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決死人機兵装メサイア  作者: うどん米
ディストピア社会主義編
10/16

第10話・転換のソリューション



 4月4日14時14分


「う、あぁぁぁぁ!!」


 僕は再び目を覚ました。

 だが、今度はトビウオの如く飛び上がることもなく、叫び声をあげるだけで済んだ。


「……どうしたんだい?」


 先輩の反応もおおむね同じで、相変わらず僕をおかしなものを見る目で見ている。


「……いえ、何でも。怖い夢を見ただけです。少し、外に出てきますね」


 だが、戻って来た僕はすぐさま行動に移すために工房を後にするのだった。


「おい、ちょっと……」

「……ごめんなさい」


 その謝罪は前のループでグズグズしていたことへか、何も話さずここを離れるための物だったかもう僕にはわからなかった。




 ***




 工房を後にした理由は単純であそこに盗聴器の類でも仕掛けられているのだと推察したからだ。

 もっと言うなら先輩自身が持っているかもしれない。


「……」


 そして、当の僕はそっと近くのベンチに腰かけていた。


(……僕はどうすればいいんだろう)


 敵が来たらメサイアで迎撃すればいいなんて甘い考えだった。

 あの覚醒状態なら、少しくらい反撃ができるかと思ったけど文字通り手も足も出なかった。


 その時、項垂れている僕に声がかかる。


「おーい、めぐるちゃん。どうしたの?」

「……勿美なみ。何でもない……そっちこそ、どうしたんだよ。こんなところで」


 見上げるとそこには心配そうに僕の顔を覗き込む勿美が立っていた。


「私は、散歩かな。でも、ここに行けば槃ちゃんに会える気がしたから」

「……そっか」

「ねえ、本当に大丈夫?苦しいことがあるなら私に言って……私、何でも力になるから」


 その言葉は本来なら今の僕にはとても暖かなものに聞こえるだろう。


 だが、僕の目にはいつかのループで僕の行動を全肯定してくる彼女の幻覚が重なってしまった。


「だ、い……大丈夫。本当に、大丈夫!!ほ、ほらもうすぐ授業が始まるから友達ができるか心配だなぁ……って思ってただけなんだ」


 だから、僕は精一杯の作り笑顔と共に彼女を心配させない道を選んだ。


「あーそうだね……槃ちゃんって友達作るの苦手だもんね。大丈夫!いざとなったら私が力になるから」

「助かるよ。そうだ、勿美こそ明日の準備は終わったの?今日、チェックインしたばかりなのに」

「あっ……そうだった。私、もう戻るね」


 そう言って彼女は焦りながらその場を後にした。


「……明日か」


 それが訪れた時、果たしてここの生徒は生き残っているのだろうか。

 いくら襲撃されたとしても少なくとも僕が諦めない限りは明日はやってこないし、ループも終わらない。


 そんなことを想いながら僕は再び足元を見ながら項垂れ始めた。



 気づけば時刻は15時45分。

 前のループでは爆撃が始まり出した時間帯だ。


 だが、空を見上げてみてもそれらしい飛行物体は見当たらない。



 間違いなく、襲撃者は時間で来るのではなく何か条件があるのだとこれでわかった。


 その時、聞き覚えのありすぎる一言が耳に入った。


「やっほー!」

「……あぁ」


 その挨拶は何時だって変わらないんだなと思いながら顔を上げる。

 確か、前回のループでも同じくらいの時間で炎を背景に彼女は現れていた。


 おそらく、元からこの時間はここら辺をうろついていたんだろう。


「そんな所で項垂れてどうしたの?あたしでよかったら、話を聞くよ」

「……いや、いいよ」


 さっきまでの幼馴染への対応はどこへやら、僕はつい冷たい対応をしてしまう。


「いや、絶対に良くないね。あたしは、時岡ときおか 時雨しぐれ。今は寮の手伝いをしているんだ。君は無涅むね めぐるだろ?」

「え、何で知ってるの?」

「寮長の人から新入生で一人だけチェックインを済ませていない人が校内にいるって言われたから探しに来たんだ。ほら、君の写真」


 そう言って見せてきたのは僕の学生証にも使われている証明写真だった。

