第28話・不可逆のサクリファイス
なんか、スマホでめっちゃ見てくれてる人がいる。
……嬉しいけどさ、この小説ってスマホで見るのきつくない?ぶっちゃけPCで見ている前提で書いてるんだけど大丈夫?目ちかちかしない?
他の教室とは違う、絢爛と言う言葉が似合う部屋には過去先生と大きな椅子に座る女性がいた。
そして、彼女は今日の一部始終を全て話した。
「……彼は一体何者なんですか?」
そして、思わずそう呟いた。
その報告を聞いていた人物は二歩、三歩歩み寄り彼女に向かって妖艶な笑みを浮かべた。
「さあ、何でしょうね」
「何でしょうね。では、ありません。アナタが……親であるアナタが知らないはずがないでしょう!!」
もちろん、用件は無涅 槃の突然の覚醒についてである。
近づいて来た彼女の笑みは深淵より深く。
恐ろしく、先生も思わず一歩退いてしまう。
「親と言っても実の親ではありませんし、壊れた救世主って言うべきでしょうか……ああ、でも一つだけ知っていることがありますよ」
「っ、それは……?」
思わず聞き返してしまう。
すると、眼光に光の灯っていない瞳で彼女は答える。
「彼は明時博士の最後の発明品だという事ですよ」
「……え?」
一瞬、世界が遠くなった。
瞳孔が開き、頭の中が真っ白になった。
(明時博士って、明時無無の祖父の……でも、彼は5年前の事件で……)
「ええ、既に殺されていますよ。影山 阿歩炉によって」
彼女の思考を先読みし、すぐに彼女は答えた。
「その名前は……」
「そういえば、そうでしたね。アナタのご子息も夫も彼に殺されていたんでしたっけ。失礼、失礼」
失礼とは、ほとんど思っていない表情で言われて少し憤るのを感じる。
「もしかして、そのために私の救世主を退学させようとしたんですか?」
「……関係ありません」
いつもこうだ、人を子馬鹿にするような態度をしているが全てを見通すような目をしてる。
だから、私が彼を退学させようとした理由もバレている。
「そうですか、それで聞きたいことはそれだけじゃないのでしょう?」
「……はい。どうして、この時期に大会を行うことを決定したのですか?」
入学式に襲撃が起こるという大事件が起こった後だというのに学校は大会を強行しようとしている。
それが、彼女は理解できなかった。
「日本の未来の為ですよ」
「未来……未来のため?」
確かに、わが校が毎年この時期に執り行う大会はデモンストレーションの意味も強い。
だが、ただでさえ安全とは言えないこの時期にわざわざ行うほどの意味もないはずだ。
「ええ、私の予想ならいい花火が上がると思うんですよ」
「花火……?」
「はい。と言ってもアナタが”最終的”に見ることはないでしょうけどね」
また、この瞳だ。
まるで、やり直しでもしているような確信の籠った瞳を見ると本当に何かが起こりそうな気がしてくる。
「……わかりました。今は、それでいいです。学園長」
「物わかりの良い人は大好きですよ」
学園長と呼ばれた女性は、にこやかに彼女を見送る。
だが、彼女が扉に手をかけた瞬間振り向く。
「最後に一つだけ良いですか?」
「ええ、忘草 勿美についてですよね?」
「……はい」
本当に気持ち悪いくらい人の思考を見透かしている。
「彼女のことは気にしなくて結構です。アナタも実際に見たわけではないのでしょう?」
「で、ですが……」
「安心してください。既に、彼女は殺されていますよ。5年前にね」
「っ!?」
それだけで、彼女は理解してしまった。
そして、記録によれば彼の本当の両親は5年前に殺されている。
同時に幼馴染まで失った彼の心は既に――
「幻覚を見続けているんですよ。死んだ彼女の夢をね」
「……わかりました。失礼します」
自分の義理とはいえ息子のことを淡々と説明する彼女に自分が出来る最大限の心の底からの軽蔑の視線を向けて学園長室を後にした。
***
白い靄が僕を包んでいる。
すごく、安らかな気分だ。
もう、ずっとここにいたい。
「……ぐる」
誰かが僕の名前を呼んでくれている。
俺の物じゃない、義理の母親が付けた僕の最低最悪の名前を呼んでいる。
「槃!!」
「……っ!!」
少ししか入ってこなかった光が完全に瞳に入って来た。
一瞬、眩しくて世界が白くなったが徐々に前がはっきり見えてきた。
「無無……先輩?」
「よかった。目を覚ましたんだな」
目の前にはほっとした表情の先輩の顔があった。
ものすごく体がだるいが何とか上体を起こし、右と左と首を動かす。
「ここは、君の部屋だ。それより、私の膝枕には何か言ってくれないのかな?」
「っ、え……ありがとうございます?」
「あはは、そんなまともな反応しないでくれよ。聞いたこっちが恥ずかしいじゃないか」
そう言った彼女の顔は少し赤い。
「そうだ!!そ、それで対戦は……千時さんは無事なんですか!!」
「退学のことじゃなくて、そっちか君らしいと言えば君らしいね。安心すると良い、彼女は何ともないよ。それに、君の勝ちだ」
「……よかったぁ」
ガクッと肩の力が抜けていく。
あまり記憶がないが、思いっきり腕を潰していたような覚えがあった。
それに、退学と大会の方も何とかなって今は本当にほっとした勢いで魂も抜けて生きそうだった。
(……あれ?でも、先輩が僕の部屋にいるということは?)
