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03-07.帰宅




「~♪」


「……」


 うふふ♪ 詩葉との下校も久しぶりだ♪



「……少し離れて」


 あらま。この子ったら。心にもないことを。



「ね~♪ 詩葉~♪ 寄り道してこ~よ~♪」


「無理。忙しい」


「は~い♪」


 しゃあない♪ 大人しく帰りましょう♪ 今日の所はね♪



「詩葉~♪」


「……」


「呼んでみただけ~♪」


「……」


「ちょっと♪ 何か言ってよ♪」


「……離れて」


「またドキドキしてるの? 胸触って良い?」


「バカ」


「ふふふ~♪」



 詩葉をからかっているうちにあっという間に家についた。



「今日はダメ」


「え~! なんでよ~!」


 詩葉は自分の家に帰ると言い出した。



「忙しいの。準備があるから」


「なら一緒に居る! 後ろで見てる!」


「ダメ」


「なんでよ! 一緒に活動するんでしょ!?」


「……今度ね」


「ね~! お願い~! 一緒に居させてよぉ~!」


「……ダメ」


 詩葉は断固として認めてくれなかった。




----------------------




「シクシク……」


 一人だ……折角詩葉と仲直り出来たのに……。



「詩葉~観てる~?」


 結局そのままになっているであろう、監視カメラと盗聴器に向かって話しかけてみる。



「頑張ってね~♪ 早く終わらせて帰ってきてね~♪ 寝ないで待ってるからね~♪ ちゅっ♪」


 虚しい。けど楽しい。詩葉はどんな顔してるのかしら?


 あんまりお嫁さんを放っておいたらダメだよ? 今の私たちは新婚夫婦みたいなものだからね♪ そこんところちゃんと自覚を持ってもらわないと♪



「詩葉~♪ 会いたいな~♪」


 さあ♪ 今すぐ抱きしめに来るがいい♪



「詩葉大好き♪」


 聞こえているのだろう? 愛しの響ちゃんが待ってるぜ♪



「詩葉~……zzz」




----------------------




「ありゃ」


 また寝てたのね。私ったら。



 部屋には一人だ。詩葉はいない。まだやることがあるのかしら? というか今何時? え? 二十時? もうこんな時間? お腹空いてきたかも。詩葉はもう食べたのかな? まだ作業しているなら何か持っていってあげるべきかな? 冷凍庫に詩葉が作ってくれたお惣菜があるよね。あれを温めて持っていってみる? そもそも家に上げてくれるのかな? 


 いっそ何か作ってみる? 詩葉が思わず自分から飛び出してくるような立派なご馳走を作って待っていようか♪ こんな時間から始めることじゃない? ダメダメ♪ 明日やろうはバカ野郎だよ♪ 思い立ったらすぐに動かないとね♪



「~♪」


 一階は暗闇だった。やはり詩葉は来ていないようだ。バーチャルアイドルの活動で忙しいのだろう。今日は配信の予定も無いけれど、何も配信だけが活動の全てでもないのだし。


 それに勉強にだって時間を使っている筈だ。学年一位は伊達ではないのだ。ここ二日は私に拘束されて全然時間も取れていなかっただろうし尚更だ。


 邪魔しちゃったなぁ。遠野家の家事は滞り無く出来ているのかしら? 実は後回しになっていたりとかしないかしら?



 ガチャリ。ガチャン。


 え?



「ただいま~♪」


「ママ!?」


「あら響♪ 久しぶりね♪」


「ママぁ!!」


「あらあら♪ うふふ♪ 甘えん坊ね♪ ごめんね。寂しい思いをさせちゃって」


「もう! 帰って来るなら連絡入れてよ!」


「言ってあったじゃない」


「今日は何も言ってなかったじゃん!」


「伝えたわよ。詩葉ちゃんに」


「聞いてないよ!? というかなんで詩葉になのさ! そこは私に伝えるべきでしょ!?」


「あら? あなたたち仲直りしたんじゃなかったの?」


「したけども!」


「ふふ♪ 詩葉ちゃんはきっと驚かせたかったのね♪」


「そんなんばっかりだよ!」


「あらあら♪」




----------------------




「詩葉ママは?」


「隣に帰ったわよ」


 そりゃそうか。



「締め出されてなくて安心したよ」


「ふふ♪ そんなわけないじゃない♪」


 まあそうね。全員グルだったわけだし。



「それで? 結局私に内緒で何をしたかったの?」


「あら。いきなりその話なの?」


「言わないと晩御飯出さないよ」


「何よあなた。まだ食べてなかったの?」


「……ちっ」


「こら。舌打ちなんてしないの」


 仕方ない。自分の分だけ準備しよう。



「美味しそうね」


「もう食べてきたんでしょ」


「そんなこと言ってないじゃない」


「そういう口ぶりだった。これは私の。詩葉が作ってくれたんだから」


「少し分けて♪」


「少しだけね。はい、あ~ん」


「あ~ん♪ ……うん♪ 美味しい♪」


「それは何より」


「もう一口♪」


「ダメ。これ以上は秘密を明かさないと分けてあげない」


「もう♪ けちんぼね♪」


「話す気ないの?」


「他に話すこともあるじゃない。パパのことだって気になるでしょう?」


「それは後で聞かせてもらうね」


「もう少し気にかけてあげなさいな」


「全部ママたちが悪いんでしょ」


「そんな事はないわ♪」


「詩葉が悪いって言うの?」


「う~ん? どちらかと言うと響の方じゃないかしら?」


「なんで私が悪いなんて話になるのさ」


「詩葉ちゃんはいっぱい頑張っているからよ♪」


「それはわかるけど」


「いいえ。響は全然わかっていないわ」


「だから聞いてるんじゃん」


「どうせ響のことだから詩葉ちゃんのこと、いっぱい我慢させてるんでしょ」


「我慢してたのは私の方だよ」


「詩葉ちゃんだってそれは同じよ。けれど私がしてるのは今の話よ。先日までの話ではないわ」


「どういう意味さ」


「それは話せないわね」


「結局?」


「詩葉ちゃんが自分で明かすべきことだもの」


「ママたちは本気で私が悪いと思ってるの?」


「ええ。半分くらいは」


「残り半分は?」


「ママのせいよ」


「詩葉のせいではないの?」


「詩葉ちゃんは被害者よ。私達はそう考えて手を貸したの」


「被害者ぁ?」


「ヒントはここまでよ。後は自分で考えてみなさいな」


「私だって被害者なのに」


「だからヒントをあげたじゃない」


「少なすぎ。もっと優遇して」


「ダぁ~メ♪ 私は娘を甘やかさない方針なの♪」


「詩葉のことは甘やかすくせに」


「もう♪ いつまでいじけてるのよ♪ 折角ママが帰ってきたのよ♪ 他に話したいことがあるでしょ♪」


「食事中だよ。抱きつかないで」


「ふふふ♪ ごめんなさい♪」


 これ以上粘っても話す気は無さそうだ。しゃあない。一旦忘れよう。

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