03-03.取り戻した日常
「いってきます♪」
「……いってきます」
二人仲良く家を出る。昔はこれだってなんでもない日常だった。私は以前と同じように詩葉の手を握った。今度は断られなかった。いってきますのちゅーは断られた。残念♪
「ふふ♪ 皆驚くかな♪」
「……」
「だ~め♪」
詩葉が放しかけた手を握り直す。ついでに指まで絡めてみる。所謂恋人繋ぎってやつだね♪
「っ!?」
ふふ♪ 慌てとる♪ 慌てとる♪
「見せつけちゃおっか♪ 私たちは恋人なんだよって♪」
「!?!?!?!!?」
もしかして本気にしてなかった? 冗談だと思ってた? 言ったでしょ。私は付き合うって。詩葉が望むなら恋人でもなんでもなってあげるって。
進学するまでは付き合ってあげるよ。それから私は詩葉と離れるの。少しだけ距離を置いてまた考える。詩葉が心から反省したらその時は許してあげる。
その為にもめいっぱい恋人を満喫させてあげないとね♪ あとで喪失感が大きくなるように。私のことを二度と蔑ろにしないように。たとえ私の為であっても二度と離れることなんて出来ないように。
「そうだ♪ 夏休みにデートしようよ♪ どこ行こっか♪ やっぱり海やプールは外せないよね♪ 水着も一緒に買いに行こうね♪ 私が詩葉の選んであげるね♪ もちろん詩葉も私の選んでね♪ あんまりエッチぃのはダメだけどね♪」
「……」
詩葉は真っ赤になって俯いている。返事はしてくれないけど、絡めた指に力が込もったのを感じる。
「ママたちに何て言おっか♪ 娘さんくださいって言っちゃう? それともお付き合い始めましたくらいにしておく?」
「……」
今度は少し青ざめた。まるで何か思い出したみたいだ。やっぱりママたちもグルなんだね。
「ふふ♪ 心配しなくても大丈夫だよ♪ 全部私がやってあげるから♪」
「……」
なんだろう? これは罪悪感かな? そんな表情をしている気がする。
仕方ない。少しだけ加減してあげよう。
「やっぱり学校では内緒にしておこっか♪ 今まで通りの距離感でさ♪ それはそれで悪くないよね♪ まさに秘密の関係って感じでさ♪」
「……うん」
あからさまにホッとした様子だ。
「代わりに何かおそろいのものを身に付けようよ♪ そういうの匂わせって言うんでしょ♪ 夏休みの間だけでもさ♪ いっそ婚約指輪でも付けちゃおっか♪」
「……」
今度はめっちゃ見てきた。流石にわざとらしすぎたかな?
「ふふ♪ どうしたの? 私の顔に何かついてる?」
「……手……放して」
ああ。もう学校が近いのか。詩葉との通学路はあっという間だったね。全然話してくれなかったけど。それでも。
「本当に離しちゃうの?」
「……決まりだから」
クラスメイトに見られるからじゃなくて? 校則で決まってるの? そんなルールあったっけ? ああ。私達が恋人だからか。こればかりは仕方ないか。ちづ姉を困らせるわけにもいかないし。
「じゃあね、詩葉。また後で♪」
気持ちを切り替えて詩葉の手を放し、私は一人で駆け出した。詩葉は付いてこなかった。意図は察してくれたようだ。流石は幼馴染♪ ふふ♪ 大げさかな♪
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「おはよー」
「「おはよう! 響ちゃん!」」
友人コンビは今日も元気いっぱいだ。
「昨日はありがとう♪」
「遠野さんとお話出来たんだね♪」
「うん♪ お陰様で♪」
まだまだ本調子とは言い難いけど。
「けどごめんね。教室でその話は」
「もしかしてまだ?」
「うん。後でちゃんと説明するよ」
「わかった。ならお昼休みに聞かせてね」
「うん♪」
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あっという間にお昼休みになった。
「えぇっ!? 本当に付き合い始めたの!?」
なんでそんなに驚くのさ。噂のことを教えてくれたのは奏じゃんか。
「奏ちゃん! シィー!! 誰かに聞こえちゃう!!」
琴音もね。
「響ちゃん、嫌だって言ってたのに」
覚えてたのね。
「ちゃんと反省はしてもらうよ」
「それって……」
「大丈夫。心配は要らないよ」
これ以上喧嘩を続けたいわけでもないからね。
「そっか」
「今度さ。夏休み中に家で勉強会しようよ。詩葉も誘って四人でさ♪」
「「やる!」」
「なら決まり♪」
今年の夏休みは楽しくなりそうだね♪




