第十三章-未知との遭遇そして強制送還-
主人公亜里珠視点の章です。
あたしは、アルローディア家を去った。
一人キョドってたあたしを拾ってくれて、一緒に暮らそうとか、学校に通わせればいい!とか言ってくれて本当に感謝の気持ちでいっぱいだけど、
だからこそ迷惑はかけたくないし…ね。
「う〜…出たはいいけどもあたしは何処へ向かえばいいのかしら…あの家のまわりに村とかないわけ?」
そんな独り言。
「村が見つかったら、働く場所を探そう。あ…でもこれじゃあ…」
あたしは既に少し汚れてきた自分のパジャマを見る。
これじゃ、雇ってもらおうにも雇ってもらえないだろう。
そんな事を考えながら歩いていた。
――――?!?!
何アレ?!?!ι
「ぁぅ…ι」
やだやだ‥!近づいてくるし!!!
あたしの目の前には、完全に瞳孔が開ききった、ゾンビの様な物体。
敢えて《様な》って付けたのは、ソレが原型をとどめてないから。
この世界の事は何も知らないあたしだけど、取り敢えずコレだけは解る。
《危ない》。
これは…
まずい。
まずい事態。
キモチワルイ
コワイ
タ ス ケ テ
悲鳴をあげようにも口から声が出てこない。
誰か!!!
…誰か?
誰かって誰?
この世界にあたしを助けてくれる人なんているの‥?
“ズリ…ズリ…”
「ゥ…ァ゛‥ェ゛ゥ…」
「ゃっ…」
気持ち悪い《ソレ》はとても声とは思えない様な音を出しながら躊躇せず近寄ってくる。
嫌悪しか出来なかったあたしに浮かんだ一つの案。
「逃げる!!!」
そう叫ぶとあたしは身を翻し走る
…が、
「Σはぶっ!」
慌てもつれた自分の足にひっかかり、あえなく転倒。
自分の不幸さに嫌気がさすわ。
…とかなんとか考えてるうちに気持ち悪いものはもうあたしのすぐ傍に。
何が悲しくてこんな普通の道らしき場所でゾンビもどきと遭遇し襲われなきゃいけないのよι?!?!
………………振り向くな。
そう意識した所でニンゲンは振り向いてしまう生物で。
あたしは振り向いてしまった。
「ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛い゛!!!!」
「きゃぁぁぁああッ!!!!」
“ボッ!”
「ひっ!?」
……ッ炎?ι
振り返ったあたしの目の前には何故か火だるまが。
「きゃぁあ!?」
気持ち悪いのが火だるまになったのは良いがこのままだとあたしまでトバッチリを喰う。
…そう考えあとずさろうとした瞬間
「馬鹿かお前は!!!」
何処かで聞いた覚えがあるキレ気味な声があたしをさらった。
中宮 亜里珠、ぴっかぴかの高校二年生。
この歳になり初めて男の人に抱きかかえてもらってます。てへ☆
Σ…って!そうじゃなくて!!!
「セルリック!!!?」
そう、あたしを抱きかかえているのは、わざわざ迷惑をかけまいと出てきた一家の次男坊、セルリック・アルローディア。
「お・ま・え・は・馬・鹿・だ!!!」
シドイ…(涙
もはや疑問形でもなくなってる‥。
「ぁぅ…馬鹿じゃないもん…。」
「何で一人で勝手に出ていった!!!」
いや…出ていくのに何故君の承諾が必要か…ι?
「だって…あたしのせいでもめてたし、これ以上迷惑かけちゃいけないと…Σって!」
もう助けてもらってる時点で迷惑かけてる…ι!!!
「…だからって…危なすぎる…ι」
セルは何やらブツブツ言っている。
「あ、いたいたぁ。」
「アリス!セルリック!」
瓜二つの声が道?らしき場所の真横にある林の中から聞こえた。
「あ!リ‥
「リスト!ローディア!こんのド阿呆モンスターに襲われてやがった!」
あたしが口を開く前にセルが先に叫んだ。
「アリス?!大丈夫か?!」
「あ…うん‥」
セルの言葉を聞いて彼の双子の兄が駆け寄ってきた。
「じゃ、帰ろうか。」
ローディアが言った。
「‥へ…?」
あたしは素っ頓狂な声を発してしまった。
「もちろん帰るよね?」
気持ち悪い位の…いや、実際二人とも男前だからすごく素敵なんだけど…
有無を言わさない程の圧力が込められた笑みを浮かべてリストが言った。
ぅぅ…ι
この二人…何が何でも連れて帰る気ね…
“ガシッ!”
“ガシッ!”
「ぇ…?」
「はぁ‥。」
ちなみに、双子に両脇を捕まれてどうにもできないまま連行されるあたしの疑問符と、その光景をため息つきながら見て呆れてる、セルリック。
結局連れて帰られるあたし。
…ってかさ、あたしもしかして出てって気持ち悪いのに襲われかけて怖い思いしただけ…?
あれ…?出てった意味、あった…?(涙笑)