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02-02.想定外




「やられた……」


「え? 何が? もしかして遠野さんの事?」


「……なんでもない」


 ちくしょう……。なんだ早退って……。


 そこまでするかぁ? 詩葉が早退なんてしたのは高校入学以来初めてだぞ? またしても私の目論見に気付いたの? 私を疎ましく思っているのは詩葉の方じゃなかったの?


 ダメだ……意味がわからない。何故私が動くと決断したその日に早退なんだ。出鼻を挫くったってタイミングが良すぎるだろう。私はまだ何のアクションも起こしていないんだ。こちらの考えが見透かされる切っ掛けなんか無かった筈だ。


 実は詩葉ってエスパーだったりする? 私の思考を読んだの? 本当は詩葉も私と別れたくはないの?


 意味がわからない。そんな筈がない。嫌っていない相手を一年以上も無視なんてする筈がない。それが致命的であると理解していない筈はない。少し機嫌を損ねて数日続けるのとはわけが違う。やはり何か理由がある筈だ。詩葉は私のことが嫌いで堪らないのだ。私が話しかけようと少しでも思えばすぐさまそれを察して逃げ出す程なのだ。



 ……流石に偶然か。私は運が悪いのかもしれない。



「遠野さん帰っちゃったね」


「そうだね~」


「え?」


「? えってなにさ」


「……何かあったの?」


「何も無いよ別に」


「響ちゃん。親友には嘘をつかないって言ったよね?」


「本当に何も無かったよ。ただ私は決心したの。もう一度だけ詩葉に話しかけてみようって。けどほら。出鼻を挫かれちゃったから。どうしようかなって。途方に暮れてたの」


「……そっか。わかった。私も協力するね」


「ううん。それはやめてほしいな。やっぱり自分の力で届けないとさ♪」


「……」


「どしたん?」


「響ちゃんが何か無理してるってわかるんだからね」


「……あはは~。少し不安なだけだよ。詩葉は私の事を知り尽くしているから。それにとっても逃げ足が速いの」


「……そうみたいだね。けど少しじゃないでしょ?」


「気のせい♪ 気のせい♪」


「響ちゃんの嘘つき」


「ひどい……」


「響ちゃんがそんな風に笑うなら私だって何かしなきゃって思うんだよ」


「……そっか」


 よっぽど酷い笑い方だったのかしら。



「覚悟してね」


 ……琴音も嘘つきじゃんか。いつだって私の味方になってくれるって言ってたのに。




----------------------




「……」


 家に帰り着くなり、響の部屋に設置した監視カメラの映像を確認し始めた。動体検知と音声検知で大体の時間を割り出し、昨晩の響が何を考えていたのか調べていった。



「どうして……」


 響は私に別れを告げようとしている。わかったのはそれだけだ。スマホを握りしめながら一晩中啜り泣いていた。



「後少しなのに……」


 なんでよ……どうしてなの……。後少し我慢していてくれれば約束が果たせるのに……。全部響のためなのに……。



 こんな事態は想像もしていなかった。まさか響が私を捨てようとするだなんて。そんなこと出来る筈がないのに。それだけはあり得ないことだったのに。


 どうして響は私を捨てようだなんて思ったの? そこまでは監視カメラの映像からは見て取れない。わからない。わからないわからないわからない。そんな筈がない。響が私を捨てる筈がない。だから何か見落としているんだ。映像をもう一度見直そう。何時間かけてもいい。全て洗い直そう。何か他にも漏らしているかもしれない。私の事を口にしているかもしれない。……続けよう。




----------------------




「ちづ姉。プレゼント」


「え? あ、ああ。ありがとう」


「じゃ」


「おい待て」


 捕まってしまった。


 しかも、そのまま空き教室に連れ込まれてしまった。



「いやん♪ こんな所に連れ込んで何するつもり♪」


「昼飯はどうした」


「まだ買ってない」


「なら話は少しだけにしよう。ちゃんと食えよ」


「うん。わかった」


「それでだ。今朝はどうした? まだ随分と顔色が悪いぞ。だってのにお前、逃げ出したそうじゃないか」


「あはは~♪ 代わりに謝っておいて~♪」


「公私を分けろ。いつも言っているだろう。わざわざ職員室に来ていったい何を……」


 先程受け取った袋を確認するちづ姉。



「ハンドクリーム? 本当にプレゼントだったのか?」


「え~? 信じてくれてなかったの~?」


「そういう時は一言付け加えるもんだ」


「いつもお世話になってるからね♪ たまにはお礼がしたかったのさ♪ 大好きだよ♪ ちづ姉♪」


「お、おう。そうか。ありがたく使わせてもらおう」


「ふふ♪ ちづ姉照れてる♪」


 チョロい♪



「いや待て。勝手に帰ろうとするな」


 ちっ。バレたか。



「詩葉も体調が悪いと早退していたぞ。お前達、二人揃って何かあったのか?」


「昨晩一緒に夜ふかししちゃっただけだよ♪」


「嘘つけ」


 やっぱ騙されてくれないかぁ~。



「響。お前泣いていたな?」


 なんでわかるし。もうとっくに顔はいつも通りだろうに。鏡でしっかり確認してから、ちづ姉に会いに来たんだぜい。



「なんでさ」


「私の目は誤魔化せんぞ」


 さては心配で見に来ていたな? まじごめん。迷惑かけるつもりはなかったんよ。



「詩葉と何があった」


「話は少しだけにするんでしょ」


「放課後教室に残れ。家庭訪問に行くぞ」


「職権乱用だぁ♪」


 けど渡りに船だ♪ 流石ちづ姉♪ 愛してるぜ♪


 それからごめんね。こうなってしまった以上は、ちづ姉の眼の前で強引に別れを切り出すしかない。ちづ姉にも辛い想いをさせてしまうけど、私はやり遂げなければならないんだ。言い切ったらその瞬間に逃げ出そう。ちづ姉から逃げるのは容易じゃないけど、他にチャンスも無さそうだもん。そのままその場しのぎの仲直りとかさせられるよりかは、きっと良い結果に繋がる筈だ。



「悪かったな。これまで口出ししてやれなくて」


「もしかして気付いてた?」


「当然だ」


 そりゃそうだよね。ちづ姉が私達の状況に気付かない筈はないよね。



「私は響を泣かせる為に詩葉の勝手を許していたわけじゃない」


「うん? それは何の話?」


「……その話も詩葉を交えてだ。悪かったな、響。本当に」


 どういうこっちゃ?

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