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決死人機兵装メサイア  作者: うどん米
アジア大戦編
35/36

第35話・合理的殺戮者のエスカトロジー



【強…人間プログ…ム起動】


 夢を見ているようだった。

 自分で動かしているはずなのに、僕は自分の体をコントローラーで動かしている気分だった。


 何というか、意識自体もおぼろげでぷかぷかと海の上で浮いているような心地よい気分だった。


「答えなさい……だと」

「はい。あなた方の目的、敵の配置、ボスとは誰か、作戦内容。全て話しなさい」

「っ!!そんなことを言われて話す馬鹿がッ」


 彼の言葉が完全に発せられる前に僕は何の躊躇もなく彼の指を折った。

 痛みで彼の表情が歪む。


【…化人間プロ…ラム起動】


 それに相対する僕の表情は全く変わらない。


「話しなさい」

「……くっ、指がおられた程度で話す奴はここには誰もいないぞ!」

「外れなさい」


 それを聞いた僕は今度は彼の両手首に手をかけ、万力を込めて無理やり外す。


 そして、流れるように足首を掴みまるでプラモデルのパーツでもいじるように簡単に外して見せた。


「があああぁぁっ!!」

「話しなさい」

「やめ、やまらああふぁ!!」

「話しなさい」


 足首と手首を外された彼にもはや逃げるすべはなかった。

 それを、見た僕も――俺も彼を拘束することはしなかった。


【強化…間プログラム起…】


 ただ、彼が出来たのはその場でじたばたすることだけだった。


「話しなさい」

「ひぃっ、来るな!来るなぁァァァ!!」


 (めぐる)は淡々と彼に詰め寄る。

 一方で、拷問を受ける彼の方は機械のような槃を見て発狂し続けている。


「死になさい」


 それを見て情報を聞き出すことは不可能だと判断した俺は早々に彼の首と頭に手をかけ折った。



「……」


【強化人…プログラム…動】


 無言で死体たちを見下ろす。


(何、何やってんだよ!!何で、体が動かない!何で、何で僕はこんな惨いことを……)


 自分の意識で体を動かせていたのは、今殺した彼に待ったをかけたのが最後だった。

 それ以降、全く体の自由が利かない。


 それどころか段々と意識が薄れてきた。


(……ごめん、ごめんなさい)


 殺しておいて、それはないと思うが精一杯の謝罪の言葉を体の中から投げかけた。


 そして、僕の体を勝手に動かしている正体不明のこいつはテロリストたちの持ち物を漁り出す。


(銃に銃弾、あれってもしかして手榴弾!?それに、防弾ベストまで……根こそぎ奪っていった)


 敵が持っていた救急セットを強奪して出血箇所に適切な処置を施していく。


(何でこいつは僕も知らないことを平然とやれるんだ?)


 当然、僕に救急セットを使った経験はない。

 それどころか銃の扱いも心得ているらしく見たことない手早さで銃をリロードしていた。


 そして、どこを目指しているのかわからないままこいつはどこかに歩き出した。


「探しなさい」

(しかも、こいつ何でずっと命令口調なんだ?)


 なんていうか、意志があるように見えない。


【強化人間…ログ…ム起動】

(くぅっ、またこれか……)


