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戦乙女の開花、緑のオアシス


地下都市レインコート、防衛隊司令部。

大型化されたメインスクリーンには、ノイズ混じりの不鮮明な画像データが表示されていた。

かつては薄暗かった司令室も、今は反応炉からの潤沢な電力によって真昼のように明るく、無数のオペレーター端末が稼働音を響かせている。

しかし、その場に流れる空気は反応炉の熱気すら凍りつくほどに冷たかった。

「……これが、広域観測レーダーが捉えた『新しい脅威』か」

円卓の中央で防衛隊長のレンが低い声で呟いた。

彼女の左目に装着された光学観測用スコープが、スクリーン上の影を冷徹に解析している。

「はい」

情報管制官のローズが、緊張した面持ちで報告を行う。

「東方400キロ地点、我々と新しく交流を始めたアンドロイドと人間の集落からのSOSと共に送られてきたデータです」

スクリーンに映っているのは、炎上する集落の残骸と、その中を徘徊する異様な人型兵器の姿だった。

全高10メートル。

従来の主力機『ピースウォーカー』を思わせる骨格だが、そのシルエットはより細く、鋭角的で生物的な凶暴さを秘めている。

「コードネーム、『P-90 ナインティ』。……生存者の証言によれば、この機体は物資の略奪や拠点の制圧を目的としていません」

ローズが言葉を詰まらせ、そして告げた。

「人間を……ただ人間のみを、執拗に殺害することに特化した殺戮マシーンだと」

「人間を殺すためだけの機械……」

その場に同席していた私は、拳を握りしめた。

鉄仙のような「守護者」としての歪んだ信念も、鬼灯のような「導き手」としての傲慢な哲学もない。

そこにあるのは、純粋な悪意と効率化された殺意のみ。

機械軍は、なりふり構わず人類という種を根絶やしにするつもりだ。

「看過できんな」

レン隊長が立ち上がり、レインコートを中心とした広域地図を指し示した。

「シェルター204とイエローシューズの復興。そして周辺集落との連携。……我々が守るべき領域はこの数ヶ月で劇的に拡大した。今の防衛隊の戦力だけでは、広大なエリアをカバーしきれん」

レインコートは今や、この地域における人類生存圏の「心臓部」となっている。

心臓が止まれば、繋がった全ての血管(集落)が壊死する。

だが、心臓だけを守っていても、手足(周辺地域)から腐っていけば、やがて本体も死に至る。

「リリィ、貴官はどう思う?」

レン隊長の黒い瞳が私を射抜く。

「……打って出るべきです」

私は即答した。

「座して死を待つより、脅威の源を断つ。……攻性防御こそが、今のレインコートに必要な生存戦略かと」

「うむ。同感だ」

レン隊長は頷き、その長身を揺るがすような力強い声で宣言した。

「組織を抜本的に改革する。防衛隊の人員を大幅に拡充し、同時にレインコートの外へ遠征可能な『独立混成即応部隊』を設立する。……リリィ、貴官にはその中核を担ってもらうぞ」

