表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/40

9話

◆早朝の

 翌日、学校に登校するためには、早い時間に家に帰らねばならない。まだ暗いうちに勇は芯に起こされた。


「おはよう、勇くん」

「おはよう、芯さん」


 そして、勇は用意してくれた朝食を済ますと、芯に付き添われ、芯の部屋から出た。日の出を迎えたばかりの朝日が2人の顔を照らした。勇は一言。


「まぶしいなぁ」

「そうだね」


 しかし、まぶしさに細めた勇の目に、カラミティの姿が映る。


「えっ」


 芯は、怪訝そうに勇の顔を覗く。そして、尋ねる。


「どうしたの?」

「あっ、ぼ、僕の敵っ」


 勇は右手でカラミティを差した。芯はその先を見た。早い朝の静寂が、カラミティの発する波動にて、消し去った。人はまばらだったが、その人々は悲鳴を上げながら逃げ惑う。初めて見る事態に芯は驚く。そんな芯に勇は言った。


「ここで、お別れした方がいい!僕、頑張って家に1人で帰るから!今までありがとう!逃げて!芯さん!!」


 そして、勇は1人でもカラミティと戦おうと叫ぶ。


「解き放て!守りの力!!」


 いつものように変身する勇。


「はためく翼は強き盾!アースセイバーウイング!!」


 孤独の戦いと思われたが、追うようにこんなが声が響き渡る。


「流るる水は大いなる癒し。アースセイバーウォーター」

「荒ぶる炎は確かな希望!アースセイバーファイア!!」


 ウイングは驚く声を上げた。


「ウォーターっ?ファイアっ?」


 降って湧いたような2人に驚きを止められなかったが、ウイングはウォーターとファイアと共に言った。


「レッツ!セイブ!!」


 その様子を、芯は遠目で驚き、見た。


「本当に、戦うんだね。勇くん」


 そう言われたウイングは、言った。


「バイオレットは!オレンジは!どこなのっ?」


 ファイアが言った。


「俺が探す!2人は、カラミティを!!」


 ウォーターが言った。


「お願いするよ!」


 ウイングが言った、


「わかった!よろしく!!」


 ファイアは、それを聞き届けると、飛んで行った。ウォーターは、珍しくパンチを繰り出し、カラミティを攻撃し始めた。ウイングも負けずにパンチをカラミティに見舞う。ウイングは小声で言った。


