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02-06.身バレ




「「う~た~は~ちゃ~ん! あ~そび~ましょ~~!」」


「ダメだよ! 二人とも! 子供じゃないんだから!」


 放課後は琴音と奏と三人で遠野家に乗り込む事にした。琴音は珍しく部活もバイトも無いそうだ。折角のお休みなのにこんな事に付き合わせてしまって申し訳ないぜ♪ なんならバイトはともかく、下手すりゃ部活はズル休みかもだし。私の事を心配して付いてきてくれたのかもしれない。



「やっぱ出てこないね」


「だね~」


 諦めて隣の自宅へと二人を招き入れた。



「今日も珈琲しかないけど」


「ありがとう♪」


「ありがとう」


 琴音はやっぱり元気がない。私と入れ替わりになってしまった。間違いなく私のせいだろう。



「茶菓子はあったかな」


 詩葉の事だからこっちにも仕込んであるとは思うけど。



「お台所借りてもいいかな?」


「うん♪ もちろんいいよ♪」


 琴音が何か作ってくれるらしい。きっとパンケーキだ。琴音はお菓子作りが得意なのだ。しかも私好みの甘さ控えめ仕様だ。ここは甘えさせてもらいましょう♪



「詩葉、どうしたら出てきてくれるかなぁ」


「電話は?」


「出ない」


 既読は付くから見ていないわけじゃない。これが唯一の反応とも言える。詩葉ならそういう設定を解除したりも出来るだろうに。なけなしの良心がそうさせなかったのだろうか。



「玄関扉にはチェーン。窓には全て雨戸。勝手口はそもそも鍵を持っていない。たぶん夏休みの開始まで粘るつもりだ。下手をすれば詩葉ママのことまで締め出すつもりかも」


 流石にそれだと問題になりすぎるかな。隙を見て詩葉ママの事だけは上げるつもりかも。小癪な。



「要塞だね♪」


「難攻不落だぜ♪」


 困ったね~♪



「ヒコマちゃんの配信で呼びかけてみるのはどうかな~」


 キッチンの琴音が手を動かしながら話に加わってくれた。



「ヒコマちゃん? なんでヒコマちゃん?」


「あれだけ有名な子だもん。それにほら。遠野さんと響ちゃんの好みは似てるって言ってたから」


 どうかなぁ~。昔の私と詩葉は何でも好みが合ったけど、今はもう何もかも違っちゃってるんだもんなぁ。今回たまたまって可能性は当然無くもないけれど。



「きっと力を貸してくれるよ。ヒコマちゃんも仲直り賛成派だったもん」


「あの配信も観てたの?」


「うん。少しね」


 琴音は忙しいもんね。



「二人は何の話をしているの?」


 あれ? もしかして奏はヒコマちゃんのこと知らないの?



「バーチャルアイドルの【緋恋待 ベニ】ちゃんが、昨晩の配信で私のお悩み相談を取り上げてくれたんだぜ♪」


「え!? 本当に!?」


「うん。今からアーカイブ観てみよっか」


「うん! 観る観る!」


 よしきた♪ ヒコマちゃん鑑賞会の開始だぜ♪




----------------------




「……」


 視聴を始めてすぐに奏が何やら考え込み始めた。



「ねえ、これって詩葉ちゃんだよね」


「え?」


「だってほら。この仕草。声は全然違うけど、手の動きがいつもの詩葉ちゃんだよ」


「は? え?」


 うそ……まさかそんな筈……けど……でも……。



「それなら好都合だね」


 琴音がパンケーキを持って戻って来た。



「……琴音は知ってたの?」


「うん。たぶんそうじゃないかなって思ってたよ」


「ふふん♪ 響ちゃんは先入観に囚われすぎだね♪」


 ドヤるな。割と本気で悔しいんだから。



「ダメだよ奏ちゃん。響ちゃんは本気で悩んでるんだから」


「あ、ごめん」


 素直。いいってことよ。



「ヒコマちゃんが活動を始めたのって去年の春だったよね。それで遠野さんが響ちゃんを遠ざけたのも、たしかそのくらいからって話だったよね」


「うん……」


「遠野さんは気付かれたくなかったんじゃないかな。何か響ちゃんの為にしたい事があるのかも。この活動そのものじゃなくて、何かその先のこと。それまで正体を明かしたくなかったのかもしれないね」


「だからって……」


「そうだね。無視し続けていい理由にはならないよね。響ちゃんならきっと気付いちゃうって思っていても、それだけで正当性は得られないよね。きっとまだ何かあるんだよ」


「何か……」


 そこにちづ姉も共感したのだろうか。私も知れば詩葉を許してしまいたくなるのだろうか。



「さっすが詩葉ちゃんだね♪ やることがでっけぇーぜ♪」


 奏はもう少し空気読んで。どうぞ。



「それで響ちゃん。私に何か言う事はないかな?」


「え? 琴音に? なんで?」


「響ちゃんって結構鈍ちんだよね」


「詩葉ちゃんにも気付けなかったもんね♪」


 うぐっ……。



「それで? 響ちゃんは遠野さんとどうするつもりだったの? この配信は私も見ていたんだよ? そのつもりでもう一度答えてくれるかな?」


 ……あぁ。なるほど。琴音は私が「vicky-utalove」だって知ってるんだもんね。それで私のお悩みも聞いていたわけだ。


 それでかぁ……。我ながらアホ過ぎるよぉ……。


 しかもあろうことか、何も考えずにそれを今この場で二人に観せようとしていたのだ……。私もやっぱり冷静ではなかったのだろう……。大好きなヒコマちゃんの話題だからって浮かれすぎだ……。穴があったら入りたい……。



「ごめんなさい……」


「何が?」


「私は詩葉と絶交する為に二人を利用しようとしました」


「やっと正直に話してくれたね」


 そりゃ不審がるわけだ……。不審がるどころか、そもそも信じていなかったのだ……。当然だぁ……。ほんとごめん……。



「えぇ!? なんでなんで!?」


「響ちゃん。ちゃんと説明してあげて。奏ちゃんにも。もちろん私にも」


「はい……」


 私は全てを白状した。

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