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02-07.作戦会議




「少し安心したよ。やっぱり響ちゃんも冷静じゃなかったんだね」


「そっすね……」


「これからどうするの? 本当に絶交が目的ならこれ以上は手を貸せないよ。むしろ私達は響ちゃんを止めなきゃいけなくなるんだよ」


「なんでさ……」


「遠野さんが悪いのは間違いないよ。響ちゃんが逃げ出したい気持ちもわかるよ」


「だったら見逃してよ。手を貸してとまでは言わないから」


「それは無理だよ。だって私達は知っちゃったもん。遠野さんの気持ちは響ちゃんに向いたままなんだって」


「だから許せって? 仕返しもするなって?」


「違うよ。そうじゃないよ。一線だけは越えないでって言ってるんだよ」


「先に踏み越えたのは詩葉だよ」


「だから響ちゃんが踏み留まって」


「なんで琴音にそんなこと頼まれなくちゃなんないのさ」


「これ以上私の大切な親友を泣かせてほしくないからだよ」


「……もう泣かないよ。私は笑う為に詩葉を捨てるんだよ」


「響ちゃんはそんな子じゃないよ。いつまでも引きずるよ」


「……」


「響ちゃんは遠野さんが本当に諦めると思っているの?」


「……それは」


「次は逆になっちゃうんだよ。追う方と追われる方。響ちゃんが遠野さんを無視し続けなくちゃならないんだよ? 響ちゃんにそれが出来るの? 出来るわけないよね?」


「……」


「だからダメなんだよ。一方的にお別れを言うのはケジメを付けたとは言わないんだよ」


「ならどうしろって言うのさ!!」


「先ずはちゃんと話をして。全てはその後だよ」


「それが出来ないって言ってるの! わかるでしょ! 今だって引き籠もってるんだよ! それともなに!? 私が何もしてこなかったって思ってるの!?」


「うん。響ちゃんは我慢しちゃったんだもん。やりようはいくらでもあった筈だよ。クラスの皆を味方に付けてからなら教室で問いただすことだって出来た筈だよ」


「っ!? そんなバカな真似!!」


「響ちゃんは優しいもんね。遠野さんが嫌がっているならって遠慮していたんだよね」


「……」


「それでもどうしてもお別れがしたいなら遠野さんを納得させないとだよ。それが出来ないなら今だけは我慢していて。いつか必ず私が逃がしてあげるから。遠野さんの下から響ちゃんを攫ってあげるから」


「琴音……」


「私は響ちゃんの味方だよ」


「……怒鳴ってごめん」


「ううん。私も嫌なことさせてごめんね。助けてあげられなくてごめんね」


「謝らないで……ちゃんとわかってるから……」


 家族同然の相手と簡単に縁を切れる筈もない。それも学生の内は特に。どうしても逃げたいなら大人になるしかない。自分の稼ぎで居場所を作るしかない。きっと詩葉は全部わかってる。ちづ姉だけじゃない。ママ達だって味方につけるだろう。その算段がある筈だ。私には想像もつかない考えがある筈だ。


 ともかく急ぐ必要がある。ママ達が帰って来るまでに詩葉を引きずり出さなければ。そうでないと私の立場は不利になる。間違いなくそうなると言い切れる。



「ごめん琴音。それから奏も。やっぱり力を貸してほしい。私が詩葉から逃げ出すのを手伝ってほしい。酷いことを頼んでいるのはわかってる。きっと二人にだって後悔させちゃうってわかってる。それでもどうか私に力を貸してください。私一人じゃ詩葉を引きずり出せない。だからお願いします」


「そっか。どうしても許せないんだね」


「わかんない。けどどっちにしても一度は距離を置く必要があると思う。後悔もすると思う。またすぐに仲直りしたくなるかもしれない。だから詩葉ともちゃんと話すよ。琴音に言われたからだけじゃない。納得した上で話すって決めたよ。私の気持ちを伝えて理解してもらう。お互いに納得したうえで距離を置く。そうでないと詩葉も同じになっちゃうから。私だって一年も諦めきれなかったんだもん。詩葉だってきっと同じだよ。けれど私は詩葉みたいに無視し続けるなんて出来ないもん。これは詩葉のためじゃなくて私のためだから。詩葉とは前提からして違っているから。だから私は絶対に我慢なんて出来ないもん。詩葉にも協力してもらわないとね」


「……そっか。わかった。私も協力するよ」


「ありがとう、琴音」


 ありがとう。親友。



「う~~~」


「奏?」


 なにやら唸り声を上げていらっしゃる。



「意味わかんな~い……」


 あらら。



「結局さ! 響ちゃんは詩葉ちゃんが好きなんでしょ!」


「嫌いだってば」


 何を聞いていたのさ。



「未練たらったらじゃん!」


 それはそう。思いの外理解してらした。



「なのになんでお別れしちゃうの!」


「詩葉の暴走を止めるためだよ。今の詩葉がおかしな事をしているのは間違いないでしょう? それが私のためだって言うなら私がなんとかしてあげないと」


「受け止めてあげればいいじゃん! 響ちゃんもそれを望んでるんでしょ!」


「望んでないよ。私はこんな形で詩葉と一緒に居たかったわけじゃないんだよ」


「仲直りすればいいじゃん! 絶交なんておかしいよ!」


「詩葉はそれを望んでいないんだよ。詩葉は自分の都合を押し付けることしか考えていないの。私はそれが嫌で嫌でたまらないの。詩葉にそれをわかってもらいたいの」


「ならそう言えばいいじゃん!」



「奏ちゃん。奏ちゃんは親から勉強しなさいって叱られることがあるでしょ?」


 琴音が諭すように口を開いた。



「それが奏ちゃんのためだってわかっているでしょ? それでも奏ちゃんは嫌な気持ちにはなるでしょ?」


「同じだって言いたいの?」


「ううん。それを言うのが親だから理解出来るんだよ。けれど遠野さんは響ちゃんの親でもなんでもないよね。幼馴染ってだけだよね。響ちゃんのためだって言えば何をしてもいいわけじゃないよね」