 一定の周期で訪れる僕の意識が薄れる瞬間がある。

 その時は決まって【強化人間プログラム起動】と言う言葉が一部かすれて聞こえてくるのだ。


 まるで、電子機器の再起動を何回も繰り返されているような気分だった。


「狙いなさい」


 その時、階段を上った先で会敵する。

 見覚えがある、僕を始めて狙って撃ってきた三人組だ。


「死になさい」

「っ、こい……!」


 一人目は言い切ることすらできなかった。

 それをきっかけにしてこいつと相手の銃撃が始まる。


「歩夢!!っ、構わない撃て!!」


 銃口から火花が散る。

 相手は本気でこちらを肉塊にするために銃口を引き続けている。


 だが――


「避けなさい」

「に、人間じゃない!」


 銃口の角度から当たる位置を逆算。

 そこから、こいつはもはや人間の物とは思えない肉体の駆動を見せた。


 壁に跳んだかと思えば数瞬、壁を走り銃弾を避けたと思えば銃口を向ける。


「死になさい」


 次の瞬間、正確無比な射撃が二人の敵を襲った。

 一射目は、一人の眉間に正確に命中し、二射目はもう一人の足を貫いた。


「あ、ああぁ!!俺の、俺の足がぁ!!」

「受け取りなさい」


 足音すら立てず壁から地上に着地し、重量のある銃を迷いなく相手に投げつける。


 ただでさえ足を撃たれて体制の崩れた相手は投げつけられた銃を受け止めることが出来ず倒れた。


「やめ、やめて……くれ」

「手放しなさい」


 そして、身軽になったこいつは敵の目前まで迫り武装を奪う。


「あなた方の目的、敵の配置、ボスとは誰か、作戦内容。全て話しなさい」

「は、話せない。仲間は売れない!!」

「死にな……」


 こんな状況でも気高い精神を持ち続けた男はこいつの要求を拒否する。

 それを聞いた途端にまた殺そうとする。


 だが、近くに迫る足音を聞いて手を止めた。


「……盾になりなさい」

「え?」


 そう告げられた男の瞳に僕の顔が反射する。

 写っていたのは、無表情で口だけ動く僕の姿だった。


(やめろ、やめてくれ!)


 何をするか察した僕は必死に体を動かしているこいつを止めようと足掻いた。

 だが、男を盾に変える最中の光景を彼と共に絶叫することしかできなかった。




「たす、けて……!!」


 手元の盾が叫びを上げると同時にテロリストたちもその存在に気づき、三人組が慌てて現れる。

 だが、廊下の角を曲がった先にあったのは文字通りの地獄であった。


「あ……た、立山なのか!」

「たすけて、ころして……」


 立山と呼ばれた男の体は盾になるべく軽くなっていた。

 何が起きたか、テロリストたちも理解不可能のまま動揺するしかできない。


「死になさい」


 そして、戦場ではその一瞬の動揺が命取りになる。

 こいつ特製の盾に目を釘付けにされた者たちは等しく銃弾の錆へと変わった。


「に、人間じゃない!!化け物め!」

「死になさい」


 そう言った者も――


「やめてくれぇ!!」

「死になさい」


 懇願した者も等しく殺された。

 そして、気づけば手に持っていた盾からも声がしなくなった。


「捨てなさい」


 何の感傷もなく、盾を投げ捨てた。


(なんで、やめてって言ったのに……僕が、僕が殺したぁあああああぁぁぁあ!!)


 そして、内部は絶叫に満ちていた。

 淡々と自分が一番忌避する行動を見続けた僕はもうどうにかなりそうだった。


 いくら相手が殺そうとしてきたってこんなことはしちゃいけない。

 そんなこと、小学生にだってわかる。


(こいつは……そうか、合理的なんだ)


 本来、人間と言うのは合理的に生きられない生き物だ。

 だが、こいつの行動はあらゆる面で合理的だ。


 合理的ゆえに倫理を捨てた行動を行い目的を成す。


【強化人間プ…グラム…動】


 また、意識が飛びそうになる。


(耐えろ……どうにか、体の主導権を取り返すしかない!!)


 それを必死に耐え、何とか抵抗できないか試みようとしたその時だった。


「め、槃!!良かった生きてたんだね」

「……」


 最悪なタイミングで、僕の目の前に時雨さんが現れた。

 当然、彼女の言葉に僕は一切反応できない。


「って、どうしたのその血!!ひっ、何でこんなに人が倒れてるの……?」

「……」


 当然と言えば当然だが、ここには僕が殺した死体がそこら中に転がっている。


「ねえ、何で黙ってるの?」

「……」

「おーい、槃?あたしの声聞こえてる?」


 答えないのではない。

 答えられない、必死に足掻いてもどうにもできない。


 嫌な予感がする。


 猛烈な嫌な予感がする。


「何で槃が銃を持ってるの……?これ、もしかして返り血?ね、ねぇ!!槃!槃!!」

「黙りなさい」


 必死に僕に話し続ける彼女を前に何もしないと思っていた。

 しかし次の瞬間、手を伸ばし物理的に彼女の口を塞ごうとしていた。


「っ……ぶなぁ」


 だが、間一髪で後ろに下がり避ける。


「……」

「槃じゃない……?」

(そう、そうだ!だから、逃げてくれぇっ!!)


 だが、脳内の叫びは届かない。


「死になさい」


 死の宣告が彼女を襲った。

 目にも止まらないスピードでこいつは銃を抜き時雨さんの頭に向けて一発発砲した。


「槃……?」


 彼女は最後まで僕の名前を呼んでいた。

 だが、倒れると同時に血が広がっていく。


(あ、ああぁあああああああああああああああああああ!)


 脳内に移る彼女との生活の記憶。

 一緒に鍋を食べた、腹筋を見せ合いっこした、いざと言う時は勇気をもらった。


 だが、現実はこうだ。


 それを見た僕の意識は暗い闇の奥の奥の奥まで押しつぶされそうになっていた。


「あ、ここにいたのか少年!!」

「……」


 だが、最悪の事態はまだ終わらない。



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