 と言うか、彼女がうろついていた理由は僕を探しているからだったようだ。


「それで、何があったの?あたしに話してみてよ」


 彼女は僕の正面から同じベンチの隣に移動し、距離を詰めてくる。


「……大丈夫。本当に、大丈夫!!ほ、ほらもうすぐ授業が始まるから友達ができるか心配だなぁ……って思ってただけなんだ」


 それに対抗するために僕がしたのは再び力いっぱい笑顔を作り、先ほど一言一句変わらない誤魔化しであった。


「は……?」


 だが、相手の反応は底冷えするような一言だった。


 すると彼女は眉を顰め、次の瞬間彼女の右腕が目にも止まらぬスピードで降りぬかれ僕の両頬を手で鷲掴みにした。


「そんな……そんな、今にも死にそうな顔で大丈夫って言われて信じるわけないだろ!!」

「……っ」


 これまでのループを含めて初めての彼女の姿を僕は見た。


「そんな、世界で一番不幸なのは自分だみたいな顔をして項垂れて、クヨクヨしているくらいならあたしに話してよ。絶対に力になるから」

「……どうして、初対面だよ」


 そう言うと彼女の目が鋭くなると同時に頬を鷲掴みにしている指の力が強くなる。


「初対面でも何でもあたしの前でそんな顔されると放っておけないんだよ」

「本当に……本当に、時雨さんは優しいね」


 これは、これまでの絶望の涙ではない。

 人の優しい心に触れたことによる涙だ。


 その姿を見た彼女は何も言わず掴んでいた頬を放してくれた。


「……じゃあ、一つだけ聞いてもいい?」

「もちろん。相談なら何でもウェルカムだよ」


 彼女の軽い言葉遣いに今は笑みがこぼれる。

 本当なら誰にも相談するつもりはなかった。


 一体何がトリガーになっているのかよくわかっていないからちょっとした会話が敵を呼び寄せる恐怖があった。

 でも、彼女の優しさに報いる為ならもう一度くらいループしてもいいかなと思ってしまった。


「絶対に勝てない敵がやってくるってなった時、時雨さんならどうやって勝つ?」

「絶対に勝てない敵?それが、これから来るってこと?」

「い、いや……物の例え、ゲームの話だと思ってくれればいいよ」


 妙に察しの良い彼女に少し冷汗を書いたがともかく回答を待つ。


「うーん、あたしだったら戦わないかな」

「戦わない?」

「うん、負けたくないからね。絶対に勝てないならそもそも戦わず、レベルを上げて勝てるようになってから挑むよ。まあ、負けイベだったら意味ないけど」


 その時、僕の頭に電流が走った。


 発想の転換である。

 僕は、なぜか最初から絶対に勝てない敵に挑むつもりで考えていた。


 だが、タイムリープをして未来の出来事を知っている僕なら未然に防ぐことだってできるはずだ。


(……でも、どうすれば)


 こういう時は先輩の力を借りたいところだが、下手な会話は襲撃者たちを呼び寄せる可能性がある。




 いや、ここまでで手がかりはあったはずだ。

 襲撃者を呼びよせている何かが――


『……それなんだが、あの後確認したんだが迎撃システムは人為的にダウンさせられていたことがわかった』


 その時、頭を中を通って行ったのは二つ前の時間で話した先輩との会話だった。


「裏切り者……」


 最初の襲撃もそうだった。

 人為的なシステムダウン、それが初日以降にも起こっていたとしたら――


 だとすれば、今までのループで襲撃者たちに迎撃システムが作動しなかったのも頷ける。


「でも、これ何の話?」

「ありがとう、時雨さん。やっと僕のやるべきことが見つかった」


 さっきまでのしけた面はどこへやら僕の瞳には生気が灯っていた。

 僕の勝利条件は裏切り者を見つけ出し、襲撃者を呼ばせないこと。


 もちろん、思い当たる人はいない。


「もう、クヨクヨしない。僕は、決して諦めない。必ず、救世主になって見せる」

「そ、そう?救世主メシアには、明後日からなるんでしょ?」

「パイロットの方じゃないって……文字通りだよ」


 その誓いは真っ暗闇の世界で一筋の光が入って来たような、希望の始まりを予感させた。



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