起点
------カランッと缶がぶつかる音がする。こんな“外”で不用意に動く人間は自殺志願者かズブの素人、そして【感染者】だけだ。
隠れているのにも関わらず全身が強ばる。見つかれば即餌食だろう。今は大した武装もしていない。尤も武装したところで今の状況を乗り越えることは出来ないだろうが...
ため息を吐き、俺は今まで人生を振り返っていた。
〔10年前〕
『我々の目的はこの醜い生態系を打ちきり、元の美しい弱肉強食の時代の再興である!今の地球は数の多い弱者が!数少ない強者を喰らい!自分たちにとって住み良い環境を創っている!!こんな世の中は間違っている!腐っている!!穢れている!!!我々はなんとしても自然を取り戻してみせ---』
ブツンッと父がテレビの電源を落とす。
「朝から訳の分からん演説を流しやがって...革命軍だかなんだか知らんがいい加減にしてほしいものだな。」
「まあまあ、革命軍のお陰で軍が強化されて、就職難が解消されたこともあるし、悪い事ばかりじゃありませんよ?」と母が父を諭す。
「しかし革命軍のせいで私の仕事が増える...」
父がブツブツ文句を言っている。父の職業が警官だ。
街中で演説し始める革命軍をしょっぴいたりする事が多いらしい。まあ、なんとなく想像できるね。
「銀、お前は革命軍なんかに入るなよ?」
「うん。僕お父さんと同じ警察官になる!」
そうだ、幼かった俺(当時8歳)の夢は父と同じ警察官になることだった。
悪者をやっつける仕事に俺は尊敬(そのときはこんな言葉は勿論知らなかった)していた。
俺はヒーローになりたかったのかも知れない。いや、十中八九そうだろう。俺はヒーローになりたかった。
皆を守れる、そんな俺が街を守る警察官に憧れたのも自然だろう。
結果だけ言うと叶わなかったのだが...
「そうか、銀は父さんと一緒がいいのか!警官は厳しいぞ?」
「それでも、お父さんと一緒がいいの。」
「そうか。嬉しいなぁ。でも早く寝ないと父さんのように大きくなれないぞ?」
「それはこまる!お休みなさい。」
いうやいなや俺は自室に駆けていった。
「あの子が警官になるまで辞めれないわね?」
「ははっ、そうだな。もう10年ちょっと頑張らないとな。」
「頑張ってね。街のヒーローさん。」
------ピリリリリ、と携帯が鳴る。
「俺のか。」
そう言うと携帯を開き、ドアを開け出ていった。
「少し問題が起きてな...一人でも人がいるんじゃよ。休みの日にわるいが署まできてくれ。」
そう言うと電話の主、仕事の上司は切ってしまった。それだけ急ぎだったのだろう。
妙な胸騒ぎを覚え、署に向かった。




