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起死回生、鋼鉄の大泥棒


地下都市レインコート、第3整備ドック。

普段はパワードスーツの整備音で喧騒に包まれているその場所は、異様な圧迫感に支配されていた。

ドックの中央を占拠しているのは、先日サルベージされたばかりの南部大剣『鉄仙テッセン』の巨体だ。

泥と水垢にまみれているものの、その漆黒の重積層装甲は未だ鈍い光を放ち、見る者を威圧している。

傍らには、刃渡り5メートルを超える巨大な戦斧が横たえられていた。

「すごい……! なにこれ、関節のアクチュエーター構造が全然違う! 重力制御に近い姿勢安定ユニットが組み込まれてるよ!」

整備用クレーンに吊り下げられたゴンドラの上で、マリーが歓声を上げていた。

彼女はタブレット端末を片手に、鉄仙の装甲の隙間から露出した内部フレームを食い入るようにスキャンしている。

その碧眼は、新しい玩具を与えられた子供のように輝いていた。

「ここの回路をバイパスすれば、この出力を再現できるかも……! うわぁ、夢が広がるなぁ!」

私はドックのキャットウォークから、その様子を見下ろしていた。

マリーの熱意は頼もしい。この怪物を解析し、こちらの技術に取り込めれば、防衛隊の戦力は飛躍的に向上するだろう。

だが――。

私は視線をずらした。

鉄仙の巨体の周囲に並べられた、我々レインコート防衛隊の主力機『ピースウォーカー・カスタム』たち。

その姿は、あまりにも痛々しかった。

装甲は至る所がへこみ、塗装は剥げ落ち、剥き出しになった配線が痛々しくスパークしている。

予備パーツの枯渇により、破損した装甲を別の機体の廃材で継ぎ接ぎした機体フランケンシュタインも珍しくない。

もはや、オーバーホールすら不可能なレベルまで金属疲労が蓄積していた。

「……リリィ」

ゴンドラが降りてきて、マリーが私の隣に降り立った。

さっきまでの興奮は消え、彼女の表情は曇っていた。

「どうだ、マリー。鉄仙の解析は進んでいるか?」

「うん……構造自体はなんとなく分かってきた。でも、これを実用化して、みんなの機体に組み込むには……最低でも半年はかかるよ」

半年。

その言葉の重みに、私は息を呑んだ。

「……そんなに待てない。敵は明日にも来るかもしれないんだぞ」

「分かってるよ! でも……」

マリーは油まみれの手で顔を覆った。

「部品が足りないの。新しい装甲材も、高出力ジェネレーターも、全部ない。……今のあの子たち(ピースウォーカー)はもう限界だよ。次に激戦があったら、動けなくなる子が半分は出る」

整備士としての悲痛な宣告。

私は拳を握りしめ、ボロボロの仲間たちを見つめた。

私たちは勝った。だがその代償として「剣」を失いかけている。

武器がなければ、守るべきものを守れない。

「……すまない、マリー。無茶をさせているのは分かっている」

「謝らないでよ、リリィ。……悔しいのは、直してあげられない私なんだから」

マリーの涙ぐむ顔を見て、私は決意した。

技術解析を待っている時間はない。

即効性のある「薬」が必要だ。それも、劇薬に近いものが。


数時間後。防衛隊司令部、作戦会議室。

レン隊長を筆頭に、各小隊長と主要メンバーが招集されていた。

議題はただ一つ。『即時の戦力増強について』。

「現状報告は以上の通りだ」

レン隊長が重苦しい声で告げた。

「稼働可能なパワードスーツは全28機。そのうち、戦闘に耐えうる状態コンディション・グリーンなのはリリィの『レイニーブルー』と私の『イグニス』を含めてわずか5機。……残りは、歩くのがやっとの鉄屑だ」