「ウォーターのパンチ、僕のより上手い?」


 ウイングは、ウォーターのパンチを見よう見まねで再現してみる。すると、少ない力でカラミティを倒す事が可能となった。


「珍しいよね?ウォーターがパンチなんて!真似させてもらったよ!!」

「そう!いいよ!!」


 守りの力もそうだが、ウォーターが示してくれたパンチは、元々の体からの力も効率よくカラミティに伝える事が可能だった。


 次第にカラミティの数が減っていく。ウイングは言った。


「あと、一息っ!!」


 そんなウイングの視線の先に、ファイアが追い立てるバイオレットとオレンジの姿が。ウイングは大きな声で言った。


「見つかったんだね!バイオレット!オレンジ!」


 ファイアが答えた。


「ああ!あっちのビルの上で高みの見物決め込んでたぜ!早いところこっちも倒そうぜ!!」


 ウイングは言った。


「そうだね!家に早く帰って、学校行かなきゃだし!!」


 ファイアは笑った。


「確かにな!」


 バイオレットが言った。


「アースセイバーウイング!前の作戦の時はいなかったなぁ!怖気づいたかと思ったが!何故復帰した?」


 ウイングは、答えた。


「だって、人を、地球を守りたいだもん!!」


 オレンジは言った。


「厄介な男が、地球の守護者になったものね!バイオレット!やるわよ!!」

「待て!ウイングの鏡を封じるのが先だ!!」

「くっ、本当に厄介。カラミティ!」


 数を減らした筈のカラミティがわらわら出てくる。ウォーターは言った。


「そう出されても、消すだけだよ?」


 ファイアが言った。


「やるぜ!」


 そんなウォーターとファイアに、ウイングは久しぶりに自らの盾を与えた。そして、ウイングはこう尋ねた。


「ファイア!ファイアもパンチ攻撃出来そう?」

「勿論だぜ?」

「なら、カラミティは僕が全部引き受ける!ウォーターとファイアは、バイオレットとオレンジを!!」


 ウォーターとファイアは顔を見合わせ、頷いた。ウォーターは言った。


「わかった!僕はオレンジを!!」


 ファイアは言った。


「よし!俺はバイオレットな!!」


 3人のバンチ攻撃は、それぞれの相手に確実にダメージを与えた。


 カラミティは、悪しき力をウイングに集中させ始める。それにバイオレットはこう命令した。


「カラミティ!それは避けろ!!」


 ウイングは言った。


「もう、遅いよ!!今日は、2人と必殺技やりたい!ウォーター!!ファイア!!」

「うん!」

「ああ!」


 ウイングは叫ぶように言った。


「セイブ・ウイング・ミラー・シールド!!」


 ウォーターは声を上げる。


「セイブ・ウォーター・ソード・レイン!」


 ファイアも声を上げた。


「セイブ・ファイア・クロス・エクスプロージョン!」


 集められたカラミティの悪しき力をウイングは鏡の翼に吸収、そして、そのカラミティはじめ、バイオレットとオレンジに向けて放出。


 ウォーターの水をまとった剣と、ファイアの爆発の衝撃波もプラネットクラッシャーの2人とカラミティを攻撃。


 オレンジは言葉を出す暇なく、倒れる。一方、バイオレットは一言を残し、倒れた。


「その鏡を封じられればっ!!」


◆帰宅

 脅威は去った。変身は解ける。勇は、言った。


「ふう。こんな事してる場合じゃないのに!家に帰って、学校に行かなきゃいけないのに!!」


 涼が言った。


「絶対に来る?」

「もっちろんだよ!」


 晴が言った。


「担任には、遅れるって言っとくから、必ず来いよ!!」

「うん!ありがとう!!」


 勇は、涼と晴と別れた後、家へと急いだ。そんな勇を芯の声が追いかける。


「勇くん!」

「えっ!芯さん!!何で?何で逃げなかったの?」

「気になったからね」

「怪我してない?」

「遠くで見てたから、大丈夫だよ」

「なら、よかった!」


 すると、芯は後ろを振り返り、こう尋ねた。


「あの、君の敵、あのままでいいの?」

「えっ。今まで放っておいたよ?そう訊かれると、何かやらなきゃならない気がしてきた」

「ああ、君にとっての敵なんだから、別にいいのか。あの2人、何者?」

「地球を破壊しに来てるんだって。男の人は、プラネットクラッシャーアースバイオレット。倍賞充って名前で地球に住んでるみたい。女の人は、プラネットクラッシャーアースオレンジ。こっちは、時任彩って名前だね」

「倍賞充、時任彩」

「うん」


 そんなやり取りをしていると、勇は芯と共に家に辿り着く。そして、意を決し玄関を開ける。


「ただいま」


 その声に勇の両親は玄関に急いだ。母親は勇の姿を見るなり抱きしめた。そして、こう言った。


「ああ、無事でよかった」


 父親は、今にも泣きそうな顔をしてこう言った。


「今まで、どこにいたんだ!!」


 勇は、言った。


「ごめん、父さん、母さん」


 勇は、母親から離れ、芯を紹介した。


「えっと、最初は『知らない人』だったけど、この人によくしてもらったよ」

「はじめまして、洞口芯、占い師です」


 父親は、言った。


「無事にここに帰してくれて、ありがとうございました」


 母親も頭を下げる。そんな様子を見届けると、芯は言った。


「息子さんの事、聞きました。不安はあると思いますが、僕の占いによると、息子さんは、しばらく死ぬ事はありません。だから、安心してください。戦っても、あなた方の所に必ず帰って来ます」


 勇は、その言葉に驚いたが、こう言った。


「そうみたい。だから、戦わせて?父さん、母さん」


 父親は頷いた。その横で母親は言った。


「わかったわ。頑張るのよ?」

「うん!それより、学校!学校!!」


 その光景を見届けた後、芯は言った。


「じゃあね?勇くん。そして、勇くんのご両親、これで失礼します」

「芯さん!ありがとう!!」


 その勇の言葉に続いて、両親も短く深く芯に感謝した。


 勇は、芯の姿が見えなくなったのを合図に自らの部屋へ行き、「秘密ソルジャーシリーズ」のグッズに見守られながら急いで制服に着替え、家を飛び出して行った。


「いってきます!!」


 そんないつもの挨拶と共に。両親の「いってらっしゃい」の声を背に。


 そして、学校に着くと、やはり、遅刻。1時間目の授業中の教室に「飛び入り」で入って行った。


「遅くなりました!!」


 そんな声を響かせながら。愛は、ほっとした表情を見せ、呟いた。


「やっぱり、この教室には、勇くんがいて欲しいよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