彼と彼女の語り合い
夕方の教室。二人の会話。
今日も二人はおしゃべりをする。
「ねえ、彼」
「何?彼女」
彼女の質問。
「学校ってどう思う?」
「随分と大きい題材だね」
「でも暇を潰すには、ちょうど良い題材だと思うの」
「確かにそうかもしれないね」
「で、どう思う?」
少し悩む彼。そして答え。
「うーん、通過点……かな」
「通過点?」
彼の答えに、首を傾げる彼女。
「そう、通過点。必ず皆が入ってきて、必ず皆が出ていく場所。だから通過点」
「なるほどねー。でも外国だと学校に行かない……行けない子もいっぱいいるよね?」
「そうだね」
彼女の反論に彼が頷く。
「じゃあさっきの答えと矛盾してないかな?」
「矛盾しちゃってるね」
「認めちゃったよ」
「間違って無いからね」
「じゃあ私の勝ちだね」
腕を上げ彼女が勝利宣言。
「勝負だったの?」
「生きることは、戦うってことだよ?」
「なら僕は、今死んじゃったのかな?」
彼の問いに彼女が答える。
「生きてるよ」
「勝負に負けたのに?」
答えに首を傾げる彼。
「うん、負けたけどちゃんと生きてるよ」
「それは矛盾してないかな?」
「矛盾してないよ?」
「どうして?」
「勝負することが生きてるってことであって、勝ち負けは関係無いからね。負けたって良いんだよ。生きていればリベンジの機会はたくさんあるんだから。その時に勝てば良いんだよ。
戦うのを辞めたら、その機会は永遠に訪れない。
……それが死ぬってこと」
「また負けちゃったみたいだね」
「やった。私の二連勝だ」
勝者彼女。
「次はいつ勝負できるかな?」
「生きていれば、いつでもね」
「なら明日なんてどうかな?」
「随分と急なのね。修業しないの?」
「負けっぱなしは、悔しいからね」
「勝ち逃げは気持ち良いのよ?」
「そうなのかい?」
彼が問う
「ええ。まるで水中に漂っているみたいにね」
机の上に、彼女が寝そべる。
「それは羨ましいね。でも勝ち続けるのは、大変じゃない?」
「大変じゃないわ。逃げればいいもの」
起き上がり、にこやかに笑う。
「戦わないのかい?」
「ええ、戦わないの」
「それは死んだことにならないかい?」
「なるわね」
驚く彼女。
「でも今君は勝ち逃げしてるんだよね?」
「そうね」
「なら彼女は死んでいるのかな?」
「死んでいないわ」
「それは勝ち逃げと、矛盾していないかい?」
「しているわね」
「認めちゃったね」
「間違って無いもの」
「僕の勝ちだね」
「私の負けね」
悔しげな彼女、誇る彼。
「二勝一敗だね」
「私の総合優勝ね」
「そんなルールもあったの?」
「私がルールだもの」
驚く彼、誇る彼女。
「勝ち目が無いね」
「私がルールだもの」
「では優勝者に豪華景品の贈呈です」
「あら、うれしいわ」
微笑む彼女。
「景品の宿題プリントです」
「前言撤回。うれしくないわ」
落ち込む彼女。
「学校サボるからだよ」
「学校なんて過程よ」
黒板に大きく書き込む。
「それが君の答え?」
「そう。模範解答」
「答えまでに、随分と遠回りしたね」
「暇は潰せたでしょ?」
「確かに潰せたね」
「私の勝ちね」
「また負けた」
笑う彼女、笑う彼。
「それじゃあ帰りましょ?」
「帰りましょうか」
夕日に伸びる二人の影。
眠れないから、思うままに指を動かしてたら、変なのができちゃいました。