04-02.喧嘩
『やぁ~っと来たね! オシロちゃん!! 配信二回目で重役出勤だなんていいご身分だね! プンプンだよ!』
「ごめんね♪ みんな~♪ ヒコマちゃんも~♪ 今日も少しだけお邪魔させてもらうね~♪」
『少しだけじゃないよ! ずっと居てくれなきゃ困るよ! 何で遠慮しちゃうの! もっと積極的になってよ!』
「それは! だいたいヒコマちゃんもヒコマちゃんだよ! 今から始めるだなんて急に言われても困るよ! スマホ見てない時だってあるんだから!」
『配信あるのは知ってたでしょ!?』
「ヒコマちゃんの配信がでしょ!」
『ヒコマとオシロの! 配信だよ!』
「そんなの皆に迷惑だよ! 皆ヒコマちゃんの配信を楽しみにしてるんだから!」
『なんでも手伝ってくれるって言ったのはオシロでしょ!』
「だからって!」
『ヒコマママ:\10,000:やめなさい!』
『オシロママ:\10,000:みっともない!』
ママズ!? 本物!? しかも高額!? 何やってん!?
『ママ? 本物か?』
『息ぴったり』
『タイミング良すぎ』
『同時だった』
『流石に複アカじゃね?』
『けどほら。二人も喧嘩やめちゃったよ』
『自作自演?』
『喧嘩芸?』
『ひっ! オシロ!! まさか言ったのぉ!?』
「え? あ、うん。ごめん。マズかった?」
『あなたねぇっ!?』
『ヒコマママ:\10,000:こら! 喧嘩しない!』
『オシロママ:\10,000:こら! 喧嘩しない!』
「『一々投げないで!! そんな高額!!』」
『www』
『これマジ?』
『親バレww』
『オシロんひでぇww』
ごめんてば。
「悪気は無かったんだってばぁ。どうせならママたちに見てもらおうと思って。ほんとごめん。けどこれ以上は後で話そうよ。今この場で続ける事じゃないでしょ」
『そうだね!! その通りだよ!!!』
ごめんて。
『それじゃあ一曲いってみよ~♪』
急に振ってきた!? これ私が歌う流れだよね!?
「今日は雑談配信でしょ!?」
『問答無用!』
おーぼーだー!
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「響!!!」
配信が終わって暫くすると、詩葉が荒々しい足音と共に私の部屋に乗り込んできた。
「ここで話すの?」
ママたちは一緒じゃなくていいの?
「正座!!」
あかん。完全にブチギレモードだ。
「はい」
今は大人しく従おう。
「まさか奏たちにまで言ってないでしょうね!?」
「え? ヒコマちゃんの件はバレてるよ? 知ってるでしょ?」
この部屋には監視カメラがあったんだし。なんなら今もあるけど。流石にリビングのは撤去したみたいだね。
「そっちじゃないわ!」
「オシロちゃんの件も速攻バレてたよ?」
「なんでよ!?」
なんでって言われても……。
「琴音はともかく奏は誤魔化せないよ」
なんかやたら察しがいいし。
「っ! 他の人には絶対に言っちゃだめよ!!」
わかってるってば。流石の私もそこまで愚かじゃないよ。
「ごめんなさい。もう二度と口にしません」
そしてここで抗うのも愚かな選択だ。だから殊勝な態度で詩葉のお叱りを受け止めよう。
「約束よ!」
「はい。誓います」
「そう!」
「ならいいわ!」とは言ってくれないらしい。
「本当にごめんね、詩葉。私は詩葉の邪魔がしたいわけじゃないんだよ」
「……わかってる」
少し落ち着いてきた。
「オシロちゃんの件も本気で続けるんだね?」
「うん」
「わかった。なら付き合うよ。詩葉がそう決めたならいくらでも」
「……ありがとう」
「できれば詩葉からもう少しハッキリ言ってほしかったな。ヒコマちゃんからじゃなくて」
「……ごめん」
「ううん。いいよ。詩葉が全部話してくれるの待ってる」
「……うん」
「下行こっか。ママたち待ってるかもだし」
「ううん。お母さんたちは向こうで寝るって」
「え? じゃあこの家には私と詩葉だけ?」
「うん。響をよろしくって」
「よろしくされちゃうの?」
「……何もしない」
「一々睨まないでよ。別にからかったわけじゃないよ」
「……」
「信じてくれないの?」
「……うん」
「ひどい……」
「響のせい。私だっていっぱい我慢してきた」
「私もだよ」
「私の方がもっと」
「そんな筈ないよ」
「響のバカ。分からず屋」
「分かるわけ無いじゃん。何も言ってくれないんだから」
「そういう問題じゃない。いい加減気付いてよ」
「何がさ。私は本気だよ? 本気で詩葉と一緒に生きるつもりだよ? 私の人生は全部詩葉にあげるよ? これでもまだ何かが足りないの?」
「全然足りてない。響の全部なんてとっくに私のもの。今更改めて貰うものじゃない」
「なら好きに命じたらいいじゃん」
「私は響に気付いてほしいの」
「恋してほしいの?」
「うん。そうだよ。そう言ってるんだよ。ようやく少しだけわかってくれたのね」
「無理だよ。今更」
「……それでも」
「私は恋なんかよりずっと深く詩葉を愛してるんだから」
「そういう事を軽々しく言うのがわかってない証拠なの!」
「軽いつもりはないんだけど」
「響は恋を舐めてるわ! 私がどんな想いでいるのか知ろうともしてないの!」
「だから無視したの?」
「だって……そうしないと……私は……」
「ごめんね、詩葉。我慢しなくていいからね」
「だから!!」
「ごめん」
「……バカ。分からず屋」
「ごめん。詩葉」