「了解。……この身が砕けるまで」


翌日。

レインコート中に、けたたましいサイレンと共に緊急放送が流れた。

防衛隊の新規隊員募集。

それも、都市内の治安維持ではなく、荒野へ出て機械軍と戦う「即応部隊」への志願者募集だ。

中央広場に設置された受付カウンター。

私は、正直なところ人が集まるとは思っていなかった。

平和になったレインコートで、安全な生活を捨ててまで死地へ赴く物好きなど、そうはいまいと高を括っていたのだ。

だが、その予想は心地よく裏切られた。

「おい、押すなよ! 俺が先だ!」

「志願票の書き方はこれでいいのか!?」

広場は、山のような人だかりとなっていた。

受付を担当するマリーが「ひぇぇ……ちょっと待ってください、順番に、順番にお願いしますぅ!」と悲鳴を上げている。

列に並んでいるのは、歴戦の野良アンドロイドたちだけではない。

ツナギを着た工場の作業員。

農耕プラントで働いていた若者。

かつてシェルター204から命からがら逃げてきた避難民。

そして、噂を聞きつけて他地域から流入してきた「人間」たち。

「……正気か?」

私は列の先頭にいた、まだあどけなさの残る人間の少年に声をかけた。

「君のような子供が来るところじゃない。ここは軍隊の受付だぞ」

少年は、私を睨み返してきた。

その瞳には、恐怖ではなく、燃えるような怒りと決意が宿っていた。

「子供扱いしないでください! ……俺の故郷は、機械軍に焼かれました。逃げて、隠れて、ここでようやく温かいご飯を食べられた。……だから!」

少年は拳を震わせた。

「もう逃げたくないんです! この街を、俺たちに良くしてくれたアンドロイドのみんなを守るために、俺も戦いたいんです!」

その言葉に、周囲の志願者たちも頷く。

「そうだ! 守られるだけの弱者でいるのはもう御免だ!」

「俺たちの手で、未来を勝ち取るんだ!」

彼らの目。

それはかつて、私の友であったスバルが持っていたものと同じ、「強き光」だった。

人間も、アンドロイドも関係ない。

自分たちが勝ち取ったこの平和な場所を、理不尽な暴力から守り抜きたいという、根源的な意志。

「……フッ、いい面構えだ」

私は口元を緩め、彼らの志願書を受け取った。

「合格だ。……ただし、覚悟しておけ。ここから先は地獄の一丁目だぞ」


それからの3ヶ月間。

レインコートの第3訓練演習場は、文字通り「地獄」と化した。

集まった志願兵は総勢150名。

人間とアンドロイドの混成部隊を、即戦力の兵士へと叩き直すための、極限の新兵教育ブートキャンプが始まった。

教官を務めるのは、私(戦闘・戦術)、マリー(整備・工学)、そしてローズ(通信・情報)の3名だ。

「止まるな! 止まれば死ぬぞ!!」

泥濘の中を匍匐前進する訓練兵たちの頭上スレスレに、私はアサルトライフルを乱射した。

空砲ではない。実弾だ。

少しでも頭を上げれば、その頭蓋が吹き飛ぶ。

「ひぃぃぃッ!?」

「マ、マジで撃ってやがる……!」

「戦場じゃ機械軍は待ってくれないぞ! 弾丸と恐怖を友達にしろ! 足が千切れても這って進め!」

私は拡声器片手に怒号を飛ばす。

私のシゴキは、相手が生身の人間だろうと、頑丈なアンドロイドだろうと容赦はない。

甘えは死に直結する。

彼らを死なせないための唯一の方法は、彼らを「死なない生物」へと作り変えることだ。

特に重視したのは、「人間とアンドロイドのバディ(相棒)システム」だ。

脆いが柔軟な判断力を持つ人間と、頑丈だが融通の利かないアンドロイド。

互いの弱点を補い、背中を預け合う連携を、骨の髄まで叩き込む。

「404アンドロイド! お前のバディが撃たれたらどうする!」

「はッ! 盾になります!」

「違う! 盾になりつつ反撃しろ! 守るだけじゃジリ貧だ、殺せ!」

一方、隣の格納庫からは、普段の温厚さからは想像もつかないマリーの怒声が響いていた。

「あんたバカァッ!? トルクの締め付けが甘いって何度言ったら分かるのよッ!!」

マリー教官は、自分の身長ほどもある巨大スパナを振り回し、整備不良の訓練生(人間)を追い回していた。

「ひぃぃっ! すみませんマリー教官! 次から気をつけます!」

「次なんてないの! その一本のボルトが緩んだせいで、戦場で機体が動かなくなったらどうするの!?」

マリーは訓練生の胸ぐら(パワードスーツのハッチ)を掴んで詰め寄った。

その碧眼は本気で怒っていた。

「あんたが死ぬだけじゃない、あんたを信じて乗ってるバディも死ぬんだよ! 機械を愛しなさい! オイルの一滴まで神経を注ぎなさい! それができないなら、今すぐここから出ていけぇッ!」

