入学式
教室に入ると既に半分以上の生徒がいた。
みな、同じ中学出身の友達とかたまって話しているのだろう。
俺と啓太と同じ中学の人間は二十人はいると聞いていたがこのクラスには今のところいない。
「お!北中の奴らじゃん、試合で一緒になったんだよねー」
と言って啓太はある軍団に駆け寄っていく。すぐに啓太はその軍団にまみれ、久しぶりーなどと盛り上がっている。啓太はサッカー部で、小さい体格ながらもスピードを活かしたエースストライカーだった。他中の人間も知っている人は多いのだろう。
俺は静かに黒板に書かれた座席番号を確認する。番号と名字が書かれていたので自分の席が窓側の一番後ろだということがすぐにわかった。
席に座り窓の外を見る。向こう側の校舎は文系の校舎だ。そんなに近くないので廊下を歩いている人が男か女かわかるぐらいだった。
しばらくして女の先生が教室に入ってくる。まだ若く、ぱっと見て二十代後半だ。
「では、みなさん今から入学式なので体育館に移動してもらいます。廊下に並んでくださいね」
生徒はみな、静かに廊下に出て出席番号順に並ぶ。その際、出席番号の前の人によろしくと声をかけられたのでそれに返した。
体育館は俺たちの校舎から渡り廊下で繋がっており、そこで他の校舎とも合流する形になっていた。
体育館の前にくると、他のクラスも既にそこで並んでおり、一組から順番に入場していくらしかった。中にはもう父兄や在校生はおり、後は俺たちだけってわけだ。
「新入生の入場です」
そう中からアナウンスが入り、俺たちは歩き出した。
とうとう俺は高校生になる。
入学式はあっという間に終わった。校長の話はとても長くて、俺の隣の奴は寝ていた。というか、結構の人間が寝ていたと思う。俺も何度か睡魔に襲われその度に太ももをつねった。
「はーるか!!」
教室に帰る途中、啓太が隣に駆け寄ってきた。
「校長の話、超長かったな」
「お前寝ただろ」
そう言うと啓太はウインクしながらもちろん!と元気よく答えてくれた。
「この後何するんだろうなー」
「委員会とか決めるんじゃないのか、後は明日からの授業の説明」
啓太はその答えにあまり興味を示さず、ふーんと返し腕を頭の上で組んだ。
教室に帰ると既に担任-さっきの女の先生-が既に教壇の前に立っていた。
名前は確か、伊藤若菜先生。先ほどの入学式のときに名前を呼ばれて、勢いよく立ちすぎたのかパイプ椅子を倒した。
「はーい、みなさん座ってね。そして今から自己紹介しましょう!!」
教室のいたるところから「えー」という声があがる。そんな中で浮かれている人間が一人、啓太だった。
俺はもちろんブーイング側だ。やらないけど。
自分に注目される瞬間が俺は本当に嫌いなのだ。