K雨 2
長い間会わなければ、Kへの恋愛感情が次第に弱まるものだと思っていた。でも、どうやら違った。私の中でKは、今でも好きな人らしい。過去系じゃない。今も好き、きっとそう。
これが、Kとのよりを戻すラストチャンス。そう思えた。
何だかんだいって、Kは必要以上にモテはやされていたから、いつ新しい女の子がKの隣に並んでいても、おかしくないことを私は知っていたから。
誰にでも見せる可愛らしい笑顔が大好き。小麦色の肌も、それに負けじと黒い髪も、ほんの少し高い目の位置も、何もかも、好きだ。
そんな考えと一緒に、無我夢中でベンチへ翔けた。途中で傘を離したり、靴下がぬれて、ローファーの中まで濡れてしまうことなんて、気にせずに走り、Kの前で止まった。
そして叫んだ。K、と。
彼も叫んだ。私が叫んだのと、ほぼ同時に。
「…………ニ、カ……?」
それが、私の名前ではないことくらい、すぐにわかった。だけど、今はそんなことを気にする余裕なんて、ない。
一番に目がいったのは、肌。付き合っていた当時とは違い、白く染まっている。今までは夏が終われば、人一倍黒くなるKの肌が、小麦色さえしていない。でもそんなこと、Kと会えた喜びによって消えていった。
KはKで、ベンチから腰をあげた。私より背の高かったはずのKと、同じ目線で見つめあっている。私、また身長伸びたのかな。
「ニカっ……」
お互いに酸性雨をずいぶんと吸収した制服で、どちらともなく抱きしめた。目の前にあるのは、雨に打たれ続けたのか、青白くなったKの顔。
その間、ずっと抱きしめている相手の名前を呼び続けた。