前から決まっていたような縁談なら早めに組み終えることもあろうが、婚活めいた相手探しでは、誰も乗ってくるわけがない。危険人物のレッテルを貼られる可能性すらある。
「……ずいまぜぇえん……」
「泣くなー」
それからひとしきり、慰めるハメになった。
「……えーとこっちでも何か対策考えますんで、とりあえずは、次の作戦までに頭すっきりさせといてください。いいですか? 例によってあなたにかかってるんですから」
「はい……それじゃあ、失礼します……」
「引き摺ったら駄目ですよほんと、今日早めに寝て下さいね」
ばたん。
椅子に戻って、深く沈み込む。
「……どうしろってんだ」




