表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/40

2話

◆初めての後

 脅威は去った。それに呼応するように、3人の変身は解けた。勇は、倒れている涼と晴に駆け寄った。



「だ、大丈夫っ?」


 晴はこう返す。


「ああ、大丈夫だ」


 涼も遅れて返した。


「心配してくれて、ありがとう」


 涼と晴は、少し間を空けて立ち上がった。そして、その手に残されたセイブ・ストーンを持ちながらそれぞれ帰っていった。


 帰宅した勇は、変身し戦った事実にじわじわ心を踊らせた。


「僕、『ヒーロー』になっちゃった?」


 それから、宿題や夕飯等を経て、夜の自由時間を迎えた。


「『ヒーロー』」


 そう言うと、勇は「秘密ソルジャーシリーズ」の動画を観始める。


 動画の主人公は、こう言った。


「隠密変化!!」


 そして、主人公は紅色を基調とした和風のコスチュームに顔ごと包まれ、変身を完了した。その後、こう言った。


「蔓延る闇を一刀両断!秘密ソルジャーサムライ、見参!!」


 それを見た勇は、ニンマリ。


「ふふっ。いっけー!サムライっ!!」


 やがて、秘密ソルジャーサムライは、こう声を上げた。


「秘技解放!撃滅防御嵐!!」


 それを受け、勇は興奮してこう声を上げた。


「うおおっ!決まったー!!」


 そして、動画は終わった。


「僕、これからこうやって戦うのかな?あっ、そうだ」


 すると、勇はメモ紙を取り出し、何やら書き始めた。


「うーん、どうしよう?」


◆提案

 翌朝、勇は高校に登校しようとした。しかし、母親に保護者への一斉メールが届く。母親は言った。


「今日の学校、臨時休校だって」

「ええっ?何で?」


 勇が驚くと、母親はその理由を読み上げた。


「『昨日、通学路で奇怪な事件が発生しました。その安全確認のために、本日は休校の措置を取ります。』だって」

「あっ。そ、そうなんだ!残念だなぁ、学校行きたかったのに」


 勇は、そう言うと、自室に通学カバンを戻しに行った。そして、呟いた。


「『あの事』だ。でも、今日は学校行きたかったよー、涼と晴に渡したい物があったのにー」


 昨夜書いたメモを取り出し、見つめた。


「仕方ない、明日にしよう」


 そして、安全確認が出来たとし、翌日は登校日となった。勇の元気な声が、安藤家に響いた。


「いってきまーす!!」


 そして、勇は教室に着くなり、先に登校していた涼と晴に一昨日の夜書いたメモを渡した。こんな言葉を添えながら。


「ねぇねぇ、僕たち今度変身する事があったら、こうしてみない?」


 そこには、変身の時に言う言葉と、変身後に言う言葉が書いてあった。涼は戸惑った声で言った。


「た、多分こんな事しなくても大丈夫だと思うけど」


 晴もそれに同調。


「ああ、そうだな。けど、どうしても勇がやりてぇ事なら付き合ってやる」


 勇は言った 


「ありがとう!!」


◆再び

 それから、3日後の事だった。週末の休みの日に、勇は涼と晴を「あの公園」に呼び出した。砂場の砂を右手で掬いながら勇は言った。


「ここでさ、2人と会った頃は、こんな事になるとは思わなかったよ」


 更に、勇は左手に収まっているセイブ・ストーンを見つめ、続けた。


「ふふっ、僕らヒーローになっちゃったねっ!!」


 涼は返した。


「『あの時』の勇も十分ヒーローだったけどね?晴にいじめられてた僕の目の前に立ってくれたから」

「そう?涼?」


 晴は、その会話を黙って聞きながら、どこか険しい目をしていた。


 すると、公園の植木にとまっていた十数羽の鳥たちが一斉に慌てた様子で飛び去る。勇はその様子を驚き見たがその目は、次第に見開かれる。スーツを着た短髪の男女一組が佇んでいたからだ。勇は言った。


