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私が学校を休んでいるこの二ヶ月の間は、父と明季にしか連絡をしていなかった。そのため、普段は明季が送って来るメッセージを見たらすぐ返信していたけれども、私はいま彼女が送って来たメッセージを見てからすぐスマホの画面を消した。


肺の中の内容物を全部喰らい尽くすように粘稠な血肉が卑劣に増殖している故、私は体と脳が震えるほど激しい咳が出た。張り裂けそうな気管の痛みが和らいできて、私は水できれいに清めた自分の手を見た。数分前に不安と恐怖から産まれた血液に塗れて、毒々しく見えた自分の手を見つめた。そうして、何度も深呼吸をして、「ごめんなさい、あき。もう昔のようにあきと一緒にいることができなくなる」というメッセージを明季に送った。


私自身もこの持病に対して深く恨みを抱いていて、これ以上恥辱なことはないと思っていた。それに、もし病弱になった今の私の姿を彼女に見られたらきっと嫌われて、また恨まれるだろうという妙な直感がある。


私は夕食の用意を始めた。野菜をきれいに洗って米を炊こうとする時、久しぶりにドアのベルの音が聞こえた。


「どなたですか」と私が聞いた。


「急にあんなライン送ってきたし、たくさん返信したのに全然既読つかないし、風夕、一体どうしちゃったの」と呼吸が出来なさそうで掠れた少女の声が聞こえた。


「あき…お願い、もう私のそばに来ないで」声の震えを抑える力もなくなって、私は悲鳴のような声を出してしまった。


「お家に帰って。もうあきのためにこのドアを開けることやしないから」と少し落ち着いて私がまた言った。


「せめて顔を見せて、風夕の顔を見たらすぐ帰るから」


明季の言葉を聞いた私は少し笑いたくなった。あき、あなたはほんと変わってないね。少し過激に見えるあなたからの要求を断ったら、いつも可哀想な顔で「する」と「しない」という両極端からバランスを取って私の許可を得たら、ちょっと大人しくしてすぐ憚らず好き勝手に振る舞う。その時は例えあなたに傷つけられちゃってまた断ろうとしても、もう手遅れだ。誰にも見せられたことのなく、心の裏側に隠してた私の弱みをいつも利用してるあなたは、ほんと最低だね。


今のあきが「顔を見たらすぐ帰る」って言っても、もしあなたにこの扉を開いたら私はきっと、もう二度あなたの側から逃げられないのね。


私は何も言わず夕食を作り続けて、食事が終わってから風呂に入った。浴室の中に囚われた霧はドアが開いた瞬間にすぐ逃げ出して、夜の角に注がれた真っ暗になった部屋の奥まで消え去っていった。霧に包まれた私はベッドの上で気持ちよく眠りについた。夜中に激しい咳で二度起きてしまった。幸いこの痛みは目を覚ましてから微弱になって、私の気分も爽やかになった。私はドアを開いて少女の影を探しに行って見た。そうして、枯れた草花に絡まれた庭の奥、ベンチの上で静かに仮眠している明季を私はやっと見つけた。


「あきはずっとここに寝てるの?しょうがないな。はやくうちに入って」と私が言った。


どうぞ入りなさい、あき。どうせすぐ嫌いになるだろう、こんな醜くなった「私」のことを。

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