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決死人機兵装メサイア  作者: うどん米
アジア大戦編
20/36

第20話・決起のフォワード



 僕たち三人はあのまま一緒に登校した。

 そして、席に着き数分経つとチャイムと同時に先生もクラスに入って来た。


「あ、良かった。今年は全員いますね」

「……こ、今年は?」

「ふふっ、実は例年一日目の授業の後には少なくとも一人か二人は転校しているんです。そう考えると今年の4組は全員優秀ですね」


 正確には授業が始まる前にほとんど転校してしまったから母数が少ないだけなのだが、先生は少し上機嫌に見えた。


「今回は、連絡事項があります。と言っても有名なことですから皆さん知っているかもしれませんね。槃くん以外」

(……)


 何だろう、先生の言葉に棘を感じる。


(……もしかして、嫌われてる?)


 無知は罪。なんて言葉がある。

 実際、僕が無知な存在であることは間違いないけど、それでもちょっと心に来るものがある。


「4月24日、アメリカ軍基地跡地にて1,2,3年生の希望者を募り……人機兵装テクノイドを用いた。人機祭を開催します!!」

「おー!」

「おー」

「……」


 先生は盛り上がっているし、僕も興奮している。

 だが、未来さん時貞くんと徐々に反応が弱まっていく。


 対して、1、2,3組がからはとてつもない雄たけびが聞こえて来た。


「……と、と言うことでいないとは思いますけど三人の中で出場したいという子がいたら私に言ってください」

「先生」

「はい、時貞くん」


 彼が手を上げる。

 間違いない、アレを言う気だ。


「オレたちで出場する」

「はい、わかり……た、たち!?ちょ、ちょっと待ってくださいね……あ、あぁ未来さんと一緒に出るんですね。それなら、まあ……」

「違うぜ、先生。オレはここにいる槃と未来と一緒に大会に出場する」


 ついに言った。

 焦って表情が二転三転していた先生の表情が真剣なものへと変わる。


 それは、もはや彼を睨んでいるようにも思えた。


「……未来さんはともかく槃くんは本当に死にますよ」

「オレが死なないようにします」

「そういう話じゃありません。特に君ならよくわかっているはずですよ。シンクロ率に大差がある者の戦闘がどれだけ危険なことか」


 そのことは僕も薄々理解している。


 全ての始まりになったあの戦いのように覚醒した僕が易々と敵兵の首を引きちぎったあの構図のようなことが起こるのだろう。


「知っています」

「なら、なおさらです。彼が大会に出ることは私が絶対に……絶対に禁止します。いいですね」

「……それは、槃が雑魚のままだった場合ですよね」


 だが、彼は焦る様子はない。

 先生の反応は全て予想通りと言う感じだった。


「つまり、僅か二週間と少しの間で彼を1組の生徒たちと渡り合えるくらいに成長させて見せるという事ですか?」

「はい、オレならやれます」

「……」


 先生は彼の言葉に少し顎を手に当てて深刻に考える素振りを見せてから口を開いた。


「……わかりました。なら、私からも条件があります。一週間後、槃くんには私が指定した相手と模擬戦をしてもらいます。それに勝利出来たら彼の出場を認めましょう」

「本当ですか……!?」

「ええ、ですが……できなかった場合は、当然出場はできません」


 提示された条件は複雑な物じゃない。

 要するに僕が一週間でどうにか強くなって先生の用意した相手に勝てばいいだけだ。


「そして……」

「そ、そして?」


 だが、さらに先生の表情はより深刻そうなものに深まっていく。


「負けたら退学してもらいます」

「……ッ!?」

「先生!!待ってください、それは流石に……!!」

「未来。待て……」


 突然の発言に未来さんが異議を申し立てようと立ち上がるが、それを時貞くんが止める。


「何でよ、時貞くん!いくら何でも負けたら退学なんて重すぎるでしょ!!」

「だからこそだ。槃、オマエはどうしたい?」

「僕が……」

「そうだ、チームはオレの提案だ。だが、結局そのリスクを被るのはオレじゃない。だから、オマエが本当に後悔しない選択を選ぶんだ」


