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工藤を数分みつめた後、僕は教科書を開いて勉強を始めた。数学がいまいちわからないな、とワークを閉じた。けれど分かるところあるかも、ともう一度開く。開けたり閉めたり、だ。

「せわしないね」気づけば工藤がこちらを睨んでいた。相変わらず手は動いたままだ。

「僕はせわしなくない」僕は声をあげる。「もっとせわしない奴ならいるだろ、うちのクラスに」

「九条君?」工藤がげんなりとする。「たしかに、あの人はせわしない。多分、うちの学年で一番せわしない」

そこまでかよ、と苦笑する。「そういえば、今日は図書室いないな」僕は図書室を見回して、九条がいないことを確認する。「というか、九条君じゃなくて、人がいないね」と、工藤も見回す。

図書室には僕達以外に人がいなかった。皆どこへ行ったのだろう。

時計を見て、五時半を指しているのを見てびっくりする。「もうこんな時間か」

「あのさぁ」工藤が呆れる。「君が来たの遅かったじゃん」

「そんなに遅かったか、僕は」

「うん。五時十五分くらいでしょ? 授業終わってすぐに来たわけじゃない」

「そうか」どうしてこんなに遅い時間になったのだろう、と記憶を巡らした。何をしたっけ。

「君の事だから、委員長の仕事でも手伝ってたんじゃないの」と、言う。

「かもしれないな」と、笑う。「僕は困っている人がいたら、なんとかしてやりたくなる」

「確かにね」工藤が歯を見せて笑う。「君のそういうとこ、好きだけどね」

そうか、と僕も笑った。「僕も好きだぜ、工藤のこと」




そろそろ行こうか、と工藤が勉強を止めたころには六時前だった。鍵を閉めて図書室を出ようとしたところ、いいタイミングで九条が入ってきたので鍵当番を押し付け、図書室を出た。

僕も工藤も電車通学なので、駅まで歩いていく。そこまで距離もない。歩いて十分ほどだ。駅から学校へ向かってはゆるい上り坂になっている。僕は陸上部なのでそうでもないが、美術部でゆるゆるしている工藤には朝の登校はなかなか厳しいものらしい。

工藤の希望で本屋に寄ることになった。駅前の大きな本屋へと足を運ぶ。

僕は横を歩く工藤に尋ねた。「何の本買うんだ?」

「んー」工藤は髪を触り、「美術の資料用にね」と、答える。

「美術の資料」僕は鸚鵡返しに言う。「画集、とかか」

「画集」工藤は鸚鵡返しに言った。「いや、小説を買うつもりだよ」世界観を拝借したいんだ、と付け加える。

なるほど、と僕は適当に相槌を打った。残念ながら僕は工藤の絵を見たことがなかったので、その小説からどんな世界観が拝借され、どんな作品になるのかはわからなかった。

工藤は別行動でいい、と言ったが、僕は財布の中身がワンコイン(穴あいてるやつ)しかなかったので勝手に工藤に着いて行った。



工藤が一直線に新書コーナーに向かっていくのを視界の隅に捉えながら、僕は携帯を確認した。

「メールが一件、不在着信が一件」

まずメールを確認した。どうせ迷惑メールだろう、とメールを開く。九条からだった。図書委員で、冊子を作るらしく、お勧めの小説を教えてほしい、という旨だった。自分の他に、宮野さんと一井、桐谷さんにも送っていたので、問題ないだろう、と無視した。

「不在着信は」と相手を確認する。ひ、と声が出た。城野姫子という知り合いだ。嫌な汗が垂れるのが分かった。

今前の回を序章を書いたことにすこし後悔

第一話?になるんでしょうか

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