第1話・救世主誕生のトリガー
SFって伸びにくいけど書いてくぞー!
神は死んだ。
だけれど、僕はそうは思いたくない。
なぜなら、この世界のどうしようもない不条理を、絶望を、悲しみを、誰のせいにすればいいかわからなくなるからだ。
正直言えば、何もかもを神のせいにしたい。
さて、理不尽にも神に責任を押し付けた僕の自己紹介から始めようか。
僕の名前は無涅 槃、救世主を目指している普通の高校一年生だ。
そして、今日は待ちに待った僕が救世主になる日でもある。
そう、僕は2044年の4月4日の今日、国立人機西教育学校に入学する。
この学校は、ご存じの通り人機兵装を動かすパイロットと作成を行うエンジニアの育成を行う名門中の名門なのだ。
テクノイドというのは、2030年に起きた技術革命によって生み出された巨大兵器の総称でそれを動かすパイロットを人々は救世主と呼んだ。
だが、問題としてこいつを動かすためにはシンクロナイズと呼ばれる脳の動きを機体に反映する装置が必要になるのだ。
それの何が問題かと言うとシンクロナイズを扱う上で最も適しているのがちょうど高校生くらいの脳という事なのだ。
結果、政府は救世主予備隊法を施行し高校生になるものは等しくテクノイド関連の学校に進学することが決まった。
そう言うこともあって現在、普通の高校は存在しない。
「……ヤバい、ヤバいってぇ!!」
集合時間は8時30分、現在時刻8時25分――
そして、僕は現在進行形で入学式に遅刻しかけている。
これも出来れば神様のせいにしたい。
子供なんてほとんどいない田舎から何度も電車を乗り換えて、やっとここまで来たと言うのに最後の最後で――いや、最初の最初で寝坊したことによってこの様だ。
「急いで、槃ちゃん!!もうすぐ、入学式始まっちゃうよ」
「……どうやら、ここまでみたいだ」
前を走る友人、しかし僕と彼女の間には赤信号と言う名の致命的な境があった。
ちらっと時計を見ると、既に僕は間に合わないだろう。
「な、何言ってるのー!」
「よく考えたら、僕の寝坊が全ての原因なんだ……だから、勿美だけでも行ってくれ!!」
「槃ちゃん!……うん、わかった!」
そう言い残し、彼女は入学式に向かって行く。
校舎は目の前だと言うのに、届かない。
(あー!!始発から行けばよかった……)
そんな何とも言えない気持ちを抑え込みながら蹲り昨日の己を呪うのだった。
「終わった……」
信号が変わり走り出したが、すぐさま遅刻を告げる鐘が鳴る。
8時30分
スーッと血の気が引いていくのがわかった。
――ともかく、僕は遅刻をしたと言うことだ。
一周回って足取りは軽くなり、長い階段もへっちゃらになっていた。
「……ここどこ?」
完全に迷った。
案内には1年4組の教室に集合と書かれているが、それらしい建物は見当たらない。
「もう、体育館行こうかな」
ならば、入学式が始まっているであろう体育館に向かおうとしたその時だった。
「そっちは体育館じゃないぞ。少年」
突然、背中側から声がかかる。
振り向くと少し寝ぐせのついたぼさぼさ髪で、僕とは違ってギアの模様に青色の線があしらわれた制服の女性が立っていた。
「え、えっと……?」
「ああ、突然声を掛けてすまないな。私の名前は明時 無無。エンジニア科の二年生だ」
「は、はい。僕は無涅槃と言います。よろしくお願いします!」
「よろしく」
一瞬、その雰囲気からとっくに大人なのかと思っていたが一つしか違わないことに驚いた。
エンジニア科、主にテクノイドの開発について学ぶ学科で優秀な生徒には工房も与えられ実際にオリジナルのテクノイドを作成する場合もあるらしい。
「さて、少年。新入生だろ、こんなところで油を売っていていいのかな?」
「うぅ、恥ずかしながら寝坊しまして……道にも迷って……今から体育館に行こうと思ってたんです」
「そうかそうか、ところでうちの学校は遅刻者に厳しくてね。今から行っても、きっと入学式には出席できないどころか今日は丸一日説教地獄だろう」
「え……」
文字通り血の気が引いていくのがわかる。
それどころか、一日中説教を受けている自分が想像出来てしまい余計に気分が悪くなってきた。
「そこで、提案だ。少年、私の工房に来ないか?」
「いいんですか!?」
「ああ、良ければ私の開発したテクノイドも見せてあげるよ。何、遠慮する必要はない……少し、実験に付き合ってもらうだけだからな」
「ならぜひ……!!って、実験?」
「気にするな!早くついてこい、少年」
そう言って先輩はこちらを振り向かず走り出していった。
8時45分
僕もそれについていくと、少し古ぼけたこの時代には珍しい木造の校舎にたどり着いた。
そのままついて行き、校舎の一部屋に入った。
すると、何やら端末をいじりながら僕に話しかけてくる。
「ところで、少年。君はどうしてこの学校に来たのかな?」
「僕は……僕は、救世主になりたくてこの学校に来ました」
「救世主……ああ、そりゃそうだろうね。ここは、パイロットを育成する学校なわけだし」
「いえ、僕は救世主じゃなくて、救世主になりたくてこの学校に来ました」
そう言うと彼女の視線は途端に不思議なものを見る目に変化した。
「救世主って……本当の文字通りの救世主かい?」
「はい、変……ですかね?」
「……いいや、変じゃないさ。むしろ、感心したよ。今時そんなことを真面目な顔で言うやつはいないからね。ほら、足元に気をつけるんだ」
そう言うと、途端に地面が揺れ出し全身を浮遊感が包んでいく。
