12話
◆穏やかさを
芯の失踪が気になっている勇だったが、いつか会える事を信じてその日を待つ事にした。
この日、学校は終業式だった。明日からの夏休み前、久しぶりに勇の目は、朝からキラキラしていた。愛がそれに気づく。
「勇くん?何かいい事あったの?やっぱり、夏休み楽しみ?」
「わかる?わかるでしょ?夏休みもそうだけど、明日から、『秘密ソルジャージュエル』の映画が公開なんだ!それ、観に行く予定でさ、今から楽しみなんだ!!」
愛は笑った。
「勇くん、自分がヒーローになったのに、ヒーロー、まだ好きなんだ?」
「それとこれとは別だよっ!あー、楽しみっ!もう席予約してるんだ!!」
「そう。いってらっしゃい。楽しんで来てね?」
「うん!!」
勇の底なしの明るい笑顔を見た愛は、心の中で言った。「どうか、勇くんが無事に映画を観られますように。プラネットクラッシャーに邪魔されませんように」と。
そして、放課後。愛は、帰ろうとした涼と晴を引き止めた。そして、こう言った。
「聞こえてたかもしれないけど、勇くん、明日大好きな映画観に行くんだって」
涼が返した。
「それは、もう、聞こえてたよ?」
晴が続く。
「で?何の用だよ?」
愛は、勇の姿を遠目で見つつ言った。
「ちゃんと勇くんに映画を観せてやりたいの。もし、プラネットクラッシャーが来たら、2人で戦ってくれる?」
愛は軽く頭を下げ、続ける。
「私、2人に何もお礼出来ないけど、お願い!」
涼は答えた。
「いいよ?」
晴も答えた。
「久しぶりだもんな、あんな勇。やるぜ?」
愛は、涼と晴に手を合わせ、言った。
「ありがとう!涼くん!晴くん!」
翌日、出かけようと家の玄関を出た勇は、涼と晴の姿を見る。
「え?涼?晴?えっと、約束あった?僕、何か忘れてる?」
晴は言った。
「いいや?訳あって来た」
涼は言った。
「行く所、あるんだよね?行って来なよ」
勇は、首を傾げながら言った。
「『訳』?聞かせてよ」
涼は、観念したように言った。
「実は、頼まれてね。愛ちゃんに」
晴も続く。
「映画、観るんだろ?それを『あいつら』に邪魔されないようにしてくれってさ」
勇は、呟くように言った。
「愛ちゃん」
そして、元気な声で返した。
「うん!お言葉に甘えるよ!行ってくるね?」
そして、3人で映画館へと行った。そして、勇はこう言って映画館の中に消えて行った。
「じゃあ、よろしくね!!」
涼と晴は、それを見送った。
それから、勇は「秘密ソルジャージュエル」の映画をおおよそ90分楽しんだ。名実ともに満足した勇が映画館から出てきた。
「涼!晴!ありがとう!!すっごくいい映画だった!おかげで楽しめたよ!!」
涼は微笑んだ。
「それはよかった!」
晴は頷く。
「奴ら、来なかったぜ?安心しろ」
勇は満面の笑みで言った。
「よかったー!」
そして、勇は帰路につく。涼と晴も一緒についてきた。勇は、そんな2人と歩いているうちに、とある考えが浮かんできた。それを涼と晴に伝えてみる事にした。
「ね、涼?晴?僕、愛ちゃんや、2人のおかげですっごく穏やかな1時間半過ごせたよ。そう思ったらさ、皆の『穏やかな時間』、守りたくなった。だから、これからもプラネットクラッシャーたちと戦うよ」
そう言った勇は、伏し目がちにこう続けた。
「まぁ、そのプラネットクラッシャーにも、なんか事情があるみたいだけど。でも、まずは僕が守りたいのは、そんな穏やかな時間」
そして、決意の目で涼と晴を見て勇はこう締め括った。
「という事だから、これからもよろしくね!涼!晴!」
涼と晴は、見つめ合った後、頷いた。
◆タイミング
勇は、改めてセイブ・ストーンを取り出し見つめた。その勇の耳に、晴の声が届く。
「感謝した方がいいのか、悪いのか」
勇は視線を上げる。その目には、充と彩。勇は言った。
「感謝しよう!だって、戦えない人たちを襲ってるわけじゃないんだから!!」
涼は言った。
「確かに。戦える僕たちが、倒そう!」
勇は言った。
「うん!」
そして、充と彩に届くように大きい声で3人は言った。
「解き放て!守りの力!!」
変身が終わり、気合いの入った名乗りが一帯に響いた。
「はためく翼は強き盾!アースセイバーウイング!!」
「流るる水は大いなる癒し。アースセイバーウォーター」
「荒ぶる炎は確かな希望!アースセイバーファイア!!」
そして、3人はこう言い、走り出した。
「レッツ!セイブ!!」
それを受け、充と彩は禍々しい雲を展開。そして、こう名乗った。
「プラネットクラッシャーアースバイオレット」
「プラネットクラッシャーアースオレンジ」
そして、こう声を揃える。
「カラミティ!!」
ウイングのパンチ、ウォーターの水の洗い流し、ファイアの炎の焼き尽くしがカラミティを消滅させる。そんな光景を見て、バイオレットは言った。
「ふん、こっちが攻撃しなけりゃ、地球の守護者はあれを出せねぇ」
オレンジがそれに返した。
「カラミティで疲れさせちゃおうかしらね?」
そして、バイオレットとオレンジは、カラミティを補充する。先ほどより多めに補充されたカラミティの中で、3人が取りこぼした個体が周辺のビル等に集り始める。ウイングは叫んだ。
「まさか!ビルごと壊すのっ?」
ウォーターが叫ぶ。
「そんな事はさせない!」
ファイアも叫ぶ。
「一気に片付けねぇと!」
それを受け、ウイングは翼からの羽根の盾をビル等とカラミティの間に届ける。そして、再び叫んだ。
「ウォーター!ファイア!強い必殺技お願い!!」
ウォーターとファイアは、力強く頷き、必殺技をカラミティに浴びせかけた。
「セイブ・ウォーター・ソード・レイン!」
「セイブ・ファイア・クロス・エクスプロージョン!」
気合いの入った2つの技は、カラミティを全て消しても勢いがあり、その余剰エネルギーは、バイオレットとオレンジを倒した。
変身が解けた勇が言った。
「ふぅっ!誰も傷つかなくてよかった!!」




