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K雨 4

「つーか、さ」



 濡れたタオルを肩にまわしたK、じゃなくて……山吹君が喋る。山吹君のバックには、雨の日ならでわの分厚い雲が宙を浮かんでいる。


 その雲が白いようで黒くて、灰色じゃないけど青黒い……私の知っている日本語では、これくらいしか言いようの無い色。それらが誰かの悲しみを物語っているように思った。



「佐藤って、案外喋るんだね」



 廊下を歩いている途中、会話が一段落し、二人だけで黙り込んだ後。静かに息を吸い込んだ山吹君は、思い出したようにそう言う。


 グラウンド側を歩く彼の顔に水が付き、汗が流れるようにして雨粒が頬を伝う。……(いな)、汗よか、目元にたまる滴のほうがいいか。汗水たらす姿より、無表情で涙を流しているほうが、山吹君には似合いそうだもんね。



「よく言われる。山吹君も、意外と喋るね」


「そう? 俺はよく言われない。逆に、もっと喋れよって言われるかな」


「友達に?」


「うん。自分のことを、ね」



 秘密主義者なんだ、と思ったとおりに告げると、彼は声にならない笑の顔で笑った。


 山吹君の笑った顔が、昔のKと被って、彼とは正反対に気分が曇る。さっき、自分の目で映した空みたいだ、私の心。何故こんな気分になったのか判るほど、頭は冴えてないけれど、申し訳ないような気持ちでいっぱいになっていることくらい、気づくことが出来る。


 喋るうちに教室の前へついて、山吹君の右腕が教室の扉をスライドさせた。


 友達に挨拶をしようとしたけれど、思わず言葉を飲み込んだ。たくさんの視線が刃のごとく私を襲ったから。なんてったって、男女の高校生二人が、並んで入れるほど大きい扉。その向こうで待ち構えていたのはクラスメイトの冷たい視線。主に、女子の。

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