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04-08.デートの心得




「これなんてどうかな♪」


「なんでもいい。響の好きなものなら」


「スク水着せっぞ♪」


「いいよ」


「よくないの! はいこれ! 試着して!」


「うん」


 まったくもう。どうして折角のデートなのにローテンションモードなんだか。ぷんすか。



「あ♪ 響ちゃん♪ 偶然だね♪」


 出たな奏。別に偶然でもないでしょうに。近場で水着売ってるところなんて限られてるし。四人でプール行こうねって約束したし。買いに来るタイミングだって当然限られる。



「最近調子はどう? 琴音とは上手くいってる?」


「ふふん♪」


「その様子なら今日はデートに誘えたんだね」


「ダメだよ♪ 響ちゃん♪ デートって言うと琴音ちゃん怒るんだから♪」


 嬉しそう。



「琴音は? 試着中?」


「うん♪ そろそろ開けてくれると思うよ♪」


 丁度そのタイミングで琴音と詩葉が同時に顔を出した。



「「……」」


 二人は揃って私たち、隣の試着室の順で視線を送り、ピシャリとカーテンを閉めてしまった。



「二人ともなに照れてるの?」


「「……」」


 カーテンの向こうから返事が来ない。



「「開けるよ?」」


「「ダメ」」


 しゃあない。覗き込んじゃろ。



「あ! ダメだよ響ちゃん!」


 くっ! HA☆NA☆SE!



「いいの! 恋人なんだから! 奏たちとは違うの!」


「あ~!? それ言う!? 響ちゃんがそれ言うのぉ!?」


「お客様! 店内ではお静かに!」


「響ちゃんこそ! 覗きなんてしたら捕まっちゃうよ!」


「だから私は良いんだってば! 詩葉の恋人なんだから!」


 ちくしょう! この馬鹿力め!



「バカ」


「あ、詩葉。観念して……あれ? 試着はどうしたの?」


「サイズは問題ない。これ買ってくる」


「いや見せてよ。買う前に」


「やだ。もう帰る」


「私のは?」


「これ」


「いつの間に選んだのさ。待ってて。試着してくるから」


「必要ない。響のサイズは間違えない」


「だからって。あ、ちょっと」


 詩葉は気にもとめずにレジに向かってしまった。



「え? なに今のやり取り。普通に怖いんだけど」


 盗撮盗聴が十八番のストーカー相手に何を今更。



「それよりいい加減離してよ。いつまで私と腕組んでるつもりなの? 琴音に言いつけちゃうよ?」


「なっ!? ズルいよ! 響ちゃん!」


「必要ないよ。見てたもん」


 ジト目だ。琴音がめっちゃジト目だ。



「琴音ちゃん!? 違うの! これは!」


「私をデートに誘っておいて響ちゃんとイチャつくんだね。奏ちゃんは」


「違っ! 違うの! 琴音ちゃん! 響ちゃんからもなんとか、って!? あれぇ!? いない!? いつの間に!?」


「じゃあ私は帰るね。用事は済んだし。バイトもあるし」


「琴音ちゃん!? 待って待って! 私の選び終わってないよ!?」


「響ちゃんに選んでもらえば?」


「琴音ちゃぁん!?」




----------------------




「それで泣きついてきたと」


「ひっぐ……ぐすっ……」


 ガチ泣きやん。カフェじゃなくて家に連れ込むべきだったかしら。流石に遠いか。



「なんで私まで」


 冷たい。ローテンション詩葉はいつにも増して冷たい。なんだホワイトモカのシロップマシマシって。そんな糖分の塊摂取しておいてどうして心が熱くならないんだい?



「響ちゃんのせいだよぉ……。だから詩葉ちゃんも責任取ってぇ……」


 案外大丈夫そう。



「あれはどう考えても奏の自爆でしょ。私のことなんか放っておいて琴音だけを見ているべきだったんだよ」


「うぐっ……」


 よしよし。理解出来たようだね。



「普通さ。デートっていうのは相手のことだけ考えて過ごす時間だと思うんだ。どんな理由があるにせよ、そもそもデートですらなかったにせよ、最低限のルールすら破ってしまったのだから奏が悪いよね」


「うぐぅ……」


「何よ。偉そうに講釈垂れて」


 詩葉さん?



「なんでそれがわかってて恋が理解出来ないのよ」


 あかん。何故かキレだした。ローテンションモードだからって油断してた。



「だいたいあなた今は私とデート中よね? なによ。奏が泣きついてきたからって。自分で言ってるルールが守れていないじゃない」


「ごめんなさい」


 自分だって生返事ばかりで禄に集中してなかったくせに。そう言いたいけれど、ここはぐっと飲み込もう。反論しても良い事なんて何も無いし。



「適当に謝れば済むと思ってるの?」


 かっちーん。


 ……落ち着け。素数を数えて落ち着くんだ。どっかの神父さんもそう言ってたぁじゃぁないか。



「詩葉」


「触らないで」


「そんなこと言わないで。大好きだよ。詩葉」


「やめてよ。こんなところで。奏だって見てるのに」


「詩葉。お願い詩葉。怒らないで。もう喧嘩なんてやだよ。本当に辛いんだよ。詩葉とお話出来なくなるの」


「……ごめんなさい」


「ごめんね詩葉。不安にさせてばかりだよね。私が詩葉の期待に応えられないから」


「違う! 違うわ! そんなこと!」


「詩葉」


「そんなこと……」


「うん。ありがとう。詩葉」


「……ごめんなさい」


「ううん。こっちこそごめんね。詩葉」


「……うん」


 よしよし。落ち着いた。



「……私誤解してたかも」


「何が?」


 奏ちゃんの誤解とはなんぞや?



「響ちゃんの方が子供っぽいのかと思ってた」


「……ちょっと」


 もう。折角落ち着かせたのに。



「奏。もっとしっかり話し合ってみて。琴音も落ち着いて話せば聞いてくれる子だよ。約束だってしてくれたでしょ? 夏休み中は考えてくれるって。向き合ってくれるって言ったんでしょ? ならきっと大丈夫だよ。琴音は約束を破ったりしないよ。あの子はそういう子だよ。奏なら私に言われるまでもなく知っているよね。だからあの子を好きになったんだもんね。応援してるよ。奏。本当に困ったらまた何時でも言ってね。デート中じゃなければ相談に乗るからね♪」


「締めにかかってる?」


 バレたか。



「行くよ。響」


「うん。じゃあまたね。奏」


「ちょっと待ったぁ!!」


 お客様。店内ではお静かに。

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