03-06.寝不足
「もう! 本当にびっくりしたんだからね!」
「何度も聞いた」
「何度だって言うよ! 当然でしょ!」
「もう寝るよ」
「全然眠れそうにないよ!」
遅くなった夕食とお風呂を済ませてもまだ私の目は冴えていた。
「興奮しすぎ」
「詩葉のせいでしょ!」
「っ!?」
詩葉の上に覆いかぶさって抱きついた。
「……ダメ」
「ダメじゃない。罰だよ罰。今日はこのまま寝るもん」
「……」
「凄い心音」
「……聞かないで」
「ふふ♪ 詩葉ったら緊張してるの?」
「……バカ」
「いいんだよ♪ いつだってキスしても♪」
「……」
「なにせ私達は恋人なんだから♪」
「……」
あら? 目を瞑ってる? もしかして待ってる?
「ちゅっ♪」
「!?!?!!?!」
「あ! こら! 暴れないの!」
詩葉の腕を抑え込みながらキスを続ける。
「……!」
「ふふ♪」
詩葉はキツく目を瞑って身体を強張らせている。何かを必死に耐えているようだ。
「昔はよくしてたよね♪ ちゅっ♪」
「っ!」
「今更緊張するようなものでもないでしょうに♪ う~♪」
「!?」
「ふふ♪ 詩葉はやっぱり良い匂い♪ 同じボディーソープ使ってるのに♪ ふっしぎ♪」
「……」
「すんすん」
「……やめ、て」
「や~だよ♪」
ちゅっちゅ♪ スンスン♪ スリスリ♪
「……」
必死に我慢を続ける詩葉を虐めている内に段々眠気が湧いてきた。逆に詩葉は眠れないかもしれないね。ふふふ♪
「詩葉~♪ だぁ~いすき♪ ……zzz」
「……」
----------------------
「……はれ?」
背中痛い……。なんで私ったら床で寝ているの?
「……詩葉?」
あれ? まだ寝てるの?
詩葉はこっちに背中を向けて私のベッドを占拠している。
「……今何時?」
えっと……五時かぁ……。もっかい寝よ。
「……詩葉ぁ……入れてぇ」
ベッドに上がり、這うようにして詩葉の上を乗り越え、ベッドの空いたスペースに転がった。
「……うん? ……あれ?」
なんか……。
……zzz。
----------------------
「響! 起きて! 響!」
「……おはよ。詩葉」
「遅刻しちゃう! 起きて! 響!」
「……え?」
……あらま。
「着替えて! 早く!」
「……うん。詩葉も」
自分のことを。
「ちゃんと動いてね!」
……珍しい。詩葉が寝坊だなんて。
さて。急ごう。ちづ姉に叱られる。
----------------------
「ギリギリセーフ!」
「アウトだ。バカもん」
「あいたっ!?」
後頭部を叩かれた。
「朝会は終わっとるだろうが。何故セーフだと思った」
「ありゃ?」
「さっさと席に着け。授業を始めるぞ」
「あいあいさー!」
私を置いて先に走って行ってしまった詩葉は間に合ったようだ。しれっと席に着いている。
「(ニコッ♪)」
「おい鳴宮」
「さーせん!」
慌てて席に着くとすぐに授業が始まった。
----------------------
一限目後の休み時間。
「おはよう、響ちゃん。残念だったね。明日で一学期は最後だったのに」
「おはよう♪ 琴音♪ ね~♪ 無遅刻逃しちゃったよ♪」
「なんでそんなに嬉しそうなの? ……まさか遠野さんと」
「あれ? もしかして昨日の配信見てない?」
「配信? とお、ごほん。ヒコマちゃんの?」
「うん♪ 琴音は観てないんだね♪ その様子だと♪」
「響ちゃん!!」
奏が駆け寄ってきた。
「昨日の!」
「しぃー♪ ダメだよ♪ ここじゃあね♪」
「昼休み!」
「おっけい♪ それからおはよ、奏♪」
「おはよう♪ 響ちゃん♪」
----------------------
「やっぱり響ちゃんだったんだね!」
「ふふふ♪ 流石は奏だね♪ よくぞ見破ったと褒めてあげようじゃない♪」
「えぇ~!?」
「ほらこれ!」
『ご紹介に預かりましたオシロでぇ~す♪』
「うわ~」
うわ~ってなにさ。
「琴音はバイトだったの?」
「うん……」
何故だかショックを受けている様子だ。
「遠野さんは何がしたいのかな……」
そこは私も気になってる。未だに本当の目的とやらは見えてこないし。
「気を付けてね。響ちゃん」
「身バレしないように?」
「……うん。それも」
それも?
「まさか詩葉に気を付けろって言ってる?」
「……う~ん」
琴音にもよくわからないようだ。
「琴音ちゃんの勘はよく当たるよ♪ テストの問題以外♪」
「もう! 奏ちゃん!!」
「うわ~♪ ごめんなさ~い♪」
今日も仲良し♪