会議室に沈黙が落ちる。

これでは、次に大規模な襲撃があれば全滅必至だ。

「交易ルートを使って、他都市から買い取ることは?」

第2小隊長が提案するが、すぐに都市統括管理者が首を横に振った。

「不可能だ。現在、機械軍の活動活発化によりどの都市も防衛戦力の確保に必死だ。命綱であるパワードスーツを手放す愚か者はいない。……仮に売ってくれたとしても、足元を見られて国家予算並みの対価を要求されるだろう」

「なら、どうすればいいんだ……! 鉄パイプを持って生身で戦えと言うのか!」

焦燥感が場を支配する。

その時だった。

末席に座っていた若手隊員が、ふと独り言のようにボヤいた。

「あーあ……どっかに新品のパワードスーツでも落ちてねえかなぁ。……機械軍の工場になら、嫌になるほど山積みになってるのによぉ」

その言葉が、私の聴覚センサーに引っかかった。

そして同時に、レン隊長の目が鋭く光ったのを私は見逃さなかった。

「……待て」

レン隊長が顔を上げた。

「今、何と言った?」

「え? あ、いえ……機械軍の工場になら、新品があるのになぁと……」

「それだ」

レン隊長がテーブルをバンッと叩いた。

彼女の口元に、獰猛な笑みが浮かんでいた。

「売ってくれないなら、奪えばいい。……敵の補給路を断つと同時に、我々の戦力を潤す。これ以上ない合理的な作戦だ」

「た、隊長!? 正気ですか!?」

ローズが驚いて声を上げる。

「敵の工場を襲撃するなんて……! それこそ自殺行為ですわ!」

「座して死を待つのも自殺行為だ。ならば、可能性のある方に賭ける」

レン隊長はホログラムマップを展開した。

レインコートから南へ60km。

広大な荒野の中にポツンと記された赤いマーカー。

「機械軍・第3自動生産工廠。ここ数ヶ月の観測データによれば、ここはピースウォーカーの組み立てラインが稼働している。……出荷前の、武装もOSも真っ白な『新品』が眠っているはずだ」

「泥棒……いえ、強盗ですね」

管理者が眼鏡を光らせて言った。

「だが、計算は合う。リスクは高いが成功すればリターンは絶大だ。……問題は、工場の警備を突破し、機体を搬出するための『手数』が足りないことだ」

「人手が足りないなら、募集すればいい」

私は口を開いた。

「同じように、戦力不足で困っている連中を知っています。……鬼灯との戦いでパワードスーツを失い、復讐に燃えている命知らずたちを」

レン隊長と管理者が顔を見合わせ頷いた。

「シェルター204か」

「彼らなら、このイカれた作戦にも喜んで乗ってくるでしょう」

作戦は決まった。

目標、新品のピースウォーカー80機。

レインコートとシェルター204で山分け。

これは防衛戦ではない。

生き残るための、起死回生の大強奪グランド・セフトだ。


作戦決行の夜。

レインコートから南へ30km地点、岩場が連なる合流ポイント。

月明かりの下、数台の装甲トラックとパワードスーツの影が集結していた。

私たちレインコート防衛隊と、シェルター204遊撃部隊。

かつて共に鬼灯と戦った戦友たちだ。

「よう、リリィ。久しぶりだな」

トラックの荷台から飛び降りてきたのは、見慣れたボロボロのカスタム機に乗ったアンドロイドだった。

TYPE.B・スバル。

無愛想だが情に厚い、荒っぽい口調の男性型。マリーの友人であり、私の背中を預けられる数少ない男だ。

「久しいな、スバル」

私はレイニーブルーのハッチを開け、彼を見下ろした。

「……相変わらず、趣味の悪いツギハギだらけの機体に乗っているのか。よくそれで空中分解しないものだ」

「うるせぇよ。こいつは俺の身体の一部なんだ。……それにしても」

スバルは私の顔、白髪とオッドアイになった瞳をじっと見た。

「左目、蒼に変えたのか? 前より凄味が増したじゃねえか。……地獄を見てきた顔だ」

「貴様ほどではないさ」

私は軽く鼻を鳴らし、地上へ降りた。

「シェルター204の状況はどうだ?」

「最悪だ。鬼灯にやられた穴が埋まらなくてな。……今回の話を聞いて、隊長も色めき立ってたぜ。『敵の工場から新品をカツアゲする』なんて、イカれた作戦を考えるのはお前らくらいだ」

スバルはニヤリと笑い、ゴツゴツした手を差し出した。

「だが、嫌いじゃねぇ。……今回の獲物は、新品の高級車80台ってマジか?」

「ああ、情報は確実だ。……成功すれば、スバル達の部隊も立て直せる。山分けだ」

私は彼の手を強く握り返した。

金属同士が擦れる音。

言葉以上の信頼が、その握手には込められていた。

「背中は任せるぞ、共犯者殿」

「おうよ。……派手に盗んで、機械軍の野郎共に泡を吹かせてやろうぜ」


深夜0200時。

機械軍・第3自動生産工廠、外周エリア。

巨大な要塞のような工場が、闇の中に黒々とそびえ立っている。

周囲にはサーチライトが旋回し、自律型の警備ドローンが不気味な羽音を立てて巡回していた。

「……行くぞ」

私はハンドサインを送った。

私とスバル、そして数名の選抜メンバーが、生身でフェンスの影に滑り込む。

パワードスーツは目立つため、工場から少し離れた岩場に待機させてある。

まずは内部に侵入し、システムを掌握するのが先決だ。

ブォォォン……。

頭上を警備ドローンが通過する。

そのセンサーがこちらを向こうとした瞬間。

バスッ。

消音器付きのライフル弾が、ドローンのカメラアイを正確に撃ち抜いた。

スバルの狙撃だ。

ドローンがバランスを崩して落下する前に、私は跳躍した。

「ハッ!」

高周波ナイフの一閃。

ドローンの駆動系を切断し、音もなく地面に軟着陸させる。

完璧な連携サイレント・キル

「やるじゃねえか」

「スバルの腕も錆びてはいないようだな」

私たちは工場の搬排気ダクトの前にたどり着いた。

マリーが用意してくれたハッキングツールで電子ロックを解除する。

カシャリ。

重いファンが停止し、侵入路が開いた。

ダクトの中を匍匐前進で進むこと数分。

眼下に広がった光景に、私は息を呑んだ。

「……壮観だな」

そこは、巨大な吹き抜けの組み立てラインだった。

天井の高い広大な空間に、無数のロボットアームが並び、ベルトコンベアの上には――。

ピースウォーカー。

ピースウォーカー。

ピースウォーカー。

出荷を待つばかりの新品の機体が、整然と、果てしなく並んでいた。

傷一つない純白の装甲。

曇りのないクリアなセンサー。

オイル漏れも、焦げ跡もない、完全な状態の兵器たち。

「うひょー……! 宝の山だぜ……!」

後ろにいたシェルター204の隊員が、歓喜の声を押し殺して震えている。

「あいつら、俺たちが喉から手が出るほど欲しいモンを、こんなに余らせてやがったのか」

「感心している場合ではない」

私は冷静に言った。

「あれらはまだ、機械軍の制御下にある。……ローズ、聞こえるか?」

私はインカムに指を当てた。

『ええ、聞こえてるわリリィ。……映像もリンクしてる。信じられない数ね』

司令部で待機しているローズの声。

「これからメインサーバー室へ向かう。……ローズのハッキングで、この『商品』たちの鍵をこじ開けてくれ」

『任せてちょうだい。S型の処理能力と、マリーちゃんの作った解析プログラムの合わせ技よ。……さあ、泥棒の時間よ!』

私たちはダクトを抜け、工場の心臓部へと足を踏み入れた。

静寂に包まれた工場。

だが、それは嵐の前の静けさだ。

80機の巨人が目を覚まし、暴れ出す瞬間へのカウントダウンが始まった。



工場のメインサーバー室。

無機質な冷却ファンの音が響く中、私たちは回線を物理接続したコンソールを守るように配置についていた。

スバルが入り口を見張り、私が端末の状況を監視する。

モニターには、幾何学模様のプログレスバーが表示され、目まぐるしい速度でコードが書き換えられていく。

「……ローズ、状況はどうだ?」

私はインカム越しに問いかけた。

声色は冷静さを保っているが、内心は焦燥感で張り詰めていた。いつ巡回ドローンが入ってくるか分からない。

『順調よ、リリィ。……さすがは機械軍の最新工場ね、セキュリティがガチガチだわ』

ローズの声には、緊張感の中にも楽しんでいるような余裕があった。

『でも、マリーちゃんが作ってくれた「合鍵デコーダー」が優秀すぎるわ。ファイアウォールをバターみたいに溶かしていくもの』

「マリーには感謝だな。……あとどれくらいかかる?」

『出荷前機体たちのOS書き換え、現在60%。……あと3分で全機の制御を奪えるわ』

「了解だ。……頼んだぞ、ローズ」

私は愛銃のグリップを握り直した。

その時、入り口を見張っていたスバルが鋭く囁いた。

「おい、リリィ。足音がするぞ。……巡回の警備ロボットだ」

廊下の向こうから、金属質の駆動音が近づいてくる。

タイミングが悪い。ここで見つかれば、ハッキングが中断される。

「……やり過ごせるか?」

「無理だな。こっちへ来る」

スバルがライフルを構える。

私は舌打ちをした。

「ローズ、急いでくれ。客が来たようだ」

『分かってる! ……くっ、最後のプロテクトが硬い……!』

モニターの数字が78%で止まる。

「警告。警告。サーバー室への不正アクセスを検知」

無情な電子音声が室内に響いた。

次の瞬間、天井の赤色灯が回転し始め、耳をつんざくような警報音が鳴り響いた。

ウゥゥゥゥゥ――ッ!!

「チッ、バレたか!」

スバルが引き金を引く。

ドアを突き破って入ってきた警備ロボットの頭部が弾け飛ぶ。

「ローズ、 強制解除だ! 多少のエラーは構わない、機体を起こせ!」

『ええい、もう! ……お目覚めの時間よ、眠り姫たち!』

ローズがエンターキーを叩き込む音が聞こえた気がした。

モニターの表示が『書き換え完了:有人モード起動』へと切り替わる。

ズズズズズ……。

工場の床が微かに震え始めた。

それは、ラインに並んでいた80機の巨人が、一斉にシステムを起動させた胎動だった。


「総員、突入ッ!! 乗り込めェェェッ!!」

私は通信機で絶叫した。

ダクトや搬入口で待機していたレインコートとシェルター204のパイロットたちが、雪崩のように工場内へ飛び込んでくる。

「うひょー! どれでもいいんだな!?」

「俺はあの右端のヤツにするぜ!」

「早い者勝ちだぁぁぁ!」

まるでバーゲンセールの争奪戦だ。

パイロットたちは次々と新品のピースウォーカーのコクピットハッチをこじ開け、滑り込んでいく。

『システム、オールグリーン。……すげぇ、エラーが一つも出ねぇ!』

『反応速度がダンチだ! これが新品のパワーかよ!』

あちこちで歓喜の声が上がる。

今まで廃材寸前の機体で戦っていた彼らにとって、工場出荷直後の機体は、最新鋭のスーパーカーに乗り換えたようなものだろう。

「スバル! お前も行け!」

私はスバルに指示した。

「お前のボロ機体はここに捨てていけ。新しい相棒を見繕ってこい!」

「へっ、言われなくても! ……リリィ、お前はどうする?」

「私は『レイニーブルー』が外で待っている。……殿しんがりを務めるからスバル達は先に行け!」

「了解! 死ぬなよ!」

スバルは回廊を飛び出し、手近なピースウォーカーへと飛び乗った。

工場の隔壁が開き、無数の警備用自律兵器が殺到してくる。

だが、今の私たちは「武装した巨人」の集団だ。

ズガガガガッ!!

スバルが乗り込んだ新品のピースウォーカーが、アサルトライフルを一掃射する。

それだけで、警備ロボットの群れが紙屑のように吹き飛んだ。

『ハッハァ! 見ろよこの火力! トリガー引いた瞬間に弾が出るぜ!』

スバルの狂喜の声。

「全機、強奪完了! 脱出するぞ!」

80機のピースウォーカーが、一斉に行進を開始する。

工場の壁? 関係ない。

シャッター? 蹴破ればいい。

ドォォォン!!

工場の外壁が内側から爆破され、巨大な風穴が開いた。

そこから次々と、白い装甲の巨人が荒野へと躍り出る。

それは機械軍にとっての悪夢、私たちにとっては最高に痛快なパレード(カーニバル)だった。


私は工場の外に待機させていた『レイニーブルー』に飛び乗り、脱出する仲間たちの最後尾についた。

「追手が来るぞ! 振り切れ!」

工場の防衛システムが起動し、ミサイルタワーがこちらを狙う。

だが、新品の機体を手に入れたパイロットたちの士気は最高潮だ。

回避機動も、反撃の射撃も、キレが違う。

『喰らえ! お前らの工場で作った弾丸だ、お返しするぜ!』

『当たるかよ! このスラスター、絶好調だ!』

私たちは嵐のように荒野を駆け抜けた。

追撃部隊も現れたが、80機の最新鋭機による集中砲火の前では、もはや敵ではなかった。

圧倒的な火力と機動力で蹴散らし、私たちは悠々とレインコートへの帰路についた。


数時間後。レインコート地下都市、搬入ゲート。

「……壮観ね」

ゲートに整列した80機の新品ピースウォーカーを見て、ローズが感嘆の声を漏らした。

ピカピカの白い装甲が、ドックの照明を反射して輝いている。

マリーや整備班の連中は、機体に抱きついたり頬ずりしたりして喜んでいた。

「傷がない……歪みもない……。これなら、すぐに実戦投入できるよ! ありがとうリリィ!」

マリーが私の首に抱きついてくる。

「礼ならレン隊長に言え。……それに、あの無茶なハッキングを成功させたローズにもな」

私はマリーの頭を撫でながら、ローズにウインクを送った。

ローズは誇らしげに髪をかき上げた。

「ええ、私の指先にかかれば、機械軍のセキュリティなんて紙切れ同然よ」

ゲートの隅では、戦利品の分配が行われていた。

約束通り、レインコートに40機、シェルター204に40機。

「いい取引だったぜ、リリィ」

新品の機体から降りてきたスバルが、ヘルメットを小脇に抱えて歩み寄ってきた。

「こいつは素晴らしい機体だ。……だが、やっぱり座席の感触は前のボロ機体の方が落ち着くがな」

「贅沢を言うな、慣れろ」

私は苦笑した。

「これで、お互いに戦えるな」

「ああ。……鬼灯とのリベンジマッチも、これなら勝算がある」

スバルは真剣な眼差しで私を見た。

「また会おうぜ、戦場で。……次に会う時は、機械軍をこの星から叩き出した後の祝勝会だといいな」

「そうだな。……死ぬなよ、スバル」

「おう。お前こそな」

私たちは再び拳を突き合わせた。

フィスト・バンプ。

鋼鉄の絆。

シェルター204の部隊が、奪ったばかりの機体に乗って去っていく。

その背中を見送りながら、私は胸の内で確信していた。

私たちは、強くなった。

物理的にも、精神的にも。

機械軍の工場から奪ったのは、ただの鉄塊ではない。

未来を切り開くための「希望」そのものだ。

「さあ、仕事だ」

私は振り返り、レン隊長、ローズ、マリーたちを見た。

「新しい機体の調整と、部隊編成を急ぐぞ。……反撃の狼煙を上げる時だ」

地下都市レインコートに、久しぶりに力強い活気が戻ってきた。

起死回生の泥棒作戦は、大成功で幕を閉じたのだ。


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