03-08.ベタベタ甘々
「あらあら♪ 響ちゃんたらこんなに大きくなっても一人でお風呂に入れないのね♪」
「それが一年も放っておいた娘に対する物言いなの?」
「仕方ないわね♪ 今日だけよ♪」
まったくもう。素直じゃないんだから。
ママと二人で湯船に浸かるとすぐに抱きしめてきた。
「ベタベタしすぎ」
「やっぱり私のせいよね~」
「さっきの話?」
「ついつい可愛がってしまうの♪」
「可愛い娘なんだから仕方ないじゃん♪」
「ふふふ♪」
「詩葉は……私に抱きつかれるのが嫌なの?」
「だぁ~め。答え合わせは詩葉ちゃんとしなきゃ」
「……そっか」
「流石にヒントを与えすぎたわね」
「大丈夫だよ。私はもう知ってるんだもん。詩葉が私のこと好きだって。あ、そうだ。私たち恋人になったんだよ♪ ママも祝福してくれるよね♪」
「……本当に?」
「うん♪ 私から言ったの♪ 恋人になろうって♪」
「……う~ん」
なんで考え込むのさ。ママたちも応援してたんじゃなかったの?
「やっぱりちゃんと報告した方がよかった? 詩葉と二人でさ」
「そうね~。それもあるわね~」
他に何があるんだろう。
「もしかして信じてない?」
「詩葉ちゃんを信じているのよ♪」
どういうこっちゃ。
「手を出さないって約束してたの?」
「何度も言わせてはダメよ。そういうことは詩葉ちゃんから聞きなさい」
「詩葉全然話してくれないんだもん」
「ふふ♪ やっぱり詩葉ちゃんは良い子ね♪ それにとっても不器用だわ♪」
「詩葉は私のだよ。ママにだってあげないよ」
「取らないわよ♪ そんな勿体ないことする筈ないわ♪」
「カプ推しなの?」
「あらま♪ そういうのわかるようになったのね♪」
「やめて。聞きたくない」
「え~♪ なんでよ~♪ 娘と語らうのがママの夢だったのに~♪」
「難しい年頃なの。お酒飲めるようになるまで待ってて」
「ふふふ♪ 子供らしくない物言いね♪」
「日々成長してるんだよ」
「期待しているわ♪」
「今は足りてないの?」
「いくら成長しても嬉しいものよ♪」
「じゃあママとお風呂に入るのはこれが最後だね」
「いや~よ~! そんなこと言わないで~!」
グリグリ。バシャバシャ。
「あはは♪ くすぐったいよ♪」
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「は~。酷い目にあった」
「また入りましょうね♪」
「わかったってば」
「やっぱり連れて行っちゃおうかしら」
「海外に? けどもう一年もしない内に終わるんでしょ?」
「予定ではね」
伸びるのかしら? そんな気配を感じさせる口ぶりだ。
「ついて行っちゃったら留年しちゃうよ」
「向こうにも学校はあるわ」
「本気で言ってる?」
「冗談よ♪」
だよね。
「夏休み中は居てくれるの?」
「ううん。ごめんね、響」
あらま。
「一週間くらい?」
「もう少し居るわ♪」
ならよかった。
「ママのご飯も食べたいな♪」
「ま♪ この子ったら♪」
ウリウリ♪ グリグリ♪
「今日はママの部屋で寝ていい?」
「もちろ! ……いえ。ダメよ。響は詩葉ちゃんの恋人になったんでしょ」
「だから何さ。それがママと過ごす事にどう関係するのさ」
「マザコンはダメよ。いい加減ママ離れしなさい」
「そういうママこそ娘離れ出来るの?」
「……」
「ほら行こ♪」
「……今晩だけよ」
「はいはい♪」
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「ふふ♪ あったかい♪」
「ほ~ら。もう寝なさい」
「はぁ~い♪」
……。
…………。
………………。
「……ねえ、ママ」
「……な~に。響」
「……夏休みはどこか連れて行ってくれる?」
「……詩葉ちゃんと遊びなさいな」
「もちろん詩葉も一緒だよ。詩葉ママもね。四人で遊びに行こうよ♪ 私遊園地がいいな♪」
「わかった。約束するわ」
「やったぁ~♪」
「だからもう寝なさい」
「はぁ~い♪ ふふ♪ ママ大好き♪」
「もう。響はいつまで経っても甘えん坊なんだから」
「一年も放っておいてよく言えるよね」
「ごめんね、詩葉ちゃん」
「なんで詩葉なのさ」
「私のせいで響がこんな子に育っちゃって」
「ちょっと。酷い物言いだね」
「少し離れなさい。抱きついて寝るなんて赤ちゃんみたい」
「いいの。今日だけ赤ちゃんなの」
「詩葉ちゃんの気持ちも少しは考えなさい」
「お説教の方向性がなんか変だよ」
「恋人になったのなら気を遣うべきよ」
「ママに抱きつくのも禁止?」
「詩葉ちゃんにもよ。気軽に抱きついちゃダメなの」
「なんでさ」
「本当の恋ってそういうものなのよ。赤ちゃんな響にはわからないかもしれないけどね」
「……それが詩葉の悩み?」
「寝なさい」
「うん。おやすみなさい」




