少年の声
「青合勇気です!出身は北中で、バスケしてましたー。高校では合コン!とかやりまくろっかなーとか考えてます!」
一人目の生徒が自己紹介をする。すかさずこの自己紹介に
「なんだよそれー」
「無理無理ー、まそんときは俺もよろしくー!」
などレスポンスがされる。みんな始まってみると案外楽しんでいる。
俺はそんなことどうでもいいから盛り上げるなよなどと空気が読めない感想を抱いている。
俺の順番は六人目。それまでにどこかで盛り下がってくれないだろうか。こんなテンションのままだと俺は確実に目立つ。しかし、そんな俺の思いとは反対にみなさんノリが良いことで。
誰一人笑いをとれなかった奴がいない。このクラスはそういう人間が集まっているんだろうか。それなら自分はきっとミスだ。
「じゃあ、次は井上君」
そんなことを考えていたら自分の番だ。
ほら、みんながこちらを見ている。
「井上遥です。西中出身です。趣味は読書です」
しーん、この言葉がぴったりだ。
「では、自己紹介が終わったところで明日からの予定ですが……」
自分の番が過ぎるとあっという間に時間は過ぎていった。俺は先生の話を耳で聞きながらも視線は窓の外だ。これ以上自分がこの教室にいることを実感したくなかった。
視線を上げればそこには青い空が広がっていて、雲が一つもない。
『―――見つけた』
突然、声が聞こえた。
聞こえたというより、頭に直接響いた感じだった。
俺は慌てて隣を見る。しかし、そこには先生の話を熱心に聞きながらメモを取る女子生徒がいただけだ。その人が俺に話しかけたわけではなかった。
『見つけたよ。---の者』
また聞こえた。さっきと同じ声だ。
小さい男の子の声。そう、小学生ぐらいの。まだ声変りのしていない少し高めの少年の声だ。
なんだんだ。俺はゆっくり目立たないように教室を見まわす。しかし、そんな声の主はいるわけがなかった。その代わり斜め前のほうで楽しそうにひそひそ話をする啓太が見えた。まあ、どうでもいい。
そして、声は聞こえなくなった。