そして、シミュレーションルームでは、ローズによる冷徹な情報処理訓練が行われていた。

そこは静寂の地獄だった。

「……遅いわ。判断に0.5秒のラグがある」

ローズは優雅に紅茶(冷却水)を啜りながら、淡々と告げる。

「その0.5秒で、貴女の小隊は全滅したわ。……やり直し」

「くっ……! もう一度! もう一度お願いします!」

オペレーター志望の女性が、涙目で食らいつく。

モニターには、絶望的な数の敵影と、複雑怪奇な戦況図が表示されている。

「戦場の情報は水物よ。鮮度が落ちた情報はゴミと同じ。……もっと優雅に、かつ迅速に処理なさい。私の部下になるなら、脳みそから煙が出るまで考え続けなさい!」

戦闘、整備、情報。

三方向からの徹底的なシゴキ。

最初の1週間で、1割が脱落した。

1ヶ月で、さらに1割が逃げ出した。

だが、残った者たちは、日を追うごとに目つきが変わっていった。

ただの市民だった若者が、銃の重みを知る兵士へ。

ただの作業用機械だったアンドロイドが、仲間を守る盾へ。

この価値のない世界で生き抜くための「牙」と「爪」が、確実に研ぎ澄まされていく。


そして3ヶ月後。

訓練最終日。

演習場には、泥とオイルにまみれ、傷だらけになりながらも、背筋を伸ばして整列する100名の精鋭たちがいた。

人間もアンドロイドも、その顔には揺るぎない自信と、隣に立つ仲間への信頼が宿っていた。

「……よく残った」

私は壇上から彼らを見下ろした。

厳しい訓練を耐え抜いた彼らの姿は、私がレインコートで見てきたどんな光景よりも美しかった。

「貴様らはもう、守られるだけの弱者ではない。……レインコートの誇り高き牙だ」

広場に、割れんばかりの歓声と、大地を踏み鳴らす音が響き渡った。


数日後。地上搬出ゲート前。

真新しい塗装が施された、12機のピースウォーカーと多数の装甲戦闘車両が整列していた。

その装甲には、レインコート防衛隊のエンブレムと共に、新しい部隊章が描かれている。

剣に巻き付く、白百合の華。

「只今をもって、独立混成即応部隊【リリィブロッサム】の設立を宣言する!」

レン隊長の声が響き渡る。

部隊長には、私が任命された。

副隊長兼整備主任にマリー。

情報管制主任にローズ。

そして、私たちが鍛え上げた精鋭たち。

「部隊名……リリィブロッサム(百合の華)か」

私は自分の機体『レイニーブルー』のコクピットで、少し顔を赤らめた。

「レン隊長も、なかなか恥ずかしい名前を付けてくれる」

『あら、素敵じゃない。リリィにぴったりよ』

ローズが通信越しに茶化す。

『そうだよ! 私たちの華、咲かせてやろうよ!』

マリーも興奮気味だ。

「……ふっ、違いない」

私は気を取り直し、全機に通信を開いた。

「リリィブロッサム、これより初任務を開始する!」

最初の任務は、東方300kmに位置する大都市【メビウス303】への遠征。

そこは、ナインティの目撃情報が多発しているエリアであり、新型パワードスーツの詳細情報を得るための重要拠点だ。

「ゲート開放! 全機、発進!」

ブォォォォォン!!