「……詩葉ちゃんがやりすぎてるのはわかるよ」


「うん。そうだよね。私達だってお母さんから無視されたら辛いよね。そんなの実の親だって許されないことだよね。遠野さんは響ちゃんに酷い事をしているんだよ。だからそれを理解させてあげないといけないよね」


「……悪い子だから罰を与えるの?」


「それは響ちゃん次第かな」


「そういう面も無きにしもあらず」


 私にもわかんないや。詩葉には思うことが多すぎるもん。



「仲直りするために懲らしめるなら協力する」


「決まりだね♪」


 しないよ? 仲直りはいつかの未来の話だよ? 取り敢えずは決別するよ? 琴音もちゃんとわかってる?




----------------------




「作戦を考えよう」


「詩葉ちゃん家入れないよ?」


「いっそ響ちゃんの部屋から叫んでみるのはどうかな?」


「琴音って意外と脳筋だよね」


「えぇ!?」


 解決方法がパワフル過ぎる。ご近所様の目もあるし流石にそれは避けたいところだ。琴音に言わせればこういうところが遠慮してるって話なのかもだけど。


 確かに一年もグジグジ悩むくらいなら一時の恥くらい甘んじて受け入れるべきだったのかもしれない。けれど今はやめておこう。せめて最後の手段にしておこう。



「先ずはバレてるぜって伝えちゃおっか」


 私に内緒にしたかった最たるものはヒコマちゃんの件なんだろうし。その前提が崩れたなら無視し続ける必要も無くなっているかもだし。



「どうせなら配信の時に伝えちゃえば?」


「余計酷い傷跡になるやつじゃんそれ……」


 デジタルタトゥーってこういうのを言うんだっけ? 単なる黒歴史?


 なんにせよ、ヒコマちゃんのコメント欄に下手な事を書いてしまえば私や詩葉のリアルバレに繋がりかねないよ。身バレまでいかずとも、リア友だってバレちゃうじゃん。ヒコビキ勢力が余計に勢いを増しちゃうよ。



「それだよ!」


「えぇ……琴音まで賛成なのぉ……」


「違うよ! 響ちゃんもバーチャルアイドルになっちゃおうよ!」


「意味がわからない……」


「遠野さんなら絶対に気付くよ! 響ちゃんが秘密に気付いたって察して行動を起こすかもしれないよ! 取り敢えずショート動画を上げてみよう! 今度デビューしますって! それで余計なことは言わなくてもきっと伝わるよ!」


 タイムリミットまであと一週間も無いんだってばぁ……。



「というかそれならメッセージ入れておけば済む話だし」


 一応既読は付くんだから。



「待ってるだけじゃダメだよ! それじゃあ遠野さんの思う壺だよ!」


「だからってぇ~」


 そもそも間に合わないんなら待つのと変わらないでしょうが。



「わかってるでしょ! 遠野さんは知らんぷりするよ! 間違いないよ!」


「それは……」


 そりゃそうか……。未だに本当の目的はわかってないんだし。だってそうでしょ? バーチャルアイドルになりたいだなんて理由だけで詩葉が私を無視する筈がないんだもの。ちづ姉だって協力するわけがない。


 琴音の言うように何かその先がある筈だ。そして私はまだその何かを掴んでいない。だから詩葉を振り向かせることは出来ない。自明の理だ。



「二人は詩葉の本当の目的ってなんだと思う?」


「「恋! そんなの恋に決まってるじゃん!!」」


「えぇ……」


 どういうことぉ……。



「響ちゃんのことが好きになっちゃったんだよ! 遠野さんは振り向いてほしいんだよ!」


「定番だよね♪ わざと素っ気ない態度を取るとこまで含めてさ♪」


「無いって。無い無い。私達はそういう関係じゃないよ」


「「ほらぁ!」」


「ほらって何さ」


「「響ちゃんがそんなんだからだよ! 間違いないよ!」」


「いや、間違いないって言われても……」


「「なんでわかんないの!?」」


「えぇ……だって私達は女の子同士で……」


「「関係ないよ!」」


 ……二人ともちょっと楽しんでない?



「「普通だったらここまでしないよ! 全部響ちゃんと恋人になる為だったんだよ!」」


「だったらなんでバーチャルアイドルなのさ……」


「「響ちゃんが何か言ったんじゃない?」」


 私のせいなの? というか、さっきからそれどうやってるの? 息ぴったりすぎない? 流石に偶然のレベルじゃなくない? この二人こそ実は付き合ってたりしない?



「ちょっと一旦落ち着いて。冷静になろうよ。二人とも」


 一つずつ思い返していこう。詩葉のこれまでの行動を。

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