03-09.ノリと勢い
「いってきます♪」
「いってらっしゃ~い♪」
ママに見送られて家を出る。詩葉は先に行ってしまった。恋人を置いて行くなんて。なんて薄情者なんだ。ぷんぷん♪
「おはよう♪ 響ちゃん♪」
あら? 奏?
「おはよう、奏。どうしたの?」
こんな朝早くに詩葉に用事? 教室まで待てなかったの?
「響ちゃんを迎えに来たの♪ 詩葉ちゃんに頼まれて♪」
あらま。過保護な恋人様だこって。けどわざわざ奏に頼んだってことは用事でもあったのかしら? またちづ姉と悪巧みかな?
「ありがとう♪ 奏♪」
「うん♪」
詩葉に言われたからって何もバカ正直にこんなところまで来なくてもとは思うけど。まあ口にはすまい。どうせ今日限りだ。明日から夏休みだし。夏休み明けには忘れているだろうさ。今日のところはありがたく受け取りましょう♪
「奏っていつから詩葉の友達だったの?」
「今年からだよ♪」
あらま。意外と付き合い浅いのね。
「安心して♪ 私たちは普通のお友達だからね♪」
「え? うん。取られるだなんて思ってないよ」
「それはそれで悔しいよ!」
「ふふ♪ 頑張ってね♪」
詩葉が私以外に恋することはないけどね♪
「もう♪ そんな幸せそうな顔しちゃって♪」
「いいでしょ~♪」
「そうだね。羨ましい。正直」
「奏も彼女つくったら?」
可愛い顔してるんだし。
「なんで彼女なの!?」
「なら彼氏?」
「え~」
どういうこっちゃ。
「琴音に告ってみたら?」
「雑!?」
「応援してあげるね♪」
「勝手に話進めないで!?」
「あ♪ もしもし♪ 琴音♪」
「ちょっ!? 響ちゃん!?」
「うんおはよ~♪ あ♪ そこにいるんだ♪ ちょっと待ってて♪ 私たちもすぐ追いつくから♪ ううん♪ 詩葉じゃなくて♪ うん♪ そうそう♪ 奏がね♪ 琴音に伝えたいことがあるって言うからさ♪ 期待してていいよ♪ じゃあまた後でね~♪」
「響ちゃぁん!?」
「バッチリ♪」
「なにがぁ!?」
「頑張れ♪ お膳立てしておいたぜ♪」
「違うからぁ! 私と琴音ちゃんはそういう関係じゃないからぁ!!」
「でもほら。私と詩葉と遊ぶ時にさ。何かと気を遣うじゃんさ。だからほら。二人も付き合えば気楽かなって」
「何がほらなのさ!? 全部響ちゃんの都合じゃん!?」
「なんなら代わりに伝えてあげようか?」
「ストップストップ! 一回止まって! 正気に戻って!」
「響ちゃ~ん! 奏ちゃ~ん!」
「あ! 琴音! 奏がね~!」
「響ちゃぁ~ん!!!」
----------------------
「もう! 本当にビックリしたよ!」
琴音は席に着いても興奮冷めやらぬ様子だ。
「いや。驚いたのは私の方なんだけど」
冗談のつもりだったのに。何故か本当に二人も付きあうことになってしまったのだ。
「私はちょっと仕返ししておこうかなって思っただけなんだよ」
以前、奏が私と詩葉を無理やり引き合わせようとしたあれだ。
「まだ根に持ってたの!?」
「ううん。そんなことないんだけどさ」
だから冗談ってわけでして。それをネタにからかおうとしただけというかさ。
「いやぁ~♪ ほんと驚いたな~♪ パニクった琴音が校門前で公開告白したことも♪ 勢いに押されて琴音が受け入れたことも♪ 朝から良いものが観れたよ♪ うんうん♪」
「違うの! あれは勢いで"はい"って言っちゃっただけ! 驚いただけなの! そのまま奏ちゃんが走って行っちゃったから訂正出来なかったのぉ!」
「けどほら。あの奏の様子を見てみてよ♪」
教室の最前列の席の席で耳まで真っ赤にして突っ伏している。たまにパタパタと足を動かして身悶えている。どう見ても満更でもなさそうだ。
「あんなに喜んでるのに勘違いでしたって言うの?」
「全部響ちゃんのせいでしょぉ!?」
ごめんて♪
「わかったよ。じゃあ私から言っておくね」
「それは!」
「嫌なの? やっぱり琴音も興味ある? 満更でもない?」
「もう! とにかくこれ以上余計な事しないで!」
「本当に大丈夫? なし崩しで付き合ったりしたら後で後悔しない?」
「響ちゃんのせいでしょぉ!!」
「ごめんて」
まあ、夏休み明けには流れてるでしょ。たぶん。




