第4話
俺は今、大陸内陸部にある連合軍管理下の「第14流通市場」にいた。
屋上でパンを齧っていた時、足元から突き上げるような振動が起きた。市場のあちこちで仕掛けられていたのだろう爆弾が起爆したのだ。
守備兵たちの対応は早かった。
「犯人は客の中にいる。全員屋上の中央に集めろ」
守備兵は銃口で客を追い立て、広場の中央に固めた。
「嫌な予感がする…」
俺はその流れを無視して、資材置き場のコンテナの影に潜り込んだ。
――その直後。
密集した客たちの間で、数人の喉が同時に裂け、血が噴き出した。
「犯人だ。標的を確認――」
「東京の残党か。構うな、まとめて撃て」
一斉射撃。無抵抗の客たちが次々と倒れていく。屋上は銃声と、立ち込める白く厚い噴煙に包まれた。
「……あいつら、マジかよ」
煙の向こうで、男が呆れたような声を漏らした。奇襲した側ですら、連合軍の非情な即応には引き気味だった。
煙の中から、断続的に重い足音が響く。
視界を奪われた守備兵たちは、姿の見えない何かに薙ぎ払われるように倒れていった。男は軍が自ら作り出した煙を隠れ蓑にして、包囲網を内側から崩していた。
数分後。
銃声が止み、煙が薄れた後の屋上には、動く守備兵の姿はなかった。
死体の山の中に、汚れと錆にまみれたナイフを持つ男が一人だけ立っていた。
「全滅か。連合軍も形無しだな。それにしても、あの状況で引き金引くかよ笑えねぇ―」
男は肩で息をしていた。脚は過負荷で変色し、酷く熱を持っている。
「……さて。戦果としては十分だ。このまま消えるのが正解だけど」
男の独り言が聞こえる。増援が来るまで、もう時間がない。ここで深追いせず逃げるのがプロだろう。
だが、男の視線が、俺の潜んでいるコンテナに向けられた。
「でもなぁ。1匹だけ取り逃がすと、気になって夜も眠れねぇよ」
男の中で、効率と、完璧主義な殺意が混ざり合っている。
俺はコンテナの影で、銃を握り直した。




