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半年前の出来事

自分の涙で目が覚めることもなくなったが、街でよく似た髪型の女性を見かけると目で追い掛けてしまう。

だけど僕の心の傷は確実に「時間」が癒してくれた。


彼女と別れて半年。いや彼女に振られて半年。彼女を友達に取られて半年。


いろんな表現を使ってもとにかく一人になって半年が過ぎた。

ただなんの根拠もないが、一人になった時に半年がひとつの区切りになるような気がした。


二つの季節が過ぎて冬を迎えれば新しい出会いがあると想像していた。

本当に何の根拠もないが、それがあのアルバイトだけの夏休みを乗り切るための心の支えになっていた。


その大学時代から2年付き合った彼女との別れは街の服装が夏を意識し始めた5月の終わりだった。

高校を卒業後、唯一交流のあった友達の誕生日パーティー。


毎回恒例ではなかったのに、急に誕生日パーティーをすることになり僕と彼女と友達の3人だけのささやかな誕生日パーティー。


居酒屋でたらふく酒を飲み、カラオケに行った頃にはすでに僕だけ泥酔状態。


カラオケの椅子に横たわった僕の横で友達が僕の彼女と肩を組み、楽しげ歌っている。

困惑とも喜びとも取れる彼女の表情が今でも鮮明に記憶に残る。


そしてカラオケも終わりに差し掛かる頃、僕は彼女に外に連れ出された。


「今好きな人がいるの」


その表情からそれが僕でない事はすぐに理解できた。

その人は誰?と聞く前に彼女は頭で描いたいたシナリオを実行するかのように友達の名前を告げた。


「え?」


僕の言葉を遮るかのように立ち去る彼女。


そのあと猛烈な勢いで酔いから醒めていく僕が覚えている事は、カラオケ屋に戻ってもすでに会計が済んでおり、誰もいなかった事。

彼女の携帯に電話をしても彼女が出なかったこと。

そして友達の携帯がずっと圏外だったこと。


あまりにも突然の出来事でまだ現実とは捉えられない僕の中には悲しみの感情は生まれなかった。


しかし翌日に彼女から送られてきたメールを見て悲しみの感情は僕の中で爆発した。


(本当にごめんなさい。)


この言葉で埋め尽くされた彼女のメールは僕に現実と気づかせるには十分だった。

今まで記憶の奥底に沈んでいた過去の悲しみの感情がまるで嘘だったかのような大きな悲しみが僕を襲ってきた。


そしてその大きな悲しみに対処する術も判らないまま、その夜友達に呼び出され友達の横に座る彼女を見た瞬間、僕の記憶は崩壊した。


ただ映画のセリフのような二人の謝罪の言葉にただうなづき、最後に達成感に満ちた友達と無理やり握手をした記憶だけがかすかに残っている。









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