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K雨 5

 ああ、私あほだ。……あほって言葉、嫌いなのになあ。


 なんていうか馬鹿は、一般でいう頭悪い子ってイメージだけど、あほは、”人間的”に頭が悪い印象を受ける。だから、あほって言葉は嫌いだし、そう言われるとショック。


 そんなことが頭をめぐる中でも、私の体を突き通していく、針のように鋭い視線たちの威力は弱まらない。むしろ、鋭さを増す一方。


 額と前髪の生え際に、冷や汗が滲んできたのが分かる。いや、もしかしたら、脂汗なのかもしれない。そして、実際に経験したことはないけれど、金縛りにあったみたいに体が動かせなくなった。人の話を聞いているときは楽しそうに聞こえた金縛りも、自身が体験すると、不安、不安で息をするにも精一杯。


 影響、受けすぎだな、私。その場から離れることを躊躇していた汗が、何かの拍子に次々と流れていく。すると、突然視界が真っ白になった。急に白くなるもんだから、目がギンギンする。



「何突っ立ってんの」



 隣に立っていたはずの山吹君は、いつの間にか私の目の前で立っていて、私の顔を覗き込んだ。


 血の気がしていなくて、生きているように感じなかった山吹君。その彼にも、今では青味が消え、活気に満ちたものになっている。



「佐藤?!」



 もう、限界だ。まだ続きそうな視線に絶えられる自信がない。


 耳の向こうで、山吹君の声が聞こえる。なんだ、雨の中で元カノの名前を口にした時のボリュームは、最大でも、叫んでもいなかったんだ。


 彼の肌で、一度は白くなったはずの視界。刹那、光が少しずつ、消えていった。

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