だが、何故だろう急に寒気が襲ってきた。
「お、起きたんだな。槃」
「と、時貞くん!?」
「自分もいるよ」
「時翠くん!!」
何と何と僕の部屋に勢ぞろいだ。
しかも、少し遠くからは未来さんと千時さんの声も聞こえる。
「……え、えっとバレちゃった」
そして、最後は申し訳なさそうな表情の時雨さんがそそくさと現れた。
「なんかごめん……」
色々混乱していたが、僕はとりあえずそう言うしかなかった。
その後、重い体に何とか鞭を打って立ち上がらせてリビングに向かう。
すると、そこには七人前以上の具材を限界までミチミチに敷き詰められ悲鳴を上げている鍋が鎮座していた。
「これ、火入ってねえんじゃねえかな?」
「肉は焼いてから入れたから食中毒は問題ないんじゃない?」
「食べてみればわかるじゃないか。ほら、時貞行ってくれ」
「ちっ、仕方ねえ。オレが先陣を切る」
そんな風に時貞くん、未来さん、千時さんの三人が会話している。
と言うか、我が家にあんなでかい鍋はあっただろうか。
「驚いたか、少年。これは、私が作った……その名も『巨大焼却のホットポット』だよ」
「へ、へぇ……先輩が作ったんですね。大丈夫かな、安全とか」
「安心するといい。これまで、私がずっと使い続けてきたが30%くらいの確率で中の具材が黒焦げになるくらいしか問題ない」
それを世間一般では問題があるというのではないだろうか。
「そもそも、鍋を食う回数ってそんなにないと思うんですけど……実際はもっと高かったりするんじゃないですか?」
「試行回数の問題なら大丈夫だ。私は鍋しか作れないからね。毎日鍋を食べている」
まさかの彼女の食卓が我が家と全く同じだとは思わなかった。
なら、意外と30%と言う確率も正確なのかもしれない。
(いや、正確さより黒焦げの方が問題だな)
だが、見た感じは問題なさそうだ。
「それより、彼女とはどういう関係なんだい?」
「……し、時雨さんのことですか」
「それしかないだろ」
何だろう、先輩の視線が氷河期のように冷たい。
とりあえず当面の危機は全部乗り越えたはずなのにまた背筋が凍って来た。
そして、どうしようかと返答に困っていたら腕をつねられる。
「は、話しますから……とりあえず、つねるのはやめてください」
「よろしい。と言っても、彼女から大体は聞いてるから事実確認だと思ってくれ」
「……抜かりないですね」
つねられて痛い腕をさすりながら僕は先輩に全てを打ち明けた。
もちろん、裏切り者である和華さんのことは話していない。
「……ま、概ね彼女から聞いたのと同じだね」
「な、なら……!」
「まあ、無罪かな。男子寮の女の子を連れ込んでいることを知った時は驚いたけど、訳を聞けば少年らしいと思えるよ」
呆れた表情をした彼女だが、その中にはある種の信頼のようなものも見られた。
「ほら、暗い話は終わり。さっさと、食べよう。それで、今日の勝利を嚙みしめて明日も頑張ろう」
「……はい!!」
これまたどこから来たのかわからないリビングを占拠した丸テーブルに七人が座る。
こうなるまで、色々なことがあった。
積み重ねた努力だけじゃ足りなかった――とにかく、僕は幸運だった。
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
全員で挨拶を終えたら、始まるのは具材を巡る大乱闘だ。
みんながわいわいと箸で具材を掬う姿を見ると、何故だか涙が出そうになる。
「ほら、少年。早く食べないと今日は腹を鳴らして寝ることになるぞ」
「は、はい!!」
僕の代わりによそってくれたお椀を受け取り一口食べる。
(……味、しないなぁ)
今日も平和に終わった。
後書き
一体いつから勿美が生きていると錯覚していた?
よーく1話から見てみると、彼女が槃の幻覚だという伏線がそこら中にあったりします。
そもそも、彼女って槃以外と話してないんだよね。