「これ、エレベーターだったんですか!?」
「ああ、私の工房へ一直線だ」
部屋は丸ごとエレベーターへと変わり降下していく。
8時54分
「ようこそ、私の工房へ」
エレベーターの扉が開く。
外見が木造の校舎とは思えないほど重厚な壁、空中にウィンドウが開き何やら計算しているのか落ち着きなく数値が変化している。
「……」
普段の僕なら歓声の一つでも上げたくなる光景であったが、僕の視線はある一点に注がれたまま動かなかった。
何故なら、この工房の中央にはあるテクノイドが鎮座していた。
「先輩、これって……」
すぐその美しさに目を奪われた。
白を基調とした装甲は冷たいLEDの光を静かに返し、彫像のように佇んでいる。
穢れを嫌うその色は、まるで御伽噺に出てくる救世主を目にしているようだった。
「これが、私が開発した理論上最強の人機兵装メサイアだ」
「メサイア……」
その名を聞いた瞬間、世界が遠くなったような気分になった。
9時00分
だが、それはメサイアの名を聞いて感動したというわけではない。
「どこか掴まれ、少年!!」
「うわぁっ!?」
突然、地面が揺れ天井が揺れていく。
揺れは、横に、縦に、無秩序に跳ねまわり、僕は工房内の手すりに摑まる。
やっと揺れが収まったところで彼女が声を上げる。
「っ!ただの地震じゃないな。外の映像を出せ!」
彼女の声に反応して空中に何個かウィンドウが開く。
「……え?」
赤かった。
ウィンドウに映った映像には音声は入っていなかったがその状況はすぐにわかった。
今のは、これは単なる地震ではなくて何者かの攻撃だった。
「今日は、入学式なのに……警備はどうなってる!?」
外には何機かテクノイドが降り立ち、学校を破壊していく。
当然、それは入学式が行われている体育館でも例外なく破壊しつくされている。
「新入生は……?」
「……全滅ね」
「っ、はぁ……はぁ……」
呼吸が荒い。
あそこには勿美が先に行っていたんだ。
それが何を意味するか、理解するまで数秒かかった。
さっきまで笑い合っていたのに、さっきまで話していたのに、気づけば僕は唐突な現実に頭が置いて行かれている。
頭が現実に追いつく前に、現実は圧倒的な速度で進んでいく。
「……っ、補足された!屈め、少年!!」
先輩の言葉に従って反射的に頭を下げる。
すると、次の瞬間にはさっきまで僕の頭があった場所に瓦礫が飛んできていた。
さっきまで平穏であったこの工房の天井には大穴が開けられていた。
「くそ、狙いはメサイアか。ここまで下りてくるつもりだな」
「一体、何が……?先輩!!」
呆然としていた頭がやっと現実に追いついてきた時、彼女の異変に気付いた。
さっきの衝撃で僕はかろうじて瓦礫を避けることができた。
しかし、より被害の大きい場所の近くにいた彼女は無事ではなかった。
瓦礫によって下半身は潰され、血が滲みだしている。
「……もう、これしかないか」
覚悟を決めた声色でつぶやき、僕を見る。
「少年、メサイアに乗れ」
「……え?」
何が起きたのか一瞬わからなかった。
「頼む、もうそれしかない」
「……そんな、僕が?」
僕が、メサイアに乗る。
客観的に見れば、この場に乗れる人間は一人しかいない。
だが、言われた本人は目まぐるしく変化し続ける今に対応できず呆然としていた。
「もう一度言う。槃、メサイアに乗ってくれ……もう、それしか方法がないんだ」
「うっ……」
「救世主になるんだろう!!」
息も絶え絶えな彼女から絞り出すように出された一言が僕を現実に引き戻した。
僕は、救世主になるためにこの学校に来た。
なら、混乱する必要も、悩む必要も、迷う必要もあるはずがない。
「乗ります。僕が……僕が、乗ります!!」
「いい返事だ……コックピットは開けておいた。入ったらすぐに閉めるから、シンクロナイズをつけて合図が来たら赤いボタンを押してトリガーを引くんだ」
「はい!!」
直後、二度目の爆発。
おそらく、テクノイドが降下するための穴を作っているんだろう。
僕は、恐怖を拭い去りながら立ち上がりコックピットに勢いよく入り込んだ。
中は、ちょうど僕一人が入れるくらいの大きさで不思議と馴染の棺桶にいるような気分になった。
そして、操縦するためのシンクロナイズを頭に取り付ける。
「シンクロ率……50%!?起動ギリギリじゃないか」
テクノイドの最低起動シンクロ率は50%
そんなギリギリのシンクロ率に思わず苦笑を漏らしながら、彼女は最後の段階に入る。
「メサイア……お願い。動いて!!」
潰れた下半身を引きづりながら彼女は起動パスを入力した。
『コード認証、シンクロ開始……成功しました。メサイア改、起動完了』
「これなら!!行くんだ、少年!救世主のトリガーを引け!」
彼女がそう言うと同時に襲撃者のテクノイドが降下完了し、彼女の体が完全に押しつぶされる。
「っはい!!」
赤いボタンを押し、何も知らずにトリガーを引いた。
これは、メサイアが発進するためのものではない。
この行為は、神への挑戦であり、僕の死のトリガーでもある。
「ひっ」
一つわかるのは、このトリガーを引いたとき僕は突然動き出した両脇の金属の板に押しつぶされて生涯を終えたことだ。
え?あらすじと違うって?いやいや、嘘は言ってないよ。
この先もちゃんと友情!努力!勝利!!……ついでに悲劇!すべてが揃っているからね!!
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