 そんなの今更一々思い返す必要もない。

 僕がここに来た理由も、ここまで来れた理由も何一つ変わっていない。


 退学は怖いけれど、逃げるわけにはいかない。


「戦います。僕が救世主になるために」

「……わかりました。では、一週間後の放課後に訓練ルームDでお待ちしています」


 そう言った彼女の表情は苦々しくもあり、少し懐かしむような瞳を僕に向けていた。



 こうして、一週間後に僕の退学を懸けた試合が決定したのであった。




 ***




 他の学校は知らないが、この学校は1年生の間はテクノイド系の授業しかない代わりに、常に4時間授業である。



 そのため、僕たちには常に自主性が求められている。



 だが、自堕落な生徒にとって放課後とは娯楽の時間となる。


 だが、僕たちのような生徒は放課後は――


「槃!足運びが遅い……!防御は点じゃなくて面で弾け!!」


 このような訓練の毎日となる。

 二日連続で訓練ルームDに入り浸っている僕たちは時貞くんに徹底的にしごかれていた。


 現在、僕は武装であるメイスと盾を装備し彼が持つアックスから身を守っている。


「っ、ここォッ!!」


 言われた通りアックスを正面からではなく盾で側面を狙うように体重を押し付けた。

 それによって、盾が破壊されることなく受け流せた。


 結果、盾とアックスの側面で競り合う形となった。


(よしっ!)

「今、よしって思ったな……!」


 と思ったのもつかの間、彼も斧に体重を乗せた。

 その瞬間、斧の側面で僕の盾が滑る。


 そのまま、上半身がひねられたなと思った時にはもう遅かった。


「いっだぁ!?」


 背中と腰辺りに鈍い衝撃、つまりは回し蹴りが命中したと思えばまた地面を転がる。

 だが、それでも彼への視線は切らさない。


 転がっている最中にも彼は迫ってきている。


(……向かって来ない?)


 すぐに立ち上がり、迎撃の姿勢に移行する。

 すると、今まで僕の立ち上がるまでの隙を狩るために突っ込んで来ていた彼が動かない。


(なんだ、僕に隙が無かったのか?いや、隙が無いと見せかけて、それをより大きな隙にしようとしているのか?)

「どうした、来ないのか?」


 そんな状況でも思考は欠かさない。

 常に、頭は回り続けている。


 明らかな挑発、易々と間合いに入れば待っているのは昨日のような手痛いカウンター


「……いや、行くよ!」


 それでも、選択したのは突撃だった。


 今日学んだのはとりあえず即死を避けるために盾の使い方だけだ。

 戦い方は特に何も教えられていない。


「また、突撃のつもりか?それじゃあ、昨日と何も変わらねえぞ!」

(……そうだ、そう思い込め)


 だが、突撃の途中に僕は前方に盾を構え自身の姿を大きく隠しながら前進する。


(おそらく、彼の頭の中には昨日の突撃フェイントが大きく印象に残っているはず……)


 だとすれば、彼が思っているだろう僕が取る動きは次の二つ。


 一つ、単純に突撃

 二つ、突撃間際にブレーキをかけてフェイント


 重要なのは、この二つが彼の同じ動きでは対処できないこと。

 必ず、僕が間合いに入る瀬戸際で何をするか判別しなくてはいけない。


(だが、こうやって大盾で僕を体を隠せばフェイントか突撃かの判断はより難しくなる)


 たとえ、突撃を前提にしてフェイントを見てから対処しようとしても間合いに先に入るのはこの盾だ。


「なんて思ってるんだろうなっ!」

「へ?」


 突然、盾に鈍い衝撃が来る。

 何と、彼は自身の唯一の獲物であるアックスを僕目掛けて投擲してきたのだ。


 それによって、盾の透明で向こうを見通せる部分が封じられる。



 当然、視界を確保するため盾の外に顔を出すのだが――


「そんな突撃をしてくるなら、そもそも間合いに入らせるわけねえよな!」

「うわぁぁぁ!?」


 眼前にはアックスを投げると同時に走り出していた彼がドロップキックの体制で待ち構えていた。

 避ける間もなく、情けない叫びと共に盾とメイスから手を放し機体は吹っ飛んでいくのだった。



祝400pv!!

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