17話
◆溶かした氷の代償
ファイアは言った。
「戻ろう、ウイングの元に」
その声は、わずかに震えていたが、ウォーターは頷き、2人でウイングの戦場へと向かった。
向かった先には、カラミティ全てに翼からの羽根の盾をまとわりつかせ、自らはバイオレットとオレンジに交互にパンチ攻撃を加えているウイングがいた。
ウォーターは言った。
「加勢しよう」
「ああ」
そのファイアの声は、苦しげだった。ウォーターは異変に気づき、尋ねる。
「ファイア?苦しそうだよ?」
「何でも、ない」
そして、ファイアは率先してウイングの元へと向かった。ウォーターはそれを追う。ウイングは、ウォーターとファイアの姿を見て言った。
「ウォーター!戻ったんだねっ!!ファイア!やっぱり凄い!!」
ウォーターは返す。
「ウイング!ごめん!また、戦おう!!」
「うん!!」
しかし、ファイアは押し黙ったままだ。そんな光景を見て、バイオレットは言った。
「ちぃっ!戻りやがったか!ウォーター!!」
オレンジも言った。
「なんて事!短かったわね!」
ウイングは引き続きプラネットクラッシャーに対峙する。ウォーターは水の洗い流しを展開。そんなウォーターの元に、帰宅途中の愛が持っていたセイブ・ストーンが戻ってきた。ウォーターは言った。
「これで、きちんとした形で戦える!」
そう言ったウォーターと共に、炎の焼き尽くしを展開しようとしたファイアに異変が訪れる。
「くそ」
ファイア自身でも制御出来ない炎がファイアから迸る。その炎は、守るべき対象である周囲の木々などを燃やしてしまいそうなくらいの物だった。ウイングは言った。
「ファイアっ?」
ファイアは返した。
「わかっちゃいたが、俺の、中で、必殺技の爆発が、止まらねぇっ」
先ほど吸収した「セイブ・ファイア・クロス・エクスプロージョン」がファイアの身を焦がす。ウォーターが言った。
「僕を助けるために、ファイアが」
ウイングは、考えを巡らせた。
「ウォーター!ファイアの火を消してあげて!!プラネットクラッシャーは僕がどうにかするからっ!!」
そんな光景を見たバイオレットが笑った。
「アースセイバーファイアは、そのままでいい!そのまま、地球を燃やせ!!」
そう言ったバイオレットは、ウォーターに立ちはだかる。しかし、その間にウイングが割って入った。
「バイオレット!そして、オレンジ!2人の相手は、まだまだ僕だよ!!」
そんな光景を見ながら、周辺を燃やしたくないとファイアは空高く飛び上がった。そして、それをウォーターは追って行った。
「ウォーター!ファイアをよろしくねっ!!」
そんなウイングの声がウォーターとファイアを追いかけた。
◆消される炎
ファイアは言った。
「ウォーター!来るな!ウイングを援護しろ!!」
ウォーターは首を横に振る。
「援護は、2人で!そうしたいです!!」
ウォーターは、アイスに変えられていた時のダメージを抱えながらだったが、早速水の洗い流しをファイアに与えた。わずかに炎の勢いが削がれる。ウォーターは一旦手を止め言った。
「やれる。ファイアを助けられる!」
ファイアは返した。
「私を、助けなくて、いい。情けない。だから、ここで終わりにする」
ウォーターはそれに反応した。
「そんな、事を、言わないで、ください」
「ウォーター!」
「助けたい!あなたを!助けたいです!!」
そして、ウォーターは水の洗い流しを再開する。ファイアは抵抗せずに言った。
「すまない。こんな、自分に、その力を使わせて」
「それは、元々はこちらが原因です!謝らないでください!!」
すると、ファイアの中の炎が更に暴走する。その炎は、ウォーターを攻撃し始める。
「くっ。逃げろ」
「逃げません!ウイングの思い、必ず成し遂げます!!」
「私は燃やし尽くされてもいい!逃げろ!!」
「わからない人ですね!」
荒れ狂う炎がウォーターを襲うが、ウォーターは怯まずそれに対応する水を与え続ける。そして、こう叫んだ。
「そうまでして、助けてくれたあなたを、目の前で燃やし尽くすなど、出来ません!!」
そして、ウォーターは力を振り絞り、大量の水を発生させ、ファイアに浴びせかける。ファイアの炎は、再び勢いを削がれ始める。それを認めたウォーターは叫ぶように言った。
「セイブ・ウォーター・ソード・レイン!」
水をまとった大量の剣にウォーターは命じた。
「ファイアに当たるな!炎に攻撃を!!」
剣は降り注ぐ勢いを借り、まとっている水と共にファイアの炎を消し去った。ウォーターは言った。
「消えた。消せた」
ファイアは、こう返した。
「ウォーター、私を救護してくれた事、感謝する。ウイングの元へ戻らなければ」
ウォーターは、頷く。