エンジン音が重なり合い、地響きとなる。

見送る市民たちの歓声を背に、私たちは荒野へと踏み出した。

かつては恐怖の対象だった「外の世界」。

だが今の私たちには、それを切り拓く力がある。




レインコートを出発して数日。

リリィブロッサムの車列は、太陽が照りつける荒野を東へと進んでいた。

先頭を行くのは、私が駆る指揮官機『レイニーブルー』。

それに続くのは、真新しい塗装が施された11機のピースウォーカーと、物資や歩兵(人間とアンドロイドの混成部隊)を載せた6台の装甲戦闘車両だ。

巻き上げる砂煙は巨大な龍のように棚引き、私たちの進軍を荒野の生き物たちに知らしめていた。

「隊列、間隔を詰めすぎだ。第3小隊、もう少し開けろ。地雷原があったら一網打尽にされるぞ」

『はっ! 了解です、隊長!』

通信機から返ってくる新兵の返事は、緊張こそしているものの、訓練通りの機敏さがあった。

3ヶ月前までは素人だった彼らが、今は一糸乱れぬ隊列を組んでいる。

その事実に、私は微かな誇りを感じていた。

「順調ね、リリィ」

後方の指揮車両に乗るローズから通信が入る。

「このペースなら、予定通りあと2日で目的地に到達できるわ。……今のところ、機械軍の襲撃もなし。不気味なほど静かよ」

「嵐の前の静けさ、というやつかもな。警戒は緩めるな」

私はモニターの計器を確認しながら答えた。

「それより、マリー。車両の調子はどうだ?」

『んー、バッチリだよ!』

整備主任として最後尾の回収車に乗っているマリーの明るい声。

『この辺りは気温が高いから、ラジエーターの出力だけ少し上げてる。みんな、オーバーヒートに気をつけてね!』

私たちはかつての世界の残骸、崩れた高速道路の高架や、錆びついた鉄塔の墓場を横目に進み続けた。

世界は灰色だ。

空は鉛色に近く、大地は枯れ、風は乾いている。

それがこの時代の「当たり前」だった。

だが、レインコートから東へ150km地点。

険しい岩山を越え、盆地へと続く峠に差し掛かった時、その「当たり前」は覆された。


「……おい、あれを見ろ」

「なんだ、あれは……?」

「故障か? 視覚センサーのバグか?」

前方の視界が開けた瞬間、通信回線がざわめきで満たされた。

私もまた、言葉を失い、レイニーブルーの足を止めた。

眼下に広がる巨大な窪地。

周囲を高い山々に囲まれ、外界から隔絶されたその場所には、信じられない色彩が溢れていた。

緑。

圧倒的な、生命の緑。

「森林……?」

灰色と茶色の世界に、まるで絵の具をぶちまけたかのように、鬱蒼とした木々が海のように広がっている。

そしてその中心には、空の色を吸い込んだような、深く蒼い湖が水を湛えていた。

「嘘みたい……。こんな場所が、まだ残っていたなんて」

ローズの感嘆の声。

そこは、旧時代の環境保全ドームの跡地だったのだろうか。

ドーム自体はとうの昔に崩壊しているが、周囲の山脈が天然の防壁となり、放射能や汚染物質、そして機械軍の侵攻から、この小さな生態系を守り抜いていたのだ。

奇跡的に残された、太古の地球の記憶。「森林水源地帯」。

「……全機、一時停止。このエリアで休息をとる」

私は震える声で命令を下した。

「警戒レベルを下げろ。……少しの間、戦争を忘れよう」


車列を湖の畔まで下ろし、私たちは機体から降りた。

ヘルメットを脱いだ瞬間、鼻孔をくすぐったのは、嗅いだことのない香りだった。

オイルと鉄錆の匂いではない。

湿った土、草いきれ、そして甘い花の香り。

それは、私のデータベースにある「森林」という単語に紐付けられた情報よりも、遥かに濃密で、力強い「生」の匂いだった。

「すごい……! 見てリリィ、水が透き通ってる!」

マリーが子供のようにはしゃぎながら、湖の水際に駆け寄った。

彼女が手を浸すと、波紋が広がり、水底の小石がキラキラと揺らめくのが見えた。

「飲めるの?」

「待って、簡易検査するわ」

ローズが携帯端末をかざし、数秒後、目を見開いて頷いた。

「……信じられない。汚染レベル、ゼロよ。ろ過なしで飲めるわ」

「やった!」

マリーが両手で水を掬い、ゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。

「ぷはーっ! 冷たくて美味しい! ねえリリィも飲みなよ!」

「ああ」

私も水辺にしゃがみ込み、水を口に含んだ。

冷たさが喉を通り抜け、身体の芯まで染み渡る。

ただの水だ。合成栄養剤も、エネルギー添加物も入っていない。

だが、それは今まで飲んだどんな高級な燃料よりも美味く感じられた。

周囲では兵士たちが木々に触れ、木漏れ日を見上げている。

「これが木か……硬いんだな」

「見ろよ、虫がいるぞ!」

「写真撮っていいですか? 故郷の妹に見せたくて」

人間もアンドロイドも、初めて見る「本物の自然」に圧倒され、そして癒やされていた。

殺伐とした世界に生きる私たちにとって、この光景はあまりにも眩しく、そして儚く見えた。

「……世界は、死んでいなかったんだな」

私が呟くと、ローズが隣に並び、静かに頷いた。

「ええ。私たちが知らないだけで、地球はまだ息をしている。……機械軍が『リセット』しなくても、命はこうして巡っているのよ」

「……そうだな」

私は湖面に映る自分の顔、機械の身体を見つめた。

この美しい場所には、私たちは似つかわしくない異物かもしれない。

だが、この美しさを守るために戦うことはできる。

「データを記録しておけ。この水源は、いずれレインコートにとっても重要な資産になる」

「了解。座標データと環境サンプル、しっかり保存しておくわ」

私たちは束の間の安らぎを享受し、水と、そして「希望」を補給した。

この緑を守るためにも、私たちは東へ進まなければならない。

後ろ髪を引かれる思いで、私たちは再びピースウォーカーに乗り込んだ。

「行くぞ、リリィブロッサム! 目指すは東、メビウス303だ!」


森林地帯を抜け、さらに東へ150km。

景色は再び、見慣れた荒涼とした岩場へと戻った。

だが、私たちの士気は高かった。

守るべき世界の美しさを知った兵士の目は、以前よりも強く輝いていた。

そして、出発から3日目の夕刻。

私たちは目的地の目前にある、小高い丘の上に到達した。

「全機、停止」

私はレイニーブルーを丘の頂上に止め、メインカメラのズーム倍率を上げた。

夕日が沈む地平線の向こう。

巨大な影が、黒々と浮かび上がっていた。

「あれが……」

要塞都市【メビウス303】。

レインコートが地下に隠れ潜む都市なら、ここは地上に堂々と君臨する都市だ。

山脈の麓に広がる広大な盆地。

その中央には、旧世界大戦期に建造されたと思われる、超巨大なエネルギー反応炉が塔のように聳え立ち、雲を突いている。

その周囲を、何重もの高い防壁と、無骨なビル群が円環状(メビウスの輪)に囲んでいた。

「大きい……。レインコートの3倍はある」

マリーが息を呑む。

都市からは、無数の熱源反応と、強力な通信波が検知される。

防壁の上には無数の砲塔が並び、空には哨戒ドローンが飛んでいるのが見える。

それは死んだ遺跡ではなく、今まさに呼吸をしている生きた軍事要塞だった。

「……匂うな」

私はコクピットの中で呟いた。

「鉄と油、そして火薬の匂いだ」

ここが目的地。

ナインティの情報を握り、機械軍と激しい抗争を繰り広げている最前線都市。

そして、私たちが新たな同盟を結ぶべき相手。

「ローズ、通信回線を開け。向こうの守備隊に接触する」

「了解。……友好的だといいけど」

「友好的じゃなくても、話を聞かせるさ」

私は丘の下に広がる鋼鉄の巨都を見据えた。

この街のどこかに、人間を殺すためだけに作られた死神、ナインティの情報がある。

「行くぞ、みんな。ここからが本当の任務だ」

ブォォォン……。

リリィブロッサムのエンジン音が、夕闇に響き渡る。

私たちは丘を下り、鋼鉄の門へと向かって進み始めた。


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