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そのルーツは『夜中にやっても怒られないオンラインゲーム』だ、という者がいる。
文字通り『身体的負荷がかからない時間外労働』だという者もいる。
『夢というものに執着した科学の結晶』とさえ言われている。
宣伝を一切行わずに売り出された"それ"は、ほとんど興味本位で買った者の口コミだけで広まった。
口コミから…ネットの投稿から…深夜番組から…ニュースから……。
時がたつにつれて知れ渡った"それ"は、メディアに公開された情報のもとに、爆発的に売れ、ついには社会現象と化した。
日本における普及率が80%超となった今も、誰がどのように作っているのか等、その手の情報は一切明らかになっていない。
店の電化製品コーナーの片隅に居座る、単価二万円ほどの真っ白な箱、その中に眠る携帯音楽プレイヤーのような電子機器――外観からは普遍的に見えるそれこそが、空想的な非現実を内包する"それ"の正体。
以上が『精神を理想的な夢の世界へと誘う』機械――"Day Dream Novels"通称DDNの、不明瞭なる生い立ちと現状である。