「また、あの2人っ?」


 男女は、禍々しい雲に包まれ、それが晴れると、男は紫、女は橙色のオーラをまとう。そして、こう言った。


「プラネットクラッシャーアースバイオレット」

「プラネットクラッシャーアースオレンジ」


 そう名乗ると、2人揃って「カラミティ!」と声を上げた。数人のカラミティが出現。それを受け、勇は言った。


「涼!晴!行こう!!」

「うん!」

「ああ!」


 そして、セイブ・ストーンを持ち、3人揃ってこう叫んだ。


「解き放て!守りの力!!」


 そして、勇は赤、涼は白、晴は黄色の戦士へと変身した。そして、勇は名乗った。


「はためく翼は強き盾!アースセイバーウイング!!」


 それに続いて涼は名乗った。


「流るる水は大いなる癒し。アースセイバーウォーター」


 最後に晴が名乗った。


「荒ぶる炎は確かな希望!アースセイバーファイア!!」


 そして、更に声を揃えた。


「レッツ!セイブ!!」


 3人はカラミティに立ち向かっていった。


◆公園での戦い

 バイオレットは、笑った。


「妙な事を言い始めるんだなぁ?地球の守護者は!!」


 ウォーターが反論した。


「ウイングを否定しないでくれないかな?」


 バイオレットは、それに言葉を返さなかった。反論したウォーターはじめ、ウイングもファイアもこの直後、カラミティによって余裕を無くす。


 カラミティたちのこの日の標的は、ウイングたちであった。カラミティはウイング、ウォーター、ファイアを取り囲む。ウイングは言った。


「やっぱり、間近で見ると、カラミティこわいよー!!」


 カラミティは、若い大人の男女ではあるが、目だけが全くない。埋もれているという程度を越えて、本来なら目がある所は真っ平ら。その代わり、頭の4本のアンテナがウネウネ動く。


 ウォーターの水の攻撃とファイアの炎の攻撃がその数を減らしていくが、その度にバイオレットとオレンジは交代でカラミティを「補充」する。ファイアは言った。


「きりがねぇっ!!」


 それでも、ウォーターとファイアは攻撃を止めず、ウイングもパンチを見舞わせる事でカラミティを倒す。


 一方、カラミティは悪しき力を醸し出す。


 そんな様子をバイオレットとオレンジは、高みの見物という態度で見ていた。そして、オレンジは言った。


「悪く思わないでよ?ここであんたらを潰しておかないと、地球は壊せないから」


 アースセイバー3人とカラミティの戦いの最中、公園の遊具が傷ついていく。そんな様子に気づいたウイングは叫んだ。


「僕らの思い出の公園を壊すなー!!」


 その言葉にバイオレットは再び笑った。


「随分、幼稚だな?けど、これでいいんだよ!俺様たちは、地球の全てを壊すんだからな!まず始めにここからだ!!」


 ウイングは、叫ぶようにこう返した。


「やめろぉっ!!」


 ウイングは、翼から羽根の盾を繰り出し、遊具を守る。そして、カラミティにパンチをひたすら浴びせかけた。そうしていると、ウイングは初めて戦った時を思い出す。ウォーターとファイアが倒れてしまった事を。


「ウォーター!ファイア!これ使って!!」


 ウイングは再び翼を広げ、羽根の盾を2人に与えた。ウォーターは言った。


「ありがとう!ウイング!!」


 ファイアは言った。


「余計な事すんな!けど、受け取っとくぜ!!」


 そんな戦いは長く続く。必死に戦うアースセイバーと、高みの見物を決め込みながらカラミティを量産し続けるプラネットクラッシャー。そんな中、ウイングに疲れが見えるようになってきた。パンチ力が低下していく。


「あ、た、倒せないっ。カラミティを、倒せないっ」


 ウォーターとファイアは、そのウイングの言葉を受け、顔を見合わせた。そして、ウォーターはこう声を上げた。


「セイブ・ウォーター・ソード・レイン!」


 上から大量の剣が水をまとい雨の如く降って来た。それに続き、ファイアが叫んだ。


「セイブ・ファイア・クロス・エクスプロージョン!」


 十字の炎が発生。それは回転しながら爆発による衝撃波を生む。


 ウォーターの剣と、ファイアの爆破にてカラミティは一掃された。


 バイオレットは言った。


「『それ』、出されちまったか」


 オレンジも続く。


「とりあえず、今日の所は撤退ね」


 プラネットクラッシャー2人は、姿を消した。アースセイバー3人は、変身が自動的に解除された。


 勇は、膝をつく。そして、言った。


「く、苦しかった」


◆帰宅

 涼と晴は、勇を両脇から抱えてくれた。勇はすぐにこう言った。


「ごめん、ありがとう。もう、動けない」


 晴がそれに返した。


「このまま、家に送ってやるから」


 その言葉に勇は甘える事にした。家までの道中、勇は言った。


「そう言えば、涼とか晴の家に行ったことないよね?」


 晴が少し目を泳がせながらこう返す。


「俺ん家、散らかってるから、お前を入れたくねぇの」


 涼は、なぜかしどろもどろになる。


「えっと、その、実はここから遠いんだ」

「ふーん、わかった」


 勇のその声色は、言葉と裏腹に納得いってなかった。すると、安藤家にたどり着く。


「送ってくれてありがとう。涼、晴。また、学校でね?」

「うん」

「ああ」


 そして、勇はふらつきながらも家に入って行った。それを、見送った涼は言った。


「あの、晴?」


 晴は、右手の手のひらを涼に見せながらこう言った。


「やめよう、それは」


 涼は、頷く。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