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03-01.新しい関係




「来ないし……」


 今から来るって言ったのに。あれから三十分くらい経っている。隣の家から来るのにどんだけ時間を掛けるのさ。



「……」


「うわっ!?」


 びっくりしたぁ……。


 詩葉は何故か扉を少し開けてこちらを覗いていた。いつから居たんだろう。全然気が付かなかった。忍び足も随分と慣れているようだ。そりゃそうか。一年も私に気付かれないよう出入りしてたんだし。物音を立てずに歩き回るのだって造作もないのだろう。



「なんでそんなところにいるのさ。早く入ってきてよ」


「……お腹空いてる?」


「え? あ、うん。言われてみれば」


「来て」


 晩御飯の用意までしてくれてたの? 驚きのスニーキング能力だ。もう驚くとかそういうレベルじゃない気がするけども。魔法でも使っているのだろうか?



 一階のリビングに降りて行くと、既に私の席に食事が並べられていた。



「いただきます」


「どうぞ」


 詩葉は既に食べた後なのかもしれない。私の正面に座って微妙な表情でこちらを眺めている。



「そういう時は笑顔で観るものじゃないの?」


「……観ていいの?」


「監視カメラは全部撤去してね。どうせ私達が見つけられた分だけじゃないんでしょ」


「……」


「詩葉。返事」


「……やだ」


 やだって言われてもなぁ……。



「美味し♪」


「……よかった」


 詩葉は心底安堵したかのように息を吐いた。監視カメラの件は認めてないからね? 先に話すべきことがあると思っただけで。



「仲直りしてくれるの?」


「……響こそ」


「撤回はしないよ。高校出たら詩葉とは距離を置くよ」


「……」


「そんな目で見てもだめ。詩葉は自分のやったことをもっと正しく知るべきなんだよ。私と同じ気持ちを味わってもらわないと許すことなんて出来ないんだよ」


「……私だって」


「どんな理由があったって選んだのは詩葉でしょ。私のせいにしないでよね」


「……」


 これっぽっちも納得してないなぁ。



「とにかく今は仲直りしようよ。私の気持ちを変えたいなら今からでも頑張ってみてよ」


「……喧嘩なんかしてない」


 まだ言うか。



「詩葉」


「……わかった」


 渋々だなぁ。



「いつもご飯ありがとう」


「え?」


「掃除もしてくれてたんだよね。けど明日からは自分でやるからね」


「なんで……」


「私は詩葉に頼りすぎていたから。だから詩葉は何も言ってくれないんだよね。私が頼りにならないから一人で頑張っちゃうんだよね」


「ちが……」


「ごめんね、詩葉。大好きだよ、詩葉。いつまでも仲良しでいようね」


「……」


「やっぱり嫌? 幼馴染だけじゃ物足りない?」


「……うん」


「それは困ったね。私は別に詩葉との関係に不満はなかったんだけど」


「……」


 今度は泣きそうになっちゃった。私と言葉を交わした事を後悔しているのかも。



「なってもいいよ。恋人」


「……え?」


「詩葉を失うくらいなら何にでも付き合ってあげる」


「……」


「やっぱり高校卒業後は離れて暮らすけどね。遠距離恋愛も悪くないよね」


「……なんで」


「知らないよ。詩葉がどうしてそんな事を望んでいるのかなんて」


「響は」


「私がどうして応えるのかなんて聞くまでも無いでしょ。恋とかはよくわからないけど、そんなの些末な問題だよ。詩葉は何より大切な存在なんだから。私だって必死なんだよ。どうしたら詩葉と一緒に居られるのかってずっと悩んでた。詩葉は私より優秀だから。私はいつだって詩葉に追いつけずにいたから。いつか捨てられちゃうんじゃないかって」


「そんなわけないじゃない!!」


「嘘つき。詩葉は私を捨てたじゃん」


「それは!」


「詩葉がどう思っていようと関係無いよ。明かせもしない理由なら無いのと同じだよ。少なくとも私にとってはね」


「……」


「だから私も努力するよ。詩葉に好きでいてもらう為になんでもするよ。詩葉が恋人になりたいなら付き合うよ。そんな考え方が気に入らないなら改めるよ。少し時間は掛かるかもしれないけど。詩葉にも何かプランがあるのかもしれないけど。それでも少しだけ認めてくれると嬉しいな」


「……うん」


「よかった♪ ならこれから改めてよろしくね♪」


「……うん」


 なんだか納得しきれていない様子だ。やっぱり詩葉の計画とは違うのだろう。それでも今回は頷いてくれた。



「そうだ♪ どうせなら今日から一緒に住もうよ♪」


「……」


 おっと? 今凄い目で見てきたね。



「ごちそうさま♪ 美味しかったよ♪ お風呂はもう済ませちゃった? 背中だけでも流してくれるかな?」


「!?」


 ふふふ♪ 真っ赤になっちゃってまぁ♪ このまま畳み掛けてやるぜ♪



「照れてるの? 一緒にお風呂入るのなんて今更じゃん♪」


「食器……片さなきゃ……」


「いいから。詩葉は私の着替えを取ってきて。洗い物はその間に済ませておくから♪」


「え? え?」


 戸惑う詩葉の背を押して階段に向かわせる。


 ふふ♪ 少しくらいなら物色したっていいんだぜ♪ たまに洗濯もしてくれていたから今更だしね♪



 ふふふ♪ 詩葉なんてチョロいチョロい♪ この調子なら恋人役も簡単に務まりそうだね